ここから本文です

松本人志の「薬物厳罰化」発言が何から何まで間違っている理由

12/3(火) 7:31配信

現代ビジネス

夜回り先生こと水谷修さんの暴論

 水谷修さんといえば、薬物関係の書籍もたくさん出しているし、「自称」薬物問題の専門家なのかもしれない。しかし、彼の主張にも問題があることが多い。

 たとえば、田代まさしさんの逮捕を受けて、彼はこのように発言していた。

 「専門家は、ドラッグからの回復には、『底つき』が必要だと考えています。つまり、それまでの人間関係や仕事、家族、すべてを失い、そんな中で、過去をすべて捨てて救いを求めてこなければ、救えないということです。田代君は、まさにこの『底つき』まで行っていなかった。それが、今回の事件を引き起こしました」「罪を償い、過去のすべてを捨てて、『底つき』をして戻ってくれることを祈っています」

 十数年前ならいざ知らず、今どき「底つき」などということを言っている専門家はいない。彼の知識は多分、そのあたりで止まっていてアップデートされていないのだろう。

 確かに、大昔は専門家の間でも、「底つき」をして懲りてからでないと、薬物依存者は救えないと考える風潮があった。しかし、底をつくということは、人間関係も仕事も健康もすべて失ってしまうということだ。先に、刑務所に入ってこのような状態になったのでは、再犯率が高くなるというエビデンスを紹介したが、底をついてしまい、何も残っていない状態になれば、むしろ治療や回復が困難になる。心や身体がボロボロになってからでは遅すぎるし、取り返しがつかない。

 人は希望が持てるから、良くなりたい、回復したいと思うのである。すべてを失った後に、そのような希望が持てるだろうか。しかも、田代さんは既に多くのものを失っている。これ以上、もっと何を失えというのだろうか。あまりに酷で無責任な発言である。

 水谷さんの発言は、松本人志さんに比べると、話題性という意味では小さいかもしれないが、「専門家」だと思われている部分、むしろ世間に対する影響力は大きいかもしれない。これは本人の問題であると同時に、メディアの問題でもある。

 メディアは、有名だから、本を出しているから、などという単純な理由で「専門家」扱いすることをそろそろやめるべきだ。きちんとした科学的エビデンスを根拠としての発言であるか、本人の業績のなかに、一般的な書籍ではなく、専門的な学会発表や論文があるか、などを基準にすることは何も難しいことではないだろう。

3/4ページ

最終更新:12/4(水) 1:01
現代ビジネス

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事