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掟ポルシェのしゃれとんしゃあ通信 ~Vol.4~前編

11/22(金) 17:00配信

ウォーカープラス

日本のサブカル界で異彩を放ち続ける掟ポルシェの月一連載!ブログやツイッターでは知ることができない、“掟ポルシェの今”を赤裸々に語り尽くす居酒屋フリートーク企画「掟ポルシェのしゃれとんしゃあ通信」。あなたの知らない“もう一つの世界”はこんなにもおもしろい!

【写真を見る】10年前に田代まさしさんと組んでいたユニット「マーシー☆ポルシェ」

■ いっぱいいっぱいなところが自分には魅力的だったんですよ

――今日はこの話題から入らないといけないのがすごく残念なんですが、11月6日に田代まさしさんが覚せい剤取締法違反の容疑で再び逮捕されました。

掟「ちょうど10年前に、マーシー☆ポルシェっていうユニットを組んでたんですよ。田代さんの携帯着ボイスが着ボイスチャートの2位とか3位に入ったので、それを曲にしよう、CDにしようということになったみたいで、こういうのを曲にできそうなやつ誰かいないかってことで俺に声がかかったんですよ。田代さんのことは90年代に薬物問題で名前が出る前から好きで。芸風っていうんですかね。見てると常にいっぱいいっぱいなんですよね。強迫観念に追われている感じが、見ていて他人事じゃないというか。それでいて笑えるのは田代さんが器用だから。例えば持ちネタで小森のおばちゃまのモノマネやってましたけど、それって本来は片岡鶴太郎さんが開発したものですよね。それをテレビのコント番組でやって見せるんですけど、なにせあの人器用なんで、人のモノマネでもおもしろくできちゃうんですよ。『なんだよこれ、鶴太郎のパクリじゃねえかよ』って醒めさせない。田代さんの出演シーンだけ自分で編集したビデオを作ってましたもん」

――へぇ!

掟「本当の天才だったらいくらでも湯水のようにネタが湧いて出てくるものかもしれませんけど、そういう感じじゃなくて、切羽詰まって人のネタやって、それでも乗り切れてしまう。いつも仕込んでるつかみの小ネタが本当に一笑いサイズのベタなもので、それを数用意してくる小さくまとまった感じが、自分には人間的ですごく好感が持てたんですよね。それが本当は自分の意とするところじゃなくて、切羽詰まった感じじゃなくもっとリラックスしながらやりたいんだ!じゃあちょっと、試しに薬物の力借りてみっか、みたいになってしまったのがよろしくなかったんですよね。で、マーシー☆ポルシェっていうユニットを二人で組むことになって。田代さんはすでにその頃、逮捕されたことによってボケると不謹慎だと言われていたから、どうにか笑いの世界に戻してあげたくて、設定を考えたんですよね。まず音楽的には、スピード(覚せい剤)で捕まった人だから、じゃあアシッドハウスやらせようって(笑)」

――あはははは(笑)

掟「一応、帯のコピーも考えたんですよ俺。CDの帯に『スピードはダメぜったい!これからはアシッドだ!』って(笑)。却下されましたけどね(笑)」

――そりゃそうですよね(笑)

掟「で、ライブは曲が2曲しかないので、30分の持ち時間でトークも混ぜて何箇所か営業に回ってたんですね。田代さんがドラッグネタでボケちゃうとまた不謹慎だって言われるから、俺がボケて田代さんが突っ込むっていうスタイルならギリ行けるだろうと。最初のイベントのとき、もう11月に差し掛かってたので『すみません、本日は外がおシャブい(寒い)中お集まりいただき、誠にありがとうございます』って俺が言うと、『お前今シャブって言っただろ!』って田代さんがツッコミを入れて、『言ってませんよ田代さん!それ、幻聴じゃないですか?またシャブやってるでしょ!』『やってねーよ!』みたいな、そういうのを延々繰り返していくんですよ。『外が寒いから温かいものでも飲みます?あ、すいません!田代さん、は冷たいものしかやんないですもんね?』『そう、ポンプでね!やかましいわ!』と延々ノリツッコミしてもらって」

――かなりシュールですね(笑)

掟「どんな玉投げても面白く打ち返してくれるんですよ。その反応の速さたるや。なんの打ち合わせもしてないのにさすがだと思いましたね。それからマーシー☆ポルシェで半年くらいツアーを回って、全国10箇所ぐらいでライブやりましたかね。最後は2010年4月29日にロマンポルシェ。のライブでも前座的な感じで出てもらって、それで半年間の活動が終了したんですよ。その後2010年9月16日に、また覚せい剤所持で横浜の赤レンガ倉庫の駐車場で逮捕されて。車のトランクに大量の注射器と合わせて900万円分くらい持ってたっていう。一緒にいたマネージャー的な女性と一緒にやってたらしいんですけど、二人分にしちゃ蓄えすぎだっていう。『なくなったらどうしよう』って心配するタイプなのがよくわかる量で。で、いつからやり始めたんだって話になった時に、2010年の5月5日に、大阪のイベントの時に来た客が、(田代さんに)握手してきて、その握手してきた手の中に売人の電話番号が書いてある紙が入っていたっていう。自分と一緒にやってるときはそんな怪しい兆候はなかったんですけどね」

