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ハサミムシの母の最期はあまりにも壮絶で尊い

11/24(日) 5:35配信

東洋経済オンライン

生きものたちは、晩年をどう生き、どのようにこの世を去るのだろう──。
老体に鞭打って花の蜜を集めるミツバチ、成虫としては1時間しか生きられないカゲロウなど生きものたちの奮闘と哀切を描いた『生き物の死にざま』から、ハサミムシの章を抜粋する。

 石をひっくり返してみると、ハサミムシがハサミを振り上げて威嚇(いかく)してくることがある。

 ハサミムシはその名のとおり、尾の先についた大きなハサミが特徴的である。

 昆虫の歴史をたどると、ハサミムシはかなり早い段階に出現した原始的な種類である。

 ゴキブリも「生きた化石」と呼ばれるほど原始的な昆虫の代表である。ゴキブリには、長く伸びた2本の尾毛が見られる。この尾毛は原始的な昆虫によく見られる特徴である。

 ハサミムシのハサミは、この2本の尾毛が発達したものと考えられている。ハサミムシは、サソリが毒針を振り上げるように、尾の先についたハサミを振りかざして、敵から身を守る。また、ダンゴムシや芋虫などの獲物を見つけるとハサミで獲物の動きをとめてゆっくりと食らいつく。

 石をひっくり返すと、石の下に身を潜めていたハサミムシが、いきなり明るくなったことに驚いて、あわてふためいて逃げ惑う。

 ところが、である。なかには逃げずに動かないハサミムシもいる。

■ハサミを振り上げ必死にわが子を守るハサミムシ

 どうやら、ただじっとして隠れているわけではなさそうだ。その証拠に、このハサミムシは、勇敢にハサミを振り上げて、人間をも威嚇してくるのである。

 石をひっくり返したときにハサミで威嚇してくるハサミムシとは、どのような素性を持つのだろう。

 見れば、そんなハサミムシのかたわらには、産みつけられた卵がある。

 実は逃げずに動かないこのハサミムシは卵の母親である。母であるメスのハサミムシは、大切な卵を守るために、逃げることなくその場でハサミを振り上げるのである。

 昆虫の仲間で子育てをする種類は極めて珍しい。

 昆虫は自然界では弱い存在である。カエルやトカゲの仲間、鳥や哺乳(ほにゅう)類など、さまざまな生き物が昆虫を餌にする。そんな昆虫の親が子どもを守ろうとしても、親ごと食べられてしまうことだろう。これでは元も子もない。そのため多くの昆虫は、子どもを保護するのをあきらめて、卵を産みっぱなしにせざるをえないのである。

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最終更新:11/24(日) 10:16
東洋経済オンライン

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