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「ルパン三世」悲しみの19年 CG版はファンの期待に応えるか?

2019/12/6(金) 7:02配信

FRIDAY

原作者のモンキーパンチ氏が4月に亡くなり、11月29日には石川五ェ門の声優(2代目)を務めた井上真樹夫氏が亡くなった。『ルパン三世』にとって、哀しみの年となった2019年。12月6日からは実に23年ぶりとなる劇場版が公開されるーー。

2020年のお正月映画戦線。先陣を切った『アナと雪の女王2』(19年11月22日~)は、公開10日目で早くも観客動員338万人・興行収入43億円を突破して爆発的ヒットとなっている。一方、迎え撃つ邦画主要3社は12月上旬から順次上映を開始するが、イチオシ作品のラインナップは、いずれもノスタルジー路線である。

【場面フォト】カリオストロ風味+藤原竜也vs吉田剛太郎の演技炸裂!

松竹は『男はつらいよ お帰り寅さん』(12月27日公開)で、あの車寅次郎(渥美清)が蘇り、東映の『カツベン!』(12月13日公開)は周防正行監督が無声映画時代のスター「活動弁士」にスポットライトをあてる。そして東宝が放つのは、23年ぶりの劇場版、しかもCGで描かれる『ルパン三世 THE FIRST』(12月6日)である。

邦画3社の先頭を切って公開される『ルパン三世 THE FIRST』の出来栄えはどうか? 結論を先に述べよう。

【マニアにはどこか懐かしく、ライトな観客も楽しませる。映画史に残る傑作、ではないが満足度の高い佳篇】に仕上がっている。

おなじみのルパン一党と銭形警部は、CGになっても相変わらず魅力的だ。唯一、峰不二子のキャラクターデザインについては意見が分かれるかもしれない。ただ、これはCG云々以前の問題だ。そもそも不二子のキャラクター(デザインと性格)はテレビシリーズ第1作(71年~72年)の前半と後半でもガラッと変化していて、以来、作品毎で変化が一番激しい。そこに観る側の「理想の悪女像」(?)のようなものが重なってくるのだから、もうどこにも正解はないのだろう……。

声優陣は、次元大介:小林清志氏(86歳)だけが1971年のテレビ第1シリーズから不動。他は少しずつ交代し今に至っている。寂しさはありつつも、最新版のメンバーも、もはやほとんど違和感なく「ルパン一家」を好演している。

ルパン三世…初代:山田康雄→2代:栗田貫一(1995年~)
次元大介:小林清志
峰不二子:二階堂有希子→増山江威子(第2シリーズ~)→沢城みゆき(※1 TVSP「ルパン三世 血の刻印 ~永遠のMermaid~」2011年~)
石川五ェ門:大塚周夫→井上真樹夫(第2シリーズ~)→浪川大輔(※1~)
銭形警部:納谷悟朗→山寺宏一(※1~)

さて、監督・脚本を手掛けるのは山﨑貴。

キャリアの初期は『ジュブナイル』(2000年)、『リターナー』(2002年)とスタイリッシュなSF映画を連投していたが、やがて『ALWAYS 三丁目の夕日』のノスタルジー3部作(05年、07年、12年)によって国民的映画監督となり、並行して2本のCGアニメ『friends もののけ島のナキ』(11年、共同監督)、『STAND BY ME ドラえもん 』(14年、共同監督)も手掛けて、実写とCGアニメ、いずれも興行的・作品的に評価された。

他にも『SPACE BATTLESHIP ヤマト』(10年)、『永遠の0』(13年)『寄生獣』(14年)、『寄生獣 完結編』(15年)、『海賊とよばれた男』(16年)など、数々の大作・話題作・原作ものを監督するヒットメーカーであるがゆえに、アンチも多い。

19年は『アルキメデスの戦い』(7月)、『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー 』(8月)、そして『ルパン三世 THE FIRST』の3作品が公開という売れっ子ぶりだ。さらに2020年には「東京オリンピック」のエグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクター(!)という大仕事が控えている。

監督自らが脚本も書いた『~THE FIRST』の物語は、言ってしまえば〔ゲストヒロインと新たな敵が出現して、謎の財宝を巡って世界中を駆け回る〕という、おなじみの筋書きだ。

山崎監督は、数多くの「ルパン」作品の中でも『ルパン三世 カリオストロの城』(1979年)など、宮﨑駿が監督・演出した作品が特に印象に残っている、と語っている。その言葉通り、『~THE FIRST』には、アダルトなムードというよりは、どこか「カリオストロ風味」が散りばめられている。

また一部のカットではあるが、初期ルパンに参加していたレジェンド・アニメーターが制作に加わっている。例えば『カリオストロの城』冒頭の、あまりにも有名なカーチェイス・シーンを手がけた友永秀和氏の起用も奏功している。

そして、おなじみの筋書きと言いつつも、実は展開を読ませないのが、ふたりの敵役の存在だ。俳優がアニメーションのキャラクター演じることには、とかく賛否がある。だが、本作で藤原竜也が演じるゲラルト(秘密組織を操る男)と吉田鋼太郎が演じるランベール(組織の研究者)は出色だ。

山崎監督言うところの“シェークスピアっぽい大芝居”が、笑えるほど大ハマりで、物語の展開とともに、ゲラルト(藤原)とランベール(吉田)の狙いや本性が一皮一皮めくれて行くのだが、最後の最後まで、一体どっちがラスボスなのか(あるいは、どちらもラスボスじゃないのか?)が、まったく分からない熱演と存在感。この作品ならではの魅力と言えるだろう。

上映時間:1時間33分は快調に進んで行く。古くからの観客は、CGを活かした大迫力のアクションシーン、手書きのアニメ並みにスタイリッシュかつユーモラスなキャラクターたちの芝居を楽しみつつ、作中に散りばめられたオマージュに、ジワリと来るだろう。

山崎監督が音楽の大野雄二氏に『カリオストロの城』のエンディングを飾った名曲「『炎のたからもの』を超えてください」とオーダーした主題歌『GIFT』(作詞 – 水野良樹 / 作曲・編曲 – 大野雄二  / 歌 – 稲泉りん)も、幕切れにマッチして、なかなかエモーショナルな仕上がりだ。

モンキー・パンチ氏が漫画雑誌「漫画アクション」の創刊号で『ルパン三世』を生み出したのが1967年。この『~THE FIRST』でも要所要所でストーリーやキャラクターの監修をしていたが、残念ながら完成を待たずに亡くなった。

さて、CGで描かれた新しいルパン三世は、大勢の観客のハートを盗めるだろうか?

文:羽鳥透
1965年、東京出身。エディター&ライター

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最終更新:2019/12/26(木) 17:53
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