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韓国の「リトル東京」から日本人が消える?

11/22(金) 18:37配信

ニューズウィーク日本版

──日本と韓国を取り巻く状況の変化が在韓日本人の居住環境に影響を及ぼしている......

韓国ソウルの「リトル東京」、龍山区東部二村洞(トンブイチョンドン)に居住する日本人の減少が止まらない。朝鮮日報が2019年11月に取材で訪れた東部二村洞の不動産会社社長は、体感で1~2年の間にリトル東京に居住する日本人駐在員が30%~40%減少したと回答した。

● 動画:多くの日本人が暮らす東部二村洞の様子

■ リトル東京と呼ばれるきっかけは1970年代に遡る

外務省が発表した「海外在留邦人数調査統計」令和元年版によると、韓国に在住する日本人は2018年10月1日時点で3万9403人。平成30年版のデータでソウル市に居住する日本人は1万2655人となっており、龍山(ヨンサン)区が最も多い2423人で、1179人の麻浦(マポ)区が続いている。

東部二村洞がリトル東京と呼ばれるようになったきっかけは1970年代に遡る。日韓の国交回復後、1970年代から日本企業の韓国進出がはじまった。国情が不安定な時代、日本大使館等が発信する無線とラジオは在韓日本人の生命線だった。

南山山頂から送信される電波を安定して受信できる地域への居住が求められたが、南麓の梨泰院は在韓米軍人等の歓楽街で、隣接する漢南洞は欧米人の居住地でもある。住宅地開発がはじまったばかりの東部二村洞が日本人居住区として選ばれた。

東部二村洞には「日本語可能」を掲げる不動産会社が軒を連ね、日本語に対応する医院や歯科、日本料理店などが集まっている。地域のスーパーは日本の食材を扱い、日本人主婦が買い物に訪れる。東部二村洞はまた、日本人学校に通学するスクールバスの唯一の発着地で、下校時間になると停留所近くの公園は日本語一色になる。

ソウルの市内バスは韓国語と英語のみだが、東部二村洞はすべての停留所で日本語のアナウンスがあり、韓国語ができない日本人が生活に不自由することはない。

東部二村洞に次いで日本人が多い麻浦孔徳(コンドク)は、日系企業が事務所を構える市庁周辺等への利便性が高い地域だ。2011年には空港鉄道の孔徳駅が開業し、金浦空港や仁川空港とも繋がったが、区内にある日本人学校に通学する方法はなく、単身赴任者など子を帯同しない駐在員が居住する。

■ 単身赴任者の割合がさらに高まる可能性

日韓関係が悪化した李明博政権の頃から日本人のリトル東京離れがはじまった。家族を帯同しない駐在員が増えたのだ。北朝鮮がミサイルを発射すると単身で赴任する駐在員が急速に増加する。昨今の国交回復以降で最悪といわれる日韓関係やGSOMIA終了後の北朝鮮動向によって、単身赴任者の割合がさらに高まる可能性は否めない。

帯同した子をソウル日本人学校に通学させる方法は2つしかない。父母が直接送迎するか、リトル東京を発着するスクールバスを利用するかだ。通学を必要とする子を帯同していない駐在員の居住地は「リトル東京」に限らない。人件費の高騰もリトル東京離れに拍車をかけた。企業側も役員として赴任する駐在員の送迎をやめることが多くなり、事務所近くに居住する傾向が強まった。

さらに、子を帯同する駐在員もリトル東京を離れている。2010年10月、ソウル日本人学校は江南区開浦洞(ゲポドン)から麻浦区上岩洞に移転した。1980年に建設された校舎は老朽化が進み、日本人学校を運営するソウル・ジャパンクラブは、地価が高騰した江南区の敷地を売却し、その売却益でソウル市が外国人学校を誘致していた上岩洞に新築移転した。移転当時は土地開発がはじまったばかりだったが、生活施設が充実すると、学校に直接送迎できる上岩洞への居住者が増えはじめる。東部二村洞は高級住宅街と認識され、家賃は高額で物価も高い。東部二村洞と上岩洞の新築マンションの家賃は倍近い開きがあるのだ。

■ 常時5万人から6万人の在韓日本人の3分の2が韓国居住者

市町村に相当する韓国の市郡区は226。外務省が公表する直近データで、日本人居住者がいない行政区は1郡のみである。赴任や留学などソウル生活をはじめたばかりの日本人は、日本人が多い地区を選択するが、在韓年数が長い人など日本人が少ない地区を選ぶ人もいる。

韓国での日系のビジネス界は、コミュニティが親密で顔見知りが多く、日本人が経営する日本料理店が社交場の様相を呈すことは珍しくない。出勤時にマンションのエレベータ等で毎日のように顔を合わせる人たちもいる。日本人居住者が100人近いマンションで暮らす女性駐在員は、同じマンションに日本人が多いのは安心だが、取引先が多く、近所の買い物や敷地内のゴミ捨てなど、部屋を出るたびに服装を整えて化粧をするのが大変と話す。

韓国の出入国記録によると常時5万人から6万人の日本人が韓国にいるという。その3分の2が韓国に居住する日本人である。日韓関係や北朝鮮の動向など、日本と韓国を取り巻く状況の変化が在韓日本人の居住環境に影響を及ぼしている。

佐々木和義

最終更新:11/22(金) 18:49
ニューズウィーク日本版

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