ここから本文です

【著者に訊け】伊藤亜紗氏 『記憶する体』

2019/11/30(土) 16:00配信

NEWS ポストセブン

【著者に訊け】伊藤亜紗氏/『記憶する体』/1800円+税/春秋社

 誤解を恐れずに言えば、吃音に迫った話題作『どもる体』等で知られる美学者で東工大准教授・伊藤亜紗氏は、健常者と障害者、なにより自分と他人の体の違いに、興味津々なのだろう。

 最新刊『記憶する体』はその違いを中でも決定づけ、〈固有性〉をもたらす記憶に焦点を当てたインタビュー集。第1話「メモをとる全盲の女性」に始まって、四肢切断、麻痺、二分脊椎症、吃音等、障害の程度や種類以前に過去も生き方も当然違う12通りの体の物語を、読者は読むことになる。

 すると不思議。本来その人のものでしかないはずの身体感覚が著者の名ガイドもあって肌身に実感され、無意識に動くこちらの体の方が奇妙に思えてくるのだ。そう。私たちはよく知りもしない体を自明のものと捉え、考えることをサボり過ぎていた?

「基本的に体って無意識化されていますよね。何かを食べる時も意識で動く部分なんてほんの一部ですし、そんなほとんど知らない乗り物に乗って平気で生きていること自体、私はいつも凄いなあって思うんです」

 ちなみに専門である美学とは?

「よく『美学=美について考える学問』と誤解されるのですが、例えば優れた芸術作品を見た時の感性の動きとか、言葉にならない曖昧な部分を、限界があると知りつつ言葉で分析する、ちょっとした言語不信から始まっている学問で、“哲学の妹”的な学問です。

 その、言葉を信じすぎないところが私は好きです。特に体の問題は従来の学問にはない部分が大事だったりもします。体には法則で語れるサイエンスの部分と、本人の個人史や病気や事故の経緯など、多くの偶然的要素を孕んだヒストリーの部分があり、両方を見ないとわからないんです。

 しかも誰もが、与えられてしまった自分の体と嫌でも付き合っていくしかなく、何か問題が起きると意識の方で工夫を編み出したり、その工夫が逆に体に影響したりする。そういった、人がその体を生きていく中で生じる関係全般に、私は興味があります」

1/3ページ

最終更新:2019/11/30(土) 16:00
NEWS ポストセブン

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事