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マクドナルドが苦しんだ「経営の逆回転」とはなんだったのか

12/3(火) 7:01配信

現代ビジネス

 タピオカ飲料大手の会長兼社長兼CEOに新たに就任することが発表された「プロ経営者」原田泳幸氏。マクドナルドではどのような経営を行なっていたのか。彼が苦しんだ「経営の逆回転」とはなんだったのか。今、振り返る。

「プロ経営者」原田泳幸氏は、マクドナルドで「何をやったのか」

 【前編はこちら】

逆回転(バックスピン)の始まり

 2010年は原田がマクドナルドを率いる「プロ経営者」として輝いた最後の年だったかもしれない。直営とFCをあわせた全店売上高は5427億円と過去最高に達した。

 マーケティングの出足も好調だった。海外のマーケティングにヒントを得た、米国のご当地ハンバーガー「ビッグ・アメリカ」キャンペーンは食材切れを引き起こすほど好調で、同年1月には1日あたりの全店売上高が過去最高の28億円にのぼった。

 ところが、翌2011年、3月に発生した東日本大震災の余波もあり、既存店売上高は通期で1%増と伸び悩みを見せる。店長やOBたちは「この頃からサービス力が下がり始めた」と声をそろえる。経常利益は保険金の戻し入れ益で、かろうじて増益を確保するという、それまでには考えられない数字だった。利益の成長に黄色信号がともった。

 2012年夏には「世界のご当地バーガー」など、マクドナルドが得意とする期間限定商品を投入したが、開始からわずか2週間あまりでセット価格を100円近く値下げせざるを得なかった。販売不振のためと思われる。

 もちろん、経営には運不運もあるだろう。期間限定商品のように本社が主導する大規模なナショナルマーケティングは、当たる場合もあれば当たらない場合もある。

 従来であれば本社のマーケティングが不発であっても、現場の店長が顧客を定着させるような、ローカルストアマーケティングを工夫することで補うことができた。ところが、原田改革の(1)、すなわち、店舗の標準化を名目に、各店長から裁量権を取り上げた結果、「ローカルストアマーケティングの縮小によって“自分で考えなくなった店長”が増えた」(元経営企画本部長)。

 「たとえば、時間があるときに店頭でクーポン券を配る、注文のときに『ご一緒にチキンナゲットもいかがですか』と追加注文をとるといったサジェスチョンができない店長が急激に増えた」(現役社員)

 現場のサービス力の低下、本社と現場のマーケティングの不均衡――。そう、この頃から原田改革が逆回転(バックスピン)を始めたのである。

 もはや現場の工夫には頼れない。結果、原田が頼ったのはクーポン券のばらまきや期間限定の値引きだった。バーガー購入客にハンバーガーの無料引換券を配布する「ハンバーガーデー」や、単価約300円のビッグマックを期間限定で200円にする値引きキャンペーンが増えた。2007~09年の3年間ではそれぞれ1回実施しただけだが、2010年~12年にはそれぞれ5回も行われている。

 この頃のマクドナルドの人事の変化も、現場のサービス力が低下していたことがうかがえる。2012年10月、米本社出身でアジアやアフリカの統括会社で営業・トレーニング担当の副社長を務めていたデビッド・マーフィーが日本マクドナルドのCOOに就任する。

 マーフィーは前述したQSCのようなオペレーションのプロフェッショナルで、かつて日本マクドナルドHDの代表取締役を務めていたこともある。マクドナルドでは、サービス力が低下すると、オペレーションの専門家を幹部に据える傾向があるのだ。

 だが、テコ入れの効果は薄く、2012年の決算は9期ぶりに減収減益に沈んだ。

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最終更新:12/3(火) 7:01
現代ビジネス

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