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「表現の不自由展・その後」が再開したその日、現場を訪れた

2019/12/4(水) 12:48配信

創

大浦さんの動画上映後、 会場で拍手が起きた

 10月8日、「あいちトリエンナーレ2019」の「表現の不自由展・その後」が再開された。
 同展示は開催直後から、「平和の少女像」の展示や、大浦信行さんの「遠近を抱えてpart2」が天皇の肖像を燃やしたということで激しい抗議にさらされた。
 電凸と呼ばれる組織的な電話による抗議行動や京アニ事件を連想させるような脅迫ファックスも送りつけられ、8月3日に展示中止が決定された。わずか3日間で中止に追い込まれてしまったのだった。
 そんなふうに中止になった展示が再開されたというのは世界的に見ても例がないらしい。だから数日とはいえ、展示再開は歴史的な出来事でもあった。
 再開されたといっても再び抗議がなされる恐れはあった。そこで再開後は警備上の問題を考え、入場者が制限されることになった。再開初日の8日は1回に約30人ずつ2回、計60人だけが展示室への入場を許された。
 入場者は抽選で決まるのだが、その抽選番号を割り振る行列に700~800人が並んだ。2回の抽選に並んだ延べ人数は1300人以上と報道された。
 1回目の抽選にははずれたが、私は2回目の入場者30人を選ぶ抽選に当たるという幸運に見舞われた。「表現の不自由展・その後」の会場の状況はある程度知っているつもりだったが、やはり百聞は一見にしかず。実際に入って気がついたことはたくさんあった。
 その再開第2回の入場組の目玉は、大浦信行さんの天皇をモチーフにした20分の動画「遠近を抱えてPart2」の上映だった。同日第1回目の14時10分の組ではその動画を上映しなかったようで、16時20分に入場した30人が、8月の中止以後、初めてそれを現場で見る機会を得たのだった。
 抽選に当たった30人は荷物を預け、展示をめぐる説明を読んだうえ、「表現の不自由展・その後」会場に順次入場した。入場の際にも金属探知機で入念なボディチェックが行われた。会場内に入ると、「表現の不自由展・その後」実行委員会のメンバーやキュレーターが出迎え、20分間、各自自由に展示を見ることになった。
 そして、残り20分で、「遠近を抱えてPart2」の動画がモニターに映し出され、30人が椅子や座布団に座って車座となり鑑賞した。8月3日まで上映されたものよりも大きなモニターで、画像はきれいだった。
 私は、大浦さんの自宅で8月に見て、9月の検証委員会の「フォーラム」でも見て、その時が3回目。そのほかの入場者はたぶん初めてだったと思う。
 何となく緊張した空気に包まれる中、上映は進み、終了。その直後、見ていた人たちから拍手が湧き起こった。これはいささか意外な展開で、私もつられて拍手した。意外というのは、大浦さんの作品はこれまでのものもなかなか難解で、一回見ただけではよくわからないという感想が多い。だから上映後に感動して見ていた人が拍手するという光景は初めてだった。
 帰京後、夜に大浦さんに電話でそのことを話した後、ちょっと考えた。あの拍手をどう受け止めればよいのだろうか、と。そのことに触れる前に、10月8日、「表現の不自由展・その後」が再開されたという、その1日の「あいちトリエンナーレ2019」の様子を報告しよう。

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最終更新:2019/12/4(水) 12:48

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