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松本人志の「薬物厳罰化」発言が何から何まで間違っている理由

12/3(火) 7:31配信

現代ビジネス

コラムニスト矢部万紀子さんのコラム

 上の2人に比べると、影響力という点では劣るかもしれないが、「知識人」として論壇で発表されたという意味で、また別の問題があるのが、矢部万紀子さんの「沢尻エリカ逮捕に思う。つくづく『美』は罪だ」という一文である。矢部万紀子さんは、朝日新聞の元記者であり、AERAの元副編集長だそうだ。

 彼女は、沢尻さん逮捕を受けて、オピニオンサイトに長々とエッセイを寄稿しているが、全編憶測と偏見に満ちた文章である。彼女の意見は、タイトルにもあるように、沢尻さんが美人すぎたことが薬物使用の原因だという荒唐無稽なものである。

 「多分に推測が含まれる」とは断り書きをしているものの、「他の人が(薬物で)逮捕されるたびに意識していたという供述も伝えられていた。だとしたら、仕事を一気に失ってしまうことはわかっていたのだ。だが、その思考は深まらない」「『失敗や挫折』は、骨身にしみるほどではなかったのだろうと思う」「『美』が、彼女から考えるという機会を奪ってしまった。美というものの『罪』」「人一倍『美』を持っている彼女は、考えることを怠った。人一倍の『美』だからこそ、考えずに済んでしまったのだ」「つくづく『美』は罪だ」などと続く。

 開いた口が塞がらない。沢尻さんが美人だということと、骨身にしみていなかった、深く考えていなかった、ということに何の合理的な因果関係があるのだろうか。これは、本人が言う通り根拠のない憶測でしかなく、偏見である。

 沢尻さんが、バッシングや数々の問題があっても、それを乗り越えて仕事で成功を収めていたのは、何も美人だったからだけではないだろう。才能や努力、周囲の支え、多くの表には出ていない要因がったはずだ。それに、彼女が「何も考えていなかった」、「骨身にしみていなかった」などと何を根拠に断言できるのだろうか。

 また、薬物使用という問題を、陳腐な「物語」に落とし込んで、わかったようなふりをしてしまうのも本当に困ったものだ。

 犯罪や問題が起きると、世間はとかくそこに「物語」を求めがちである。「美人女優の転落」などというのは、まさにそんな「物語」にうってつけのテーマかもしれない。しかし、そんな安上がりな憶測と印象で、わかったような気になってしまっては困る。何の問題解決にもならないからだ。

 何かの複雑な事象を説明しようとするとき、人間は間違いを犯すものである。しかし、それを最低限に抑えてくれるものが、科学的エビデンスである。もちろん、科学も万能ではないし、間違いを犯す。それでも、乱暴で都合のよい憶測や印象よりは、よほど確かな「武器」であることは間違いない。

 物事が複雑化する時代、われわれはあやふやで間違いやすい主観に頼るのではなく、もっと謙虚にデータやエビデンスに頼り、それを拠りどころとするべきである。

 現代人に今一番必要とされるスキルは、このような科学的リテラシーではないかと思う。

原田 隆之

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最終更新:12/4(水) 1:01
現代ビジネス

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