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広がる環境対応 国際競争力のカギ握る(加藤出)

2019/12/3(火) 7:47配信

NIKKEI STYLE

自動車レースの最高峰「フォーミュラ1(F1)」で2019年11月に6度目の総合優勝を達成した英国人ドライバー、ルイス・ハミルトンが興味深い論争を欧州で巻き起こしている。彼は地球環境問題への強い懸念をSNS(交流サイト)で度々発してきた。海岸に大量のペットボトルやプラスチック廃棄物が打ち上げられている様子を嘆きながら報告する動画をアップしたり、環境への負担を低減するため肉食をやめてビーガン(完全菜食主義者)になったことを明らかにし、地球を救うために肉は食べない方がいいと呼びかけたりしている。
これまではサーキット間の移動にプライベートジェットを使い、日常生活では所属チームのメルセデスからもらった大排気量の超高級車に乗ってきた。しかしプライベートジェットは1年以上前に売却。日常生活では19年末までに温暖化ガスの排出と吸収を等しくする「カーボンニュートラル」を目指し、大型車はメルセデスに返して小型の電気自動車に変えたほか、プラスチック製品は使わずリサイクル可能な商品に切り替えているという。
ただ彼の主張はSNS上で厳しい批判を浴び、その多くが「偽善的だ」と主張している。F1は化石燃料を燃やして車を走らせ、タイヤも大量に消費する。ドライバーやチーム関係者は世界を転戦するため頻繁に飛行機に乗る。F1は温暖化ガス排出量が非常に多いイベントだろう。そのチャンピオンであるハミルトンの今シーズンのチーム年俸は4000万ポンド(約56億円)とされているため、彼の発言の真意を疑うコメントが欧州のSNSにあふれているとみられる。

■F1も環境問題に対応へ

F1レーサーという職業を考えればハミルトンは環境問題を口にせず、黙っている方が無難ではある。しかし欧州ではここ数年の夏の異常気象もあって、気候変動問題に対する危機意識は高まる一方だ。特に北ヨーロッパではエアコンを設置していない家が多く、人命にかかわるリスクすら台頭している。ハミルトンはこうした危機的ムードを鋭敏に感じ取っているのではないだろうか。F1の運営にサステナビリティー(持続可能性)の概念をもっと取り入れるべきだとの彼の問題意識を受け入れ、F1を統括する米リバティ・メディアは11月、30年までにカーボンニュートラルを実現するとの方針を発表した。環境に配慮する姿勢をアピールしていかないと、スポンサー企業が今後減少する恐れがあることも考慮された可能性がある。
筆者自身の経験でも欧州の環境問題に対する意識の高まりを痛感することが増えている。筆者は今秋、北欧のキャッシュレス・フィンテック事情を視察する機会を得たが、金融機関、フィンテック企業、中央銀行、政府系機関などどこを訪問しても環境問題が必ず話題になることに驚かされた。

金融関連でいえばESG(環境・社会・企業統治)投資、SDGs(持続可能な開発目標)、グリーンボンド(環境問題に取り組む事業の資金調達を目的とする債券)といったグリーンファイナンスやサステナブルファイナンスに関して自分なりの見解をしっかりと持っていないと、今の欧州では議論に参加できない空気すらあるように感じられた。計20近くの訪問先で会議室にペットボトルの飲料が置かれていることが一度もなかったことも印象深かった。
また筆者は先日、欧州の大手アパレルメーカー本部に勤める友人と再会する機会があった。彼は少量の水で栽培できる綿花などサステナブルな材料の開発を進めることが欧州のアパレル業界にとって最大のテーマだと語っていた。そうしないと消費者が大規模な不買運動を起こす可能性があるからだという。

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最終更新:2019/12/3(火) 7:47
NIKKEI STYLE

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