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草なぎ剛の純粋さと内側に持つ熱さを痛感 『はっぴょう会』田島貴男&斉藤和義との共演を完全レポート

12/1(日) 16:02配信

リアルサウンド

 純粋で、まっすぐで、その内側に熱さを持つ男。なんてピュアな人なんだろう。2時間20分のライブの間、僕はずっとそう感じていた。『草なぎ剛のはっぴょう会』は、とても心地よく、あたたかい楽しさに満ちた場所だった。

【そのほかライブ写真】草なぎ剛の“好き”で埋め尽くされたステージ

 僕が見ることができたのは開催2日目の11月28日。すでに初日は草なぎと、ゲストの奥田民生と和田唱(TRICERATOPS)との共演ややり取りがSNSを中心に大いに話題になっていた。だから斉藤和義と田島貴男が出演するこの日も、かなり期待を高めながら待つことができた。

 2日目も会場は超満員。手元のフライヤーの中には香取慎吾が元旦にリリースするCDアルバム『20200101』の告知もはさまっていた。場内の期待が高まる中、幕が降りた状態のステージに、草なぎが現れる。会場中から拍手。

「『草なぎ剛のはっぴょう会』、開幕です! みなさん、寒い中お越しくださいまして、どうもありがとうございます」

 アコースティックギターを弾き始めた彼がまず唄ったのは「はっぴょうかいのテーマ」だった。その最初のサビのところで幕が落ち、後方にまるで草なぎ自身の部屋のようなセットが出現。歌が進む。このコンサートのために作られた明るい曲調のこの歌、とくに〈Fが押さえられない〉〈コード4つしか知らないけど〉といった歌詞には自然と笑みがこぼれてしまった。

 「すべてはこの歌から始まりました」。そう言って2曲目、ドラムスとキーボードのサポートメンバーとともに草なぎが披露したのは「いま・新しい地図」だった。彼の作詞作曲によるこの歌は新しい地図としての活動の始まりを歌った曲だったが、今夜は自身の門出に重なるかのようだった。この初ライブは、まさに〈いま 扉は開く!〉瞬間だ。

 客席はみんなが座った状態のままで、「つよしー!」「つよぽーん!」と声が飛んでいる。そのあたたかいムードの中、草なぎは「このバンド、まだ名前はついてないんですよ。みんなTwitterとかにつぶやいてください」と笑っている。気がつけば、額にはギターのピックを貼っているようだ。その後、ギターを交換しに来たローディーには丁寧に会釈をし、会場の笑いをとる。「こういうの、初めてなんです。なんか“ぽい”でしょ?(笑)」。あとで思えば、この「ぽい」という言い方は、彼の自覚を見せる言葉でもあった。

 「ギターが好きなので、そういう気持ちを込めて作った曲です」と言って唄ったのは、「僕のギターで」。今度はぐっとテンポを落としたロックナンバーで、鍵盤の響きにはサザンロックの匂いがする。〈何も考えずにギターを弾け 未来が見える〉。そう唄い、ギターを奏でる草なぎ。まるで自分に唄っているかのようだ。

 こうして演奏を聴きながら草なぎについて感じたのは、合間で1953年製のギターのことを話したりするギターへの思いの強さ。それから、歌声がとても素直でストレートであるということだった。

 自分の話で恐縮だが、僕個人はこれまで彼やSMAPに関連した仕事はほとんどしていないものの、ただ一度だけ、希望してSMAPのコンサートに2回ほど足を運び、その記事を書いたことがある。あれは1995年で、あのグループがまだ6人の時代だった。以来、24年ぶりに生で草なぎの姿を見て、あの時、今夜よりもっと大きいアリーナで彼が唄っていた姿と歌声がオーバーラップした。何かの曲のソロパートで、彼の歌声だけが響いた瞬間があって、その声がとてもまっすぐで、純粋さが強く心に残ったものだった。

 もちろん、あの頃と比べると、草なぎも人間として成長しただろうし、時代も、状況も大きく変わった。そして彼がいろいろなことをくぐり抜け、経験し、大人の年齢になったことは誰もが知っている。しかし、その声にある大切なものは、今も存在している。そう感じた。

