ここから本文です

イッセー尾形 演じる手がかりの「見つからなさ」も喜びに

2019/11/30(土) 16:00配信

NEWS ポストセブン

 映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづった週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』。今回は、俳優・イッセー尾形が、映画『太陽』や『沈黙』で外国の監督や俳優、スタッフに囲まれて芝居をしたときの思い出を語った言葉をお届けする。

 * * *
 イッセー尾形は二〇〇五年、ロシアのアレクサンドル・ソクーロフが監督した映画『太陽』に主演、昭和天皇を演じた。

「僕の中での陛下は、東京オリンピックでの開会宣言のイメージが一番強いので、それを頼りにロシアにまで行きました。

 おかしかったのは、メークのおばちゃんが髪の毛を切ってくれるんですが、『こんな硬い髪の毛は初めてだ』と笑うんです。それで親しくなりましたし、その間にコーヒー飲んだり、クッキー食べたりして、幸せでね。

 そうやって心が温かくなる準備ができていたものですから、撮影も楽しくやれました。

 監督も柔軟な方で、褒め上手なんですよ。『こうして』とか僕にはほとんど言わないで、『さあ、見せてくれ』という感じでね。それが僕にとっては自由なんです。それで『よし、やろう』となりました。

 僕は台本を読み終えていざ演じる時、最初に演じる手がかりになるものを探して、そこにしがみついて演じます。見つからない時は見切り発車。不安ではありますが、その見つからなさを喜びにしようと思っています。

 ただ、この時は最初のイメージにしがみつくだけでは追いつかない場面がいっぱい出てくるんです。そこは直感でやりましたね。そうしたらメークのおばちゃんが抱きついてきてくれて『あんたは、なんて素晴らしいんだ』って。それから、しがみつくことなくインスピレーションで動けるかなと思いました」

 香淳皇后役の桃井かおりとは舞台で二人芝居もやってきた。

「舞台の延長みたいでしたね。撮影の前の日に二人でプランを練り合って、それを阿吽の呼吸で見せる。自分の台本にないことなんですが監督も『面白いね』と言ってくれました。

1/2ページ

最終更新:2019/11/30(土) 16:00
NEWS ポストセブン

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事