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STAP細胞事件が覆い隠した科学技術立国ニッポンの「ヤバい現実」

11/27(水) 8:01配信

現代ビジネス

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あのSTAP細胞事件の後も、多くの研究不正が明らかになっている。中には「史上最悪の研究不正」と言われるほどのケースも。一体なぜ不正はなくならないのか。『研究不正と歪んだ科学』編著者の榎木英介氏が警鐘を鳴らす。
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 夢の万能細胞と騒がれ、のちにその存在が否定されたSTAP細胞に関する事件、いわゆるSTAP細胞事件から、早くも5年以上の月日が経過した。

 5年前、あれほど世間を揺るがした事件も、忘却の彼方に消え去ろうとしている。大学には事件そのものを知らない学生も増えているという。

 それは私たちとて似たようなものだ。STAP細胞事件は、号泣県議や佐村河内事件など当時世間を騒がせたネタの一つに過ぎず、令和になった今、平成に起こった一つの事件として振り返ることがせいぜいだ。

 しかし、STAP細胞事件があらわにした、日本の研究が抱える様々な問題は、実は何も解決していない。

 いったい研究の現場で何が起こっているのか。

史上最悪の研究不正

 STAP細胞事件を「世界三大研究不正事件」と呼ぶ声がある。

 研究不正とは、狭義には存在しないデータを作る捏造、データを加工する改ざん、他の研究者のアイディアや文章などを許可や表示なく流用する盗用の3つの行為を指す。STAP細胞に関する論文には、この3つが含まれていた。

 たしかに報道の量だけをみれば、少なくとも日本国内では、研究不正の事件としてはダントツだろう。

 しかし、私はこれに全く同意しない。

 史上最悪とさえ呼ばれる日本の研究者が起こした事件が、今世界を震撼させている。それは、元弘前大学教授で医師のS氏が起こした事件だ。

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・元弘前大学医学部所属教員による研究活動上の不正行為(捏造・改ざん・盗用)の認定について(文部科学省)
http://www.mext.go.jp/a_menu/jinzai/fusei/1404087.htm
・研究活動の不正行為に関する調査結果について(弘前大学)
https://www.hirosaki-u.ac.jp/30242.html
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 S氏は骨粗鬆症などの専門家で、論文の多くが患者の治療ガイドラインに取り入れられるなど、影響力があった。

 ところが、やったとされる臨床研究が実際は行われていないなど、論文に多くの研究不正が見つかった。その他不適切な行為も多数確認された。

 2019年11月21日現在、撤回された論文数は実に87報に及ぶ。

 撤回論文を除くと、患者の治療ガイドラインの結論が変わってしまうという。つまり、S氏の不適切な論文のために、患者が不適切な治療を受けていたことになる。患者への影響は計り知れない。

 これは、発表後比較的短期間に撤回され、他の研究に引用されることがなかったSTAP細胞論文どころの話ではない。史上最悪の研究不正と言われるわけだ。

 この事件は世界で最も影響力があるとされる科学雑誌サイエンスとネイチャーが共に誌面を割いて大きく取り上げたほどだ。

 しかし、これほどの事件でありながら、日本国内ではほとんど報道されていない。STAP細胞に関係する報道の0.1%にも満たない報道量だろう。

 なお、S氏は研究不正を追及され、自死したとされる。STAP細胞事件のときの笹井芳樹氏の自死を思い起こさせる。日本では責任の取りかたの一つとされる自死だが、残念ながら諸外国から批判されている。真相を明らかにすることなく死ぬことは、責任を取ったことにはならないと思われているのだ。

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最終更新:11/27(水) 8:01
現代ビジネス

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