 MC中、勘違いで曲順を間違えるハプニングがあったものの、草なぎはそれも場をなごませるものに変え、曲を続けていく。「冗談じゃないぜ! という気分の時に作った曲です」という「カメレオン」はバンドアレンジによってサイケデリックなムードも匂うナンバーに変身。グリーンの照明が曲に合っている。

 初めてギターで弾いた曲だという井上陽水の「夢の中へ」は、アコーディオンの響きによって、70年代的なフォークロック寄りのサウンドに。最後のサビのくり返しで「もう一丁!」と叫ぶ。演奏後には水をひと口。「昨日は(水を)飲みすぎて足りなくなっちゃったけど(笑)。今日のほうがリラックスしてる気がする」。

 こうしてちょっと力を抜いた草なぎと、私物ばかりというステージ上のアイテムを見ていると、ここは彼のファイバリットで揃えた空間ということなのがわかる。7台のバイクも、ギター、ブーツの数々も。革ジャン、スカジャン、Gジャンも。額装された高倉健やレディー・ガガのポスターも、The Rolling Stonesの巨大なベロマークも(ケネディの立て看など、数点は友達から借りたそうだ)。そして何より、音楽である。

 次は「渋谷を通った時に“こういう歌を作りたいな”と思って、作った曲です」という「渋谷バラッド」。歌詞にスクランブル交差点も出てくるラブバラードだ。しかし曲を終えた草なぎは微妙そうな表情……「間違えちゃった(笑)」。たしかにギターにちょっと怪しそうな部分があったが、しかし正直な人である。

 ライブは、手拍子が起こったビートナンバー「twist shake」(「とにかく楽しい!って曲です」)、そして客席に「(歌詞の)〈LaLaLa〉と〈ShaLaLa〉を唄ってください」とリクエストした「I Love Pure」で、温度が上がっていく。後者のサビ部分の歌詞は、明らかにザ・スパイダースの「バン・バン・バン」をオマージュしたもの。また、ピュアであることについて唄いながら、大人になっていく自分を見つめた歌でもある。

 「サンキューベリーマッチ!」。草なぎの演奏はひと区切りとなり、ここからスペシャルゲストの登場である。まず今夜の一番手はオリジナルラブの田島貴男。笑顔で現れた田島に感激した草なぎは「何で出てくれたんですか?」と質問し、田島は「そりゃーね、うん、出ますよ。ありがたい。あっはっは!」と豪快に笑い、ハグをする。

 セットチェンジ中はそのまま2人のトークの時間のようになり、草なぎは「僕、本当に大好きで、週に2回は『接吻』のビデオを見てるんですよ! ……あ、週2回って微妙ですかね?(笑)」「昨日、リハでも『リズムは一生かけてつかむものなんです』と言われてまして」と田島への思いが爆発。それを田島は「リズムは難しいです! ……今すごくカッコ良く言ってくれたね?」とまたも笑顔だ。以後はバイクとギター談義となり、その加熱ぶりに客席から笑いが漏れる。草なぎはとくに紺のジャズギターが気になった様子だった。そして彼は、昨日の和田の時に続き、演奏する後ろで聴くことの了承を得て、田島のステージとなった。

 『ひとりソウルツアー』と称したソロライブを何度もやってきた田島は、その場をすぐに掌握した。あまりにソウルフルな歌声、そしてエモーショナルなギター。まずギターのボディをタップしてリズムを作り盛り上げた「フィエスタ」、そして早くも唄われた「接吻」は色気たっぷりのジャズバージョン。ここで先ほどのジャズギターが大活躍した。さらに「朝日のあたる道」「フリーライド」で客席を沸かせた。その姿を草なぎは時にリズムをとり、時には見入るようにして注視していた。

 曲によっては両脚の機材でビートを刻みながら演奏した田島を、草なぎは「みなさん、全部自分でやってるんですよ! どうやってんですか?」と心底驚いた様子。それを田島は「聖徳太子みたいだよね(笑)」と返した。だが僕はこの時、むしろそのビックリした顔で熱く語る草なぎのほうが印象的だった。やっぱり純粋な人なのだ。

 そして2人による、これも名曲の「月の裏で会いましょう」では、草なぎ自身「ついていきます」と言っただけあって、歌と、転調する曲の構成をアコギで懸命にサポート。熱くソウルフルな田島の出番はここまでで、拍手の中、舞台から去っていった。

