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夫の死で…「銀行預金が下ろせない」!? 子のいない夫婦の悲劇

12/1(日) 13:00配信

幻冬舎ゴールドオンライン

本連載では、相続アドバイザー協議会23期有志の著書、『新訂 家族で話すHAPPY相続』(プラチナ出版)の中から一部を抜粋し、相続発生時における典型的なトラブル事例とその解決策を解説していきます。

預金を引き出すには「相続人全員の同意」が必要に

【子どものいない人の相続●田中家の場合】

・被相続人(享年72歳)

・相続人妻68歳(子どもなし)、長兄の代襲相続人(長男56歳、次男53歳、長女51歳)、次兄82歳、姉の代襲相続人(長男51歳、長女48歳)、三兄75歳

・財産自宅不動産8000万円 銀行預金2000万円 合計1億円

田中さんは若くして息子を亡くし、その後は子宝には恵まれませんでしたが、奥様と2人で趣味の旅行や陶芸に没頭し、仲睦まじく生活しておりました。田中さんも定年退職を迎え、これから第二の人生という矢先の3年前に大腸がんが発覚し、晩年はがんとの壮絶な闘病生活を送りましたが、治療の甲斐なく昨年亡くなりました。

奥様は最愛の人を亡くした悲しみに暮れながら、葬儀、四十九日を終え、気持ちの整理も少しずつつくようになったころ、死後の整理を始めました。

ところが、そこで思わぬ事態に遭遇することになったのです。

夫名義の銀行預金が下ろせない……。奥様は田中さんの預金していた金融機関へ預金引出しの手続をしに行ったところ、「ご主人様の預金を引き出すには、相続人全員の同意が必要になります」と銀行担当者から言われました。「相続人といっても子どもはいなかったので妻の私だけでは……?」。奥様は銀行担当者にそう伝えたところ、「お子様がいらっしゃらなければ、ご両親かご兄弟の方も法定相続人になるはずです」と告げられました。

奥様は突然のことでご自身の状況がよく把握できなかったため、銀行担当者から弁護士を紹介してもらい、後日相談に行くことにしました。その結果、奥様以外にご主人の兄弟と甥、姪を合わせ7人が法定相続人であることが判明いたしました。

夫である田中さんは、13歳年の離れた長兄(すでに他界)を筆頭に、次兄82歳、長女(すでに他界)、三兄75歳の5人兄弟の末っ子で、田中さんの両親はすでに他界されていました。長兄、長女の相続分は、代襲相続により、長兄と長女の子どもである甥、姪にそれぞれ相続する権利があることがわかり、奥様は愕然としました。というのも、義父の相続時に兄弟間でもめた経緯があり、その後、次兄、長女とは仲違いし住まいも離れていることから疎遠になり、長女の子ども(甥51歳、姪48歳)とは実に40年近くも音信不通だったからです。

奥様は、相続人とは親せきづき合いもなく遠隔地に住んでいるため、弁護士を通じて相続人と連絡を取ってもらったところ、相続人のほうも、やはりもらえるものはもらいたいという態度を示してきたことで、その後、遺産分割協議でもめることとなりました。

奥様は田中さんがお亡くなりになる直前に自宅や銀行預金、その他財産に関係する一切を引き継ぐ旨の意思表示を受けておりました。「俺が死んでも、家と預金があれば暮らしていけるな、先に逝くけど元気に暮らしていけ」と最後の言葉を聞いてご主人を看取りました。それにもかかわらず、相続人である兄弟や甥、姪が要求してきた遺産分割案は法定相続分でした。夫のがんの闘病生活で2000万円近い治療費がかかり、現金や預貯金が不動産の価値に比べ、少額しかなかったので、奥様は泣く泣く自宅を売却しなければならない事態に陥りました※。

※2020年(令和2年)4月1日以降の相続からは、自宅を所有する夫が死亡したときに妻が引き続き自宅に住むことができる「配偶者居住権」と「配偶者短期居住権」が施行されます。

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最終更新:12/1(日) 13:00
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