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松本人志の「薬物厳罰化」発言が何から何まで間違っている理由

12/3(火) 7:31配信

現代ビジネス

厳罰化論への反論

 まず、そもそもの大前提として、薬物事犯の件数は増えているわけではない。減少傾向または横ばいであるという事実をまったく無視している(図-1)。

 特に少年の薬物事犯は平成に入ってから激減している(図-2)。つまり、別に罪を重くしないでも減っているのである。

 そして、より重要なことは、これはこれまでも私がたびたび主張していることであるが、処罰だけでは再犯率が増えるというエビデンスがある(図-3)。

 他の研究でも、厳罰化によって犯罪率が3~5%増加するというエビデンスが繰り返し見出されている(1)。

 その理由としては、刑務所に入ることで、犯罪的な人々とのつながりが増えること、家族友人とのつながりが絶たれること、職を失うこと、自尊心が損なわれること、スティグマが大きくなり社会から排除されてしまうことなどが挙げられる。 

 薬物の使用は犯罪であることは間違いないが、その再犯率が高いのは、本人が反省していないことや懲りていないことが原因ではなく、犯罪であると同時に「やめたくても、やめられない病気」だという側面があるからである。

 したがって、刑罰と合わせて、あるいは刑罰より先に治療を実施すべきであることは明白である。執行猶予をなくして刑務所に入れるのは、逆効果しか生まない最悪の選択であり、むしろ執行猶予中にたとえ強制的であっても治療を受けることができるような仕組みを整えるべきである。

 コストの問題も考えないといけない。刑務所は年間1人当たり、400万円近いコストがかかる。一方、外来治療は50万円ほどですむ(図-4)。

 また、薬物依存症治療に1ドル投資すると、薬物問題関連コスト(拘禁、医療費、犯罪、失業など)の4~7ドルが節約できるというエビデンスもある(2)。わざわざ効果がないことを、高いコストをかけてやるという主張のどこに合理性があるのだろうか? 
 松本人志さんの意見については、ツイッターで堀江貴文さんが反論をしていた。「厳罰化すりゃ犯罪減るって思うのは浅薄だし、厳罰化は社会を不自由にする」というのが堀江さんの意見であるが、私もまったく同意見である。

 ただ堀江さんは、さらに「そういう意味で大麻などを合法化しているオランダは先進的なのかも。アムステルダムには面白い人材が沢山集まってきてるし」と述べているが、この部分は不正確であるし、賛成できない。

 まず、オランダが大麻を合法化しているのというのは、事実誤認である。オランダでも大麻は違法である。「非刑罰化」されているというのが正しい。あくまでも違法ではあるが、少量の大麻使用では刑罰を受けないというだけのことである。

 また、アムステルダムに「面白い人材」が集まっているかどうかは知らないが、仮にそうだとしても、大麻との因果関係はわからない。これらも印象に基づく大雑把な意見でしかない。

 ちなみに、2001年にほぼすべての薬物所持と使用を非犯罪化したポルトガルでは、その後薬物犯罪が増えるどころか、薬物関連犯罪、依存症者の数、薬物関連死や感染症などが減少している。

 治療や予防策を強化した結果、逮捕を恐れることなく治療を受けることができるようになったことがその一因だと考えられる。

 もちろん、他国の政策を社会的背景の異なるわが国にそのまま適用することは現実的ではない。しかし、データを見ると松本人志さんの主張とは正反対のことが起こっていることも事実である。

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(1)Bonta & Andrews (2017) The Psychology of Criminal Conduct (原田隆之訳 犯罪講堂の心理学 北大路書房)
(2)UNODC(2003)Investing in Drug Abuse Treatment
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最終更新:12/4(水) 1:01
現代ビジネス

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