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忘年会帰りに死ぬ人がいる…法医解剖医がどうしても伝えたいこと

12/3(火) 6:01配信

現代ビジネス

お酒を飲んだ後に喧嘩すると危ない

 今度、解剖室へ運ばてきたのは、40代の男性。忘年会の帰りに些細なことから友人と喧嘩になったのだという。相手に顔を殴られて倒れた後、意識がなくなった。病院に運ばれたときには、すでに心肺停止状態だった。

 顎の左側に打撲の痕がある。後頭部にも打撲傷がある。顎は相手から殴られたときに、後頭部は倒れたときに道路とぶつかってできた傷に違いない。それ以外に傷はできていない。

 頭蓋骨に骨折はなかった。だが、頭蓋骨を開けてみると、脳の底面がひどく出血していた。くも膜下出血といわれるものだ。

 くも膜下出血というと、脳底部の動脈瘤が破裂して病死するものがよく知られている。だが、男性に起こったくも膜下出血は、病気で発症したものではない。

 男性はひどく酔っていたようで、顎を相手から殴られたときに、首が大きく前後に曲がってしまったようだ。お酒を飲むと、首の筋肉の緊張がなくなってしまう。殴られたときに、首が大きく揺れることになる。このときに、脳底部の動脈が裂けてしまった。

 お酒を飲んだ後に、喧嘩するのは危険だ。男性のように脳底部の血管が裂けたり、路上に転倒したときに頭を強く打ったりすることがある。

急性アルコール中毒で亡くなる人は少ない

 お酒による事故というと、急性アルコール中毒のことを思い起こす人も多いだろう。アルコールは胃と小腸から血液に吸収された後、肝臓で分解される。肝臓で分解される速さ以上にアルコールを飲めば、血液のアルコール濃度は上昇する。それが一定の値を越えれば、急性アルコール中毒で死亡する。

 実際に、急性アルコール中毒で亡くなった人を解剖したこともある。だが、法医解剖の現場の経験を言うと、急性アルコール中毒で亡くなった人を解剖することはほとんどない。これまでに3,000人くらい解剖したのだが、急性アルコール中毒で亡くなった人は10人もいないだろう。

 飲酒後に亡くなって解剖されるのは、お酒を飲んだ帰りに、交通事故死したり、植え込みに寝込んで凍死したり、転倒したときの頭蓋内損傷で亡くなったりした人たちである。アルコール中毒で亡くなったわけではない。飲酒が間接的に死因に関与した人がほとんどなのである。

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最終更新:12/3(火) 17:16
現代ビジネス

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