 次、もうひとりだ。「2人目のスペシャルゲストは斉藤和義さんです!」。呼び込まれた斉藤は、いつも通り、脱力気味の空気を漂わせながら現れる。「人が弾き語りをするのを初めて見たのが和義さんなんです!」「僕のバイブルなんですよ、和義さんは!」「このギブソンのギター、どういう感じで作ってもらえるものなんですか?」「そのピック、柔らかくないですか?」と、草なぎの語りは加熱するばかり。それに対し斉藤は、「あ、そう」「そりゃどうも」「あのGジャン、200万とか300万とかするんだよね?」と完全に平常運転状態。こんなふうにゲストとの会話は笑いが起こる瞬間が多かった。

 やはり草なぎが背後で見つめる中の斉藤和義のソロステージは「優しくなりたい」「月光」、それに「歌うたいのバラッド」。斉藤もまたソロでのライブをずっとやってきているアーティストなだけに、その弾き語りは天下一品だ。草なぎは「いやー、最高ですね!」「生ではガットギターでしか聴いたことなかったんですけど、“俺、初めてアコギで歌うたい聴いてるよ”と思いました!」と斉藤愛が止まらない。

 そしてここでの2人の共演曲に選ばれたのは「ウサギとカメ」。この選曲にはちょっと驚いた。というのは、これは渋くフォーキーなバラードではあるのだが、何よりも東日本大震災が起きた直後の斉藤の苦い感情が織り込まれた、じつにハードな作品だからだ。しかし「和義さんの歌には不意打ちを食らうことがあって」と言いながら共演を望んだ草なぎは、そのただならぬものを感じ取っていたはず。かくして共に弾き、交互に唄う2人のパフォーマンスは、歌の底のメッセージ性を損なうことがなかった。また草なぎは、先ほどの田島に続き、このセッションでも譜面を用意することもなく、すべて覚えた上で唄い、演奏していた。

 「たぶん日本一、僕は幸せな環境でギターを弾けています」。斉藤を送り出した草なぎは晴れやかな笑顔でそう言った。「みなさんも、いくつになっても新しい挑戦、新しい冒険をしていってください。一緒に頑張りましょう!」。リプライズ的に演奏された「はっぴょうかいのテーマ」は〈みんな気をつけて帰ってね〉〈Fが押さえられました ほんとに?〉という歌詞に変えられていた。そして草なぎは「またやりましょう! サンキューベリーマッチ!」と言って、舞台から消えていった。

 アンコール。ゲストも含め、3人ともこの2日間のために作られたTシャツを着ての再登場である。アコギ3人での曲は斉藤の「歩いて帰ろう」。草なぎとしては、この夏の『氣志團万博2019』で唄った曲でもある。ここで今夜初めて観客たちが次々に立ち上がって、唄い、手拍子を送った。みんなが笑顔の、最高のクライマックスだった。

 ゲストの2人と入れ替わるように、最後にサポートメンバーの2人が入った。「昨日から夢の中にいるようです。本当に宝くじに当たったみたいな」。「少しでも、みなさんにいい音楽が届けれるように頑張ります。みなさん、あたたかく、よろしくお願いします」。

 そうして唄われたのは、草なぎが飼っているフレンチブルドッグへの愛情を綴った「クルミちゃんの唄」だった。これもアコーディオンが、そして曲調も言葉も、優しい。そして、この純粋さ。草なぎという人は、そしてこのアーティストは、こういう面を強く持つ存在なのだ。

「雨が降ってますので、みなさん、気をつけて帰ってください。本当にありがとうございました!」

 ここで幕を下ろした盛りだくさんの『草なぎ剛のはっぴょう会』。帰路につく際には、オーディエンスの全員にクルミちゃんのイラストが入ったギターピックが渡された。最後の最後まで楽しませてくれる人である。

 それではコンサートを振り返っておこう。

 合間に草なぎは、ステージ上の私物を見ながらで「古いものが好きなので」「アナログが好きなんですよ」と言っていた。それはそうしたアイテムだけでなく、音楽と歌にもそのまま表れている。ビンテージものを愛し、レトロな感覚を好む。音楽で言えば、主に60~70年代のアメリカで、ロック、フォーク、そしてシンガーソングライター。自作自演でアコギを弾きながら唄う草なぎの指向性はシンガーソングライターの像にある。

