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聖書の「悪役」、実は神殿への道を整備していた? 研究

2019/12/1(日) 16:32配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

「年代には疑問があります」

 一方、米ノースカロライナ大学チャペルヒル校の考古学者ジョディ・マグネス氏は、今回の論文に懐疑的だ。「現地で発見されている証拠は、どこからでも手押し車で運んできて埋めてしまえるような代物です。ですから、年代には疑問があります。ピラトが建造を指示したというのはありえることですが、それは唯一の可能性でも、最も見込みの高そうな可能性でもありません」

 マグネス氏はまた、道を発掘する手法についても批判している。発掘チームが採用している手法は、地表から掘り下げるのではなく、地下鉄ほどのサイズのトンネルを掘るというものだ。「これでは状況をつかむことができません。道の上や脇に何があるのかが見えないからです。こうしたやり方はとうてい受け入れられません」

 ウジエル氏は、現場は人口が密集しているためにトンネルを掘る以外に選択肢はなく、また地層に含まれる情報は、慎重にやれば収集できると強調している。

 この取り組みには「ダビデの都市財団」というユダヤ系の組織が資金の大半を提供しており、調査の場所や手法に関しては各国から批判が寄せられている。東エルサレムの該当地域にいるパレスチナ人からは、掘削調査によって住宅や仕事が受ける被害についての苦情が出ている。また、ユダヤ史の中でも特によく知られた時代が研究の対象であることが、あつれきを生んでいる側面もある。パレスチナ当局は、このトンネルは世界の大半が非占領地であると認識している東エルサレムを「ユダヤ教化」する計画の一貫だと掘削を強く非難している。

 2019年6月に行われたトンネルの一部の公開セレモニーにおいて、デビッド・フリードマン駐イスラエル米大使は、そうした懸念を一蹴した。このプロジェクトは「証拠、科学、考古学的研究によって、多くの人がすでによく知っている事実を裏付けるものです。その事実とはつまり、エルサレムはユダヤの人々にとって非常に重要である、ということです」

 もしその科学的な調査結果が正しければ、数々の聖地と見事な建築によってエルサレムが帝国全土にその名を轟かせた背景には、ある嫌われ者のローマ人の尽力があったということになる。

文=ANDREW LAWLER/訳=北村京子

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最終更新:2019/12/1(日) 16:32
ナショナル ジオグラフィック日本版

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