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山沢栄子の回顧展ほか、いま行くべき“必見”展覧会

2019/12/4(水) 11:31配信

T JAPAN web

日本の女性写真家の草分け、山沢栄子の回顧展

 山沢栄子は、“女性写真家の草分け”と言われる作家のひとり。1926年に、絵を学ぶため、単身渡米。そこで、生涯の師となるアメリカ人写真家コンスエロ・カナガに出会い、本格的に写真を学び始める。日本に帰国したのちは、大阪に写真スタジオを設け、ポートレイトを中心とした商業カメラマンとして活躍した。
 東京都写真美術館で開かれている『山沢栄子 私の現代』展は、山沢の写真家人生を紐解きながら、彼女が晩年まで挑んだ“抽象的な写真表現”に光をあてる。メインで紹介されるのは、山沢の集大成である《What I Am Doing》シリーズ。色紙やカラフルな壁、また写真フィルムの現像の際に使うリールなど身近な素材を使ったコンポジションによるスティルライフ(静物画)の作品群である。

【画像】山沢栄子の写真集『遠近』からの作品も展示に

 これがユニークなのは、当時日本では珍しい鮮やかな色彩を使っていること。また単なる色や形によるコンポジションにとどまらず、写真ならではの表現に挑んでいることだ。たとえば、被写体に光を乱反射するメタリックな素材を配置し、油絵の具を混ぜるように、周囲の色を映り込ませるような試み。また、自身が過去に出版した写真集の1ページをくしゃくしゃに丸め、それを素材として再撮影した作品もある。

 彼女がこうした作風に到達する背景には、ニューヨークへの再訪や第ニ次世界大戦中の田舎への疎開があるという。ニューヨークで出会ったアーティスティックなファッション写真や抽象表現主義の画家たちとの交流。田舎では、自然の美しさに魅せられ、野菜や果物を使ったコンポジションにも挑んでいる。
 本展では、それらを収めた作品集『遠近』も展示。また当時のアメリカの写真家も紹介しながら、山沢の仕事を再検証する。

 いま、山沢の仕事を振り返る理由はほかにもある。女性写真家として自立していたカナガに師事し、平塚らいてうに共鳴していたという山沢。本展の公式SNSで、彼女の名言を紹介しているが、次のような言葉もある。
「事々にくだらないカンショウを受ける現代の女性の一人として私はどこまでも真面目に自分の信ずる道を行きたいと思ふ。出来たらそういふ生活の分野の有ることを、私は身をもつて同じ人達に語りたい」(寄稿『輝ク』「写真工房から」2年12月号、通巻21号、1934年12月17日1頁より )
 実験的な作品の裏側に覗く、パイオニアとして、表現者として今その瞬間を突き進む山沢の姿。それは、きっと多くの現代人を勇気付ける。

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最終更新:2019/12/4(水) 11:31
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