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音楽が禁じられた世界 映画「サラバ静寂」 宇賀那監督が本作を撮った3つの理由とは。

11/22(金) 11:30配信

キネマ旬報WEB

映画が作れない苦悩の日々と、扉を開けた吉村界人との出会い

―狂気の警察官を盤面に映したCDは、彼の手で真っ二つに割られる。その鋭利な切り口は、所持者=犯罪者の喉元を切り裂くだろう―。音楽の禁じられた世界を描く「サラバ静寂」を宇賀那健一監督が撮った理由は、3つあった。

宇賀那:「1つ目は僕自身、『黒い暴動』(16)以前に撮れない時期が長く続き、それでも会社勤めをしながら脚本を書き続けまして……。僕にとって映画は欠かせないので、そういう思いを映画にしたかった。ただ題材が〈映画〉だと近すぎるので、〈音楽〉に変えました。2つ目はその頃に風営法改正がクラブなどに打撃を与えまして、音楽業界の今後について映画に託してみたいと思ったこと。3つ目は吉村界人との出会いです」

―吉村演じるミズトは、ネジ工場で単調な労働に従事する日々の中、偶然にも音源や楽器など音楽資材で埋まった廃屋を見つけ、通い詰めるうちに音楽に魅せられてゆく。

宇賀那:「吉村の良さは、自分が感じた通りに突っ走れることですね。ドラマの俳優は、悪い意味ではないですが、テクニックに長けていて感情の沸点などをコントロールできてしまう。それとは対照的な吉村の直感的な良さを活かすため、あまりカットを割らず、テイクも重ねていません。あとこれは僕のスタイルですが、事前の本読みもしていません。こうやればいいんでしょ、と前もって固まるのが嫌なので。そうすると現場で俳優の負荷は高まりますが、それは俳優キャリアもある僕が、俳優を信頼しているからこそです」

若葉竜也の卓越した演技、SUMIREという期待の新星

―ミズトと行動を共にするのは、同僚のトキオ。自ら音楽を紡いでゆくが、その運命に残酷な終止符が打たれる。若葉竜也が演じる。

宇賀那:「若葉はやはり上手いですね。子役出身でキャリアは長く、映画の知識も豊富で、物事を俯瞰して見ることができる。吉村とは違うタイプの良さを持った俳優だと思います。トキオは愛されキャラだったので、死ぬシーンを撮る前夜、スタッフたちに『トキオを殺さないでくれ』って言われました。まだ見ていたいからって」

―さらに加わるのが、音楽所持罪(遊楽法)で父を殺されたヒカリ。演じるモデルのSUMIREは、これが映画初出演。

宇賀那:「ビジュアルイメージと裏腹に、彼女はすごく頑張り屋なんです。部活の後輩みたいなキャラで、何回でもやりますというタイプ。技術ではない部分で惹きつける魅力があって、この時期の彼女だからこそできたことは多いはずです」

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最終更新:11/22(金) 12:44
キネマ旬報WEB

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