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「富山は日本のスウェーデン」説に、富山住み40歳女性が抱いた違和感

11/23(土) 8:01配信

現代ビジネス

私の前に立ちふさがった「富山らしい」共同体

 2018年夏頃、我が富山の書店には軒並み、『富山は日本のスウェーデン』という新書が平積みにされていた。著者は経済学者・財政学者の井手英策氏。富山でトップシェアを占める地方紙、北日本新聞をはじめ様々なメディアでも紹介された。気になったので買って読んでみたが、その中身はタイトルと同じく「ピンとこない」の連続だった。

「北陸3県」がやっぱり日本国内で圧倒的に「暮らしやすい」ワケ

 1960年以来、不動の持ち家率全国1位(国勢調査)である富山は、女性の就労率が高く、勤労者世帯の実収入も4位であると井手氏は指摘する。三世代同居で子育てしやすく、地域の包括ケアシステムも充実。自民党一強の保守王国ながら、社会民主主義のスウェーデンのような相互扶助があり、老若男女が「住みやすい県」とのこと。

 しかもそれは、家族または地域の共同体による、助け合いの精神が富山の豊かさを支えている、と結論付けていた。しかし富山で18歳までを過ごし、10年間の大阪・東京生活の末、富山に帰郷した独身アラサーの私に立ちふさがったのが、まさにその“富山らしい”共同体だったのだ。

 私が富山に戻ったのは2008年、29歳になる年だった。母が経営する実家の薬局で働くことになったのだ。「しんどくなったら富山に帰ればいい」という甘えた考えを心の支えに、東京で雑誌編集者として生きてきたが、いざ故郷に逃げ帰ると、想像以上に未知で窮屈な社会が待ち受けていた。

 地元の同級生はほとんど既婚者か、結婚が決まっている子たちばかりだった。実家で仕事を恵んでもらっているのに、未練がましく「富山でも雑誌の仕事に携わりたい」と愚痴をこぼす私に、かつての親友たちはこう言った。

 「いつまで自分探ししとるん? 子供産むにはリミットあるのわかっとるが?」
「早く結婚してこっちのステージに上がって来てよ」

 口うるさい身内よりも、女友達から投げかけられた言葉のほうが飲み込めなかった。私と同世代の同性たちが、結婚して子供を産み、家を建てることが人生の必修科目なのだと信じて疑っていない。様々な生き方に寛容で、いい意味で個性が埋没する東京とは違い、富山における私という人間は、未婚、子なし、アラサー女というだけで既に道を外れていた。

 物差しがひとつしかない世界において、こぼれ落ちてしまう人間は必ずいる。だがその存在を徹底的に無視するほど富山の人は冷たくはなく、井手氏のいう助け合い精神でもって、「こっちへおいで」と横並びの共同体に招き入れようとする。私は「頼んでもないのにありがとうございますぅ~ハハハ」と愛想笑いを浮かべながら周囲を牽制し、ひとつの枠にはめ込もうとするお節介から逃れようとした。

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最終更新:11/27(水) 16:40
現代ビジネス

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