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五輪マラソン・競歩の札幌開催で積み残された「受動喫煙対策」という大問題

11/22(金) 6:00配信

週プレNEWS

『週刊プレイボーイ』でコラム「古賀政経塾!!」を連載中の経済産業省元幹部官僚・古賀茂明氏が、五輪マラソンの開催地となる札幌の受動喫煙対策について問題提起する。

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東京五輪のマラソン・競歩の札幌開催は、運営にかかる費用を組織委とIOC(国際オリンピック委員会)が、道路整備など行政に関わる経費を北海道と札幌市が負担することが決まるなど、着々と準備が進んでいる。しかし、そのなかで積み残されたままスルーされそうな課題がある。それは受動喫煙対策だ。

「スモークフリー(たばこのない)オリンピック」を目標に掲げるIOCの意向を受け、政府は2018年7月に受動喫煙を防止する「改正健康増進法」を成立させた。この改正で学校や病院、行政機関は敷地全体が禁煙となった。

東京都は、開催都市として改正法よりも一歩踏み込んだ受動喫煙防止対策が望まれるとして、20歳未満の子供や受動喫煙を防ぎにくい飲食店従業員などの健康を守る独自のルールを条例で定めている。

本来なら、札幌も東京に倣い、なんらかの独自の受動喫煙対策を打ち出すべきだろう。

ところが、道議会がおかしなことになっている。最大会派の自民党・道民会議(53人)が、建設中の北海道議会新庁舎内に喫煙所を設置することを強引に決めてしまったのだ。その理由も「議会は立法機関。行政機関ではないので、設置しても法律違反にならない」という屁理屈としか言いようがないものだ。

北海道・自民の暴走はこれだけにとどまらない。喫煙所の設置には1000万円、清掃などの維持経費として年間約100万円が必要とされている。かなりの金額だ。

そのため、鈴木直道知事が税金による設置に難色を示すと、だったら民間に作ってもらえば文句はないだろうとばかりに、JT(日本たばこ産業)から喫煙所の「寄贈」を受けると言いだしたのだ。

公的機関が民間企業から寄贈を受けるときは慎重さが求められる。社会貢献といえるものなら問題は少ないが、今回はそれとはまったく逆で、喫煙推進のキャンペーンのようなもの。それでたばこ業界に資金拠出を求めるなど言語道断の行為だ。

実際、日本禁煙学会は喫煙所の寄贈について、「道議会最大会派によるたばこ規制の遅延という利益誘導の素地となり、道民の健康被害拡大につながる」と懸念する声明を出している。

北海道は成人の喫煙率が全国で最も高い地域(厚労省・16年調査)にもかかわらず、これまで道や札幌市は受動喫煙防止に熱意を見せてこなかった。道・市の対策ガイドラインを見ても「内容を改訂する予定」とあるだけで、いまだにほとんど対策らしい対策を打ち出せていないのが実情だ。

そこに降って湧いた東京五輪のマラソン・競歩開催。本来ならこれをきっかけに、本格的な受動喫煙対策に乗り出すべきところなのに、それに背を向け、民間企業から寄贈を受けてまで喫煙所の設置にこだわる北海道・自民にはあきれるしかない。

このままではマラソン・競歩観戦に訪れ、レストランなどで食事をした外国人客から、「札幌は煙たい街」と見られるだけでなく、同議会の暴挙で「スモークフリー」どころか「スモークフル」札幌という新語が生まれるかもしれない。北海道は豊かな自然が魅力なのに、そんな評価ではあまりにもったいない。

議会新庁舎の喫煙所設置には北海道医師会も強く反対している。今からでも遅くない。北海道・自民は喫煙所を諦めるべきだ。

●古賀茂明(こが・しげあき)1955年生まれ、長崎県出身。経済産業省の元官僚。霞が関の改革派のリーダーだったが、民主党政権と対立して11年に退官。『日本中枢の狂謀』(講談社)など著書多数。ウェブサイト『DMMオンラインサロン』にて動画「古賀茂明の時事・政策リテラシー向上ゼミ」を配信中

最終更新:11/22(金) 6:00
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