 ただ、ソロでの草なぎの実力は、まだまだ途上段階だ。ギターも、歌も、楽曲も。終演後のマスコミ向けの会見に現れた彼は「ギターには毎日触ってます」と言っていたが、始めてからの7年間ずっとギターを弾いたり練習したりをできていたわけではないだろうし、それはソングライティングについても同じくだろう。そこは、これも会見での「ステージのセットは細部にわたるまで偽物がないのに、唯一の偽物は僕の歌とギターテクニックですね」という発言からもうかがえる。これは、一部報道にあった自虐などでは、決してないだろう。

 しかしそんな状態なのに、この夜が最高に楽しめたのは、もちろんゲストの力が大きいのは前提として、やはり草なぎ剛という人の持つ才能と魅力があるのは間違いない。それはスター性とも言い換えられるだろう。

 何しろ草なぎには、30年近くも人前に出てパフォーマンスをし、コンサートをやってきた膨大な場数のキャリアがある。今夜はその場数という武器が、お客さんを楽しませること、音楽を楽しんでもらう方向に、ナチュラルに向かっていた。だから彼は曲ごとにMCを入れ、唄ったあとにもジョークで笑わせ、自分自身の今を伝える話をした。言うなれば「間違えちゃった」とまでこぼすような正直さも、そのひとつ。その懸命さは、決して偽物ではなかったはずだ。

 とくにゲスト2人へのギターに関する質問の多さは、客席を笑いに巻き込み、会場の微笑ましい雰囲気をより醸成した。その時間によって草なぎは、自分がそれだけギターに入れ込んでいるのを示すとともに、お客さんに「こんなに熱中しちゃって」という笑いを提供した。それをサラッとやってしまう彼は、間違いなくプロであり、また、エンターテイナーだとも感じる。

 そして僕が最も強く感じ入ったのは、くり返すようだが、草なぎの純粋さである。演奏でも、今夜のどの歌も「キレイに唄おう」とか「カッコつけよう」という邪心がなかった。そこはシンガーソングライター的であると思うし、そうした中でできる限りいい演奏をして、歌のいいところをオーディエンスに届けることに集中していた。そこで音楽への憧れとリスペクトが表現されていたことにも好感が持てた。

 で、この純粋さ、ピュアな点については、楽曲にも言える。多くの歌がそうなのだが、45歳の男性にしては、ちょっと青くさいし、ナイーブだ。たとえばラブソングにしても、愛犬への愛情を唄った曲にしても、巷の40代をどんなふうに思い浮かべても、なかなかこんな男のイメージは湧いてこない。まさに”I Love Pure”。極端な比較になってしまうが、今夜のセッションで唄われた斉藤和義の「ウサギとカメ」は、彼のアルバム『45 STONES』(2011年)の収録曲。斉藤はこの苦々しさを込めたハードな歌を、現在の草なぎの年齢の時に発表しているのだ。

 だがその「こんな男などいない」という部分こそが草なぎの個性なのだとも、幾度も感じた。よっぽどまっすぐで、よっぽど優しく、よっぽどウソをつくのが嫌いじゃないと唄えないような、純度の高い曲ばかり。それは彼だけが持つ、かけがえのない輝きに違いない。

 もっと言えば、そんなまっすぐさや本当にピュアな気持ちがないと、こんなに実力も人気も携えた4人のギター弾き&歌うたいを呼び、初ライブで共演するなんて考えつかないだろう。言わば、無謀スレスレ。しかしその発想を実行し、2日間を最高に楽しい夜として成立させたことには、やはり、ただならぬ才覚を感じた。

 草なぎが笑顔をふりまき、熱中し、音楽で観客とともに高まる瞬間は、独特のあたかかさがあった。彼は音楽の力を信じているのだと思う。なお、終演後の会見の去り際には、この夜、稲垣吾郎と香取慎吾が観に来ていたことも教えてくれた。

 40代半ばにして、大きな一歩を踏み出した草なぎ剛。ここからでも焦ることはないと思う。ソロアーティストとしての今後の活躍を期待しながら、だけどちょっと気長にとらえながら、見つめていきたい。

青木優

最終更新:12/1(日) 16:02
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