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NATOの「脳死」はトルコのせいではない

2019/12/4(水) 19:15配信

ニューズウィーク日本版

<設立70周年を迎えたというのに、シリアをめぐるアメリカとトルコの対立で、NATOは機能不全に陥っている。だが本当の問題は二国間対立以上の根本的なところにある>

NATO創設70周年に合わせて12月3日からロンドンで首脳会議が開催されているが、NATOの結束はかつて例をみないほど危うい状態だ。

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フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、11月7日に英エコノミスト誌が掲載したインタビューで、NATOは「脳死」に至っていると語った。ドナルド・トランプ大統領が率いるアメリカはもはやヨーロッパの防衛に関心がない、と彼は論じた。そしてNATOの政治的機能不全の証拠として、欧州が反対したトルコのシリア侵攻をトランプが黙認したことを挙げた。

トルコ政府はまた首脳会議直前に、同国が敵対するクルド人組織をテロ組織とみなすようNATOに要求し、それが認められなければ、ロシアの脅威に対抗するNATOの「バルト3国・ポーランド防衛計画」を支持しない姿勢を表明、各国の非難の的となった。こうした経緯から、NATOの政治的結束を脅かす元凶はトルコだ、という主張が生まれる。

だが、答えは簡単ではない。NATOは現在、国際的な安全保障環境の変化に適応する過程にある。内部に意見対立はあるものの、NATOは状況によって変化する同盟だ。冷戦終結以来、変わりゆく国際環境を把握し、その主要任務と戦略を新しい状況に適応させようと努めてきた。

この変革の政治的契機となったのは、2010年のNATO首脳会議で採択された「新戦略概念」だった。このときに軍事同盟としてのNATOの役割が見直された。同盟国の国境を超えた国際的な安全を目指す協調的安全保障を新たに加えたのだ。これが、国家安全保障とNATOの役割についての加盟国の見方が変化する前触れとなった。

<従来の境界を超えた活動>

NATOの従来の存在理由は領土防衛だった。NATOは、通常兵器および核兵器能力を使って、加盟国の領土に対する攻撃を阻止した。しかし冷戦の終結とともに、NATOはアイデンティティーの危機に直面した。東側の軍事同盟であるワルシャワ条約機構とNATOの加盟国間で人類の存亡がかかった全面戦争が起きる危険はなくなった。ヨーロッパの中心部で起きた90年代のユーゴスラビア紛争への軍事介入は、NATOにこれまでとは異なる形で存在価値があることを実証した。

2010年の新戦略構想はこうした変化を前向きにとらえ、NATOが従来の境界を超えて、以前は「管轄外」または立ち入り禁止区域と考えられていたアフガニスタンやリビアなどの地域と関わることを認めた。これが可能になったのは、NATO加盟国が自国の安全保障と世界的の平和をリンクさせて、より全体的な視点で見るようになったからだ。

これによって、NATOの戦略的評価に応じてあらゆる不測の事態に必要な能力を開発するために、NATO防衛計画の徹底的な見直しが必要になった。最新の防衛計画は、NATOが現地の状況によりよく対応できるように、バルト3国および東ヨーロッパをカバーする東部方面と、トルコに焦点を当てた南部方面とで、それぞれ別に準備された。

公表されていないが、NATOは2016年初頭にこれらの計画を決定したという報告がある。NATOの最高意思決定機関である北大西洋理事会では採択に必要な全会一致の評決を阻む大きな問題はなく、計画はすべての同盟国から政治的に支持されていた。

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最終更新:2019/12/4(水) 19:15
ニューズウィーク日本版

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