■ なんかもう絶望に近かったですね今回は

――今年、田代さんにインタビューに行かれてたんですよね。

掟「7月くらいに吉田豪と一緒に。調子はかなり良さそうに見えましたね。薬物の恐怖を訴えながら、逮捕前みたいにボケもガンガン挟んでくるようになっていて、とても安心したんですよ。それだけに今回の逮捕はショックですね...。田代さんが薬物を断ちづらい一つの理由として、田代さんは日本一有名なシャブ中だということもあるかと思います。『マーシー、俺から買えよ。俺と一緒にやろうよ』って現役のシャブ中や売人が、ほっといても向こうから山ほどやって来るんですよ」

――なるほど。

掟「薬物を完全に断とうと思ったら、まず周りの環境から変えなきゃいけない。売人からすぐ買えるような環境とか友人関係をすべて断って、全部一からやり直せるようなところに引っ越したりとか、若い人だったら親元に身を寄せるとかね。田代さんの場合はどこに行ったって『俺から買えよ』とか、そういう人が山ほど寄ってくるわけですよね。薬物の誘惑と毎日戦っていて、それがやっとうまくいって、5年経ってようやく別れた元の奥さんとも食事に行けるようになったり、一度は崩壊した家族の関係が戻ってきてるって話をインタビューで聞いたんですよ。やめ続けてると良い事があるみたいな話をしてて。ようやく普通の幸せを取り戻せて、それが支えになってなんとかやめ続けられたらいいなって思ってたんですけど。まあそれが薬物の怖いところで。何ものに変えても覚せい剤の魔力が勝ってしまうというね。小さな幸せがでっかい多幸感に負けてしまう。夢も希望もないなって」

――宇多丸さん(RHYMESTER)がラジオで「人格的なところを説教チックに言っても意味がない」って仰っていました。

掟「ちょっとね、なんかもう...。いつも田代さん捕まるたびに俺もガッカリしてるんですけど、なんかもう絶望に近かったですね今回は。ああ、やっぱ大変なんだなっていう。やめ続けていくのって。こんだけうまくいってたのに全部一発で帳消しになっちゃうわけだし。そっちやっぱ戻っちゃうかって...」

――ちょっと言葉にならないですね。

掟「2010年の逮捕の前は、正直まだまだ不安な感じはありました。でも、出所後ダルクに入ることでいい方向に向かっているなと思ってたんですよね。薬物依存症というのは病気であって、治療すべきものであるということを自らが世間に浸透させていったんですけど。また一からやり直ししないといけないのはかなり辛いですね」

■ 田代さんのことはすごく大好きなんで

――今回のニュースは、ネット上では田代さんを擁護する意見も見受けられましたね。

掟「10年前とは世間の反応がまったく変わってますよね。薬物がどれだけ怖いものなのか、刑務所に入ったくらいでは治らなかったっていう、そういうことまで田代さんが身をもって示したわけで。薬物依存症患者が立ち直るためにはどういう環境が良いのか、単なる犯罪として扱うようなものではないんじゃないか、みたいなことを提示してきたと思うんですよ。その結果、今はワイドショーのコメンテーターでさえ根性論でボロクソに叩くような人はいませんよね。なんか世の中ちょっとずつ変わってきてんだなって感じはありましたね」

――それだけ今回のニュースはただのゴシップとして扱うにしてはショックが大きすぎると。

掟「そうですね。ワイドショーのコメンテーターも、田代さんを叩くことによって薬物依存症と戦っている人が罪悪感を感じてスリップしてしまう可能性があるから、ここでは叩かない方がいいですよってコメントしてましたね。薬物依存症治療に関する海外でのデータなども踏まえて冷静に話されているのを見て、日本も変わってきたなって思いますね。罰を与えて社会に居場所をなくしていけば、そういう臭いものには蓋をしてなかったことにするくらいの感じにしていけばいいっていう感じが今まではあったわけですけど、それじゃ治らないんだなって。そんな簡単なものではないんだなって。刑務所に入るよ、仕事も失うよ、女房子供もいなくなるよ、そんなことさえ抑止力にならないのが覚せい剤なわけだから、恐ろしいですよね」

――本当にその通りですね。

掟「ふとね、数日前、家に奥さんと子供がいて犬が二匹いて、普通に生活できていてね。これってとても幸せなことなんだなって実感したんですよ。当たり前じゃないんだなって。普通の幸せが得られている今の状態って、とてもありがたいことなんだって。仕事で疲れたりうまくいかないことがあっても酒飲みゃ吹っ飛ぶし。社会的に許されているもので効いてよかったなとも思います。田代さん、下戸なんですよ」

――ちょっと一発目から重たい話になってしまいましたけど。

掟「まあでも、これはスルーして通れない話題ですからね。田代さんのことはすごく大好きなんで。一緒に仕事したことがある人は悪く言わない人ですから」

(Vol.4後編に続く)

■ 掟ポルシェ(おきて・ぽるしぇ)

1968年生。男気啓蒙ニューウェイヴバンド『ロマンポルシェ。』&ひとり打ち込みデスメタル『ド・ロドロシテル』での音楽活動、ピッチを一切合わせないアイドル曲オンリーDJ、読後一切頭と心に残らない酷いコラム著述業、アイドルイベント司会を手がける他、頼まれれば法に触れない範囲で大体のことはやる。2015年より福岡市西区に在住。2019年8月29日(木)に新著『豪傑っぽいの好き』(ガイドワークス)を発売。(九州ウォーカー・森川和典)

最終更新:11/22(金) 17:00
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