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中学以降も電卓を使わせない日本の遅れた数学教育

2019/12/5(木) 15:39配信

ニューズウィーク日本版

<世界的には中等教育以降の数学では電卓を使用して思考や説明に重点が移っていく国が多いが、日本の現場ではそうなっていない>

エミール・デュルケムの『自殺論』は、社会学の古典として広く知られている。刊行は19世紀の末で、コンピューターはおろか電卓すらなかった頃だ。ヨーロッパ各国の時代別・地域別・身分別等の自殺率を手計算ではじき出すのは、膨大な労力を要したことだろう。

【チャート】各国比較、小学校の算数で電卓を使わせる比率

今は電卓があるので、複雑な計算も簡単にできる。コンピューターも出回っているので、人口学的・天文学的なレベルの計算も、個人でやってのけることができる。こういう時代だというのに、3ケタや4ケタの四則演算を紙と鉛筆でやらせることに意味があるのか......こういう疑問を持つ人も多いはずだ。

国際教育到達度評価学会(IEA)の国際学力調査「TIMSS 2015」では、各国の教員に「算数・数学の授業で電卓を使わせるか」と尋ねている。この問いへの回答を国ごとに比べると面白い。<表1>は、「自由に使わせる」「場合による」と答えた小学校教員の割合を高い順に並べたものだ。

<表1>

小学校の授業での電卓使用率の国際比較だ。47カ国でみると93%から3%まで大きな開きがある。日本は61%で、意外にも高い部類に入る。後で触れるが、学習指導要領では電卓の使用は推奨されている。

最も低いのはシンガポールで、この国の小学校では電卓の使用がほぼ禁止されているようだ。国際学力調査で上位常連国だが、地道に計算力を鍛えていることが良い結果を出している、と考える人もいるかもしれない。

<小学校と中学校で方針が劇的に変わるシンガポール>

だがこれは小学校4年生のデータで、年齢が上がると事情は変わってくる。中学校になると、電卓を使わせる教員が多くなる。アメリカは小学校4年生では40%だが(上表)、中学校2年生になると65%に増加する。シンガポールでは、変化はもっとドラスティックだ。日本、アメリカ、シンガポールという3カ国を取り出し、小学校4年生と中学校2年生の電卓使用率をグラフにすると<図1>のようになる。

<図1>

電卓の使用頻度は小学校では日本が最も高いが、中学校になるときれいに逆転する。日本は小・中学校で変化はほぼないが、他の2カ国はそれがはっきりしている。小学校では計算力の訓練、中学校以降では考えることや説明に重きが置かれているのだろう。国際的にみると、こういうタイプの国が多い。

日本もカリキュラムの上ではそういう枠組みで、小学校では筆算力を鍛え、中学校では電卓を適宜使い、学習効果を高めることとされている(新学習指導要領)。しかし現実には、そのようなステップアップはされていないようだ。

欧米では中等教育以降は試験でも電卓が使えるようになり、数桁の筆算を紙と鉛筆でガリガリとやる日本の生徒を見ては大いに驚く。発達段階が上がるとともに、思考や説明(表現)に重点を移していくべきだ。授業での電卓使用の国際比較から、日本はその余地が多分にあることが分かる。

<資料:IEA「TIMSS 2015」>

舞田敏彦(教育社会学者)

最終更新:2019/12/9(月) 12:21
ニューズウィーク日本版

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