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知らない人でも引き込まれて圧倒される、競馬界の光と影を親子の物語に昇華した快作『ザ・ロイヤルファミリー』

2019/12/3(火) 6:00配信

週プレNEWS

ビギナーズラックで当てた馬券が縁で、あるワンマン社長の秘書を務めることになった青年。そこに待っていたのは、あまりにも深淵な馬主の世界だった――。

推理作家協会賞作家が描き出した"思いの継承"のドラマは、競馬ファンならずとも引き込まれること請け合い。綿密な取材の跡をにじませる小説『ザ・ロイヤルファミリー』に込めた思いを、著者の早見和真(はやみ・かずまさ)氏に聞いた。

* * *

――早見さんはもともと熱心な競馬ファンなのでしょうか。

早見 いえ、ハマっていたのは大学時代の話で、最近は馬券を買うことはほとんどありませんでした。何しろ本を出すこと自体がギャンブルのようなものですから、こうして小説家になってからは競馬もパチスロも自然とやらなくなりましたね。

ただ、学生時代はたまに大きく当てて、前期分の学費をそれで賄ったりもしていました。トータルで見れば損しているのでしょうけど......。

――そんな早見さんが今このタイミングで、馬主の世界に題材を求めたのはなぜでしょう?

早見 僕はデビューしてからこの11年、小説を書くことを楽しいと思ったことが一度もないんです。引きこもってパソコンに向かい続ける生活は、とにかくしんどいばかりで。

ある日、そんな思いを新潮社の編集者にぶつけてみたら、「そんなにつらいなら、次は無条件に楽しいと思えることをテーマにしてみてはどうですか」と言ってもらえました。幸い、同社から出た『イノセント・デイズ』が推理作家協会賞を取るなどして少し売れたおかげで、今なら遊ばせてやれるぞ、と。

そこで、自分にとって無邪気に楽しめるテーマってなんだろうと考えてみたところ、学生時代に夢中になった競馬に思い至ったんです。

――本作は馬もさることながら、馬主やそこに関わる人間も代替わりしていく大河的な作品に仕上げられています。こうした構想はどこから?

早見 今回最も描きたかったのは"思いの継承"です。僕はこれまで、作品の中で「父と息子」というテーマをなんらかの形で表現してきましたが、今回は真正面からこのテーマを描いてみようと考えたんです。

いつか二代記、三代記のようなものを書いてみたいと思っていたので、その意味でも競馬というテーマはうってつけでした。

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最終更新:2019/12/3(火) 6:00
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