このところ、芸能人の薬物問題が世間を賑わせ続けている。以前にも書いたが、決して芸能界に薬物が蔓延しているというわけではない。単に報道されやすく目立つからに過ぎない。芸能人の離婚はニュースになるが、一般人が離婚してもニュースにならないのと同じことだ。
芸能人が「クスリとセックス」に溺れるまでの全真相
しかし、世間の注目が集まっているこの機会に、薬物問題に対する理解を深めるのは良いことだ。その意味で、以前、前編・後編に分けて、薬物依存に関する基本的な内容を紹介した。
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・芸能人の逮捕続々…ゼロからわかる「薬物依存症」超入門
・芸能人「10年以上前から薬物」報道…一体どれくらいの依存度なのか
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今回は、その理解をもとに、誤った、あるいは問題のある報道内容について検証していきたいと思う。
特に、影響力のある有名人が、多くの人が接するネットやテレビなどのメディアで、偏見に満ちたコメントをしたり、誤った意見を披歴したりすることを放置しておけば、それがそのまま受け止められ、誤解が蔓延してしまうことにつながりかねない。
今年もノーベル化学賞の受賞者が出たが、その研究内容については、素人は誰も意見を挟まない。それは内容が専門的であるため、門外漢は不用意に意見を言うことを控えているからだ。
翻って薬物問題になると、同じように専門的で化学的・科学的内容であるにもかかわらず、生半可な知識で自信たっぷりに自説を説く人がいる。意見を言うなと主張したいのではない。
専門的な事柄について意見を述べるならば、しかも影響力の大きいマスメディアを通して意見を述べるならば、ちゃんと事前に勉強をしてから、正しい科学的知識を踏まえてからにしてほしいと主張したいのである。
まずは松本人志さんである。松本さんは、沢尻エリカさんの逮捕を受け、「もっとみんなに議論してほしいのは、法をもう少し厳しくしてほしい」とテレビ番組で主張した。
そして、「たぶん初犯で執行猶予じゃないですか」「法をもっと厳しくして、初犯だろうが(懲役)2、3年って決めないと減っていかないですよ」「罪を重くすれば確実に減るし」と自説を開陳した。さらに、言を継いで「これを言っているのは意外と僕だけ」と述べた。
何から何まで間違っている。
まず、彼はニュースを見ていないのか、新聞を読まないのか知らないが、この種の事件が起きるたびに、判で押したように「厳罰化論」が出てくる。うんざりするほど繰り返されているこの議論に対して、平気で「これを言っているのは意外と僕だけ」と言ってしまえることに呆れてしまう。
そして肝心の厳罰化論であるが、厳罰化をするとなぜ確実に薬物事犯が減るのか、その根拠は単に彼の思い込みだけである。憶測、主観、印象などで意見を述べることは、最も間違いにつながりやすいし、無責任このうえない。
最終更新:12/4(水) 1:01
現代ビジネス
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