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美術作家が直面した戦後初めての事態

2019/12/4(水) 13:17配信

創

「戦後最大の検閲」という見方も

 平和の少女像と並んで、「表現の不自由展・その後」展示で焦点になったのが、大浦信行さんの作品だった。特に動画『遠近を抱えてPart2』は、昭和天皇を燃やし、足で踏みにじっているとして批判された。大浦さんは本誌などで制作意図を説明し、決して天皇批判といった政治的文脈ではないと強調してきた。
 そして大浦さんの版画『遠近を抱えて』14枚の全作品を展示した別の美術展で、今度は原爆を描いた作品に抗議が出されたという。
 自分がイメージで創造した美術作品について作家がひとつひとつ説明せねばならないという、この間否応なく求められた事態も含めて、大浦さんに思うところを語ってもらった。

――「表現の不自由展・その後」が10月8日に再開し、14日に「あいちトリエンナーレ2019」が終了しましたが、大浦さんは今回の一連の事態をどう見ましたか? 大浦さん自身が渦中にいたわけですが。
大浦 「戦後最大の検閲」という人もいますが、確かにこういう事態は戦後初めてといってよいのではないでしょうか。今まで個別には、例えば赤瀬川源平の千円札事件とかありましたが、今回のように集団でしかも公的資金がからんでいるのは初めてのことだと思います。
――出展した海外作家たちの抗議の意思表示もかなり広がりました。
大浦 意思表示した作家たちの半分くらいは、これまでも作品を通してそういうことをやってきた人たちですね。最初に作品を引き上げた韓国の2人の作家も、朝鮮半島の分断といったテーマを表現してきた人たちだし、キューバの作家も逮捕されたりしている人たちでしょう。問題意識が作品とイコールになっているんですね。
――日本の美術家についてはどう感じましたか?
大浦 8月6日時点で抗議声明に署名した作家が87名もいたでしょう。その点は大きかったけれど、ただ出展した作品を展示中止にしたり、変更したりというところまでやったのは日本人作家では2人ですよね。
――でも今回は、小泉明郎さんや卯城竜太さんらを中心に「RE Freedom AICHI」というプロジェクトも立ち上がった。日本の作家たちもがんばりましたよね。
大浦 そうですね。今回は、表現する者の立ち位置が問われる、そんな機会でした。
――大浦さんの動画『遠近を抱えてPart2』は「表現の不自由展・その後」の中止とともに封印されたわけですが、9月21日の検証委員会のフォーラムで全編公開されました。しかもフォーラム全体の動画がユーチューブにアップされたことで、ネットで見られるようになったわけですね。
大浦 いや僕はフォーラムで流すことは了解していたけれど、ネットの話は全然聞いていませんでした。
――ネットで見られるようになって何かリアクションはなかったのですか?
大浦 特になかったですね。
――「表現の不自由展・その後」が再開されてから、一度会場にも行かれたんですよね。
大浦 10月10日に行きました。ただ上映が終わった後に「せっかく作家も来ていますので」と学芸員に紹介されて、挨拶と説明を3~4分しただけです。平和の少女像の作者のキム夫妻は、会場を訪れた時に討論の時間も設けられていたようですが、僕の場合は、討論といったことではありませんでした。
――10月8日に会場で動画を見た時は上映後に拍手が起きたのですが、大浦さんが行かれた時はそういうこともなかった?
大浦 なかったですね。拍手か、いいですね(笑)。

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最終更新:2019/12/6(金) 10:36

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