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ジャビット(うさぎ)の中で光る、遅咲きの1億円プレーヤー・亀井善行/川口和久WEBコラム

2019/12/6(金) 11:14配信

週刊ベースボールONLINE

ハッピーエンドの物語を期待

 おとぎ話って、年を取っても結構、記憶に刷り込まれている。
 いまだに「ウサギ」と言われて、最初に連想するのが「亀」だからね。
 足の速いウサギが油断して休んでいるうちにノロノロだけど地道に進んだカメに抜かれてしまったという、多少説教臭い話ではあった。

巨人・亀井善行外野手 夢の1億円プレーヤーに──

 ただ、プロ野球の世界は、みんなが油断して休んだりはしないウサギのようなもの。特に巨人は、毎年毎年、補強で他チームからトップクラスを取ってくるから(今年はダメだったが)、なかなか大器晩成の亀タイプは生き残れない。

 そんなジャビット軍団の中で、今年は亀井善行が見事に存在感を示した。
 途中からだが、亀井が一番に定着し、坂本勇人、丸佳浩と続く一、二、三番が優勝への原動力になったのは、誰もが認めるところだと思う。ただ、最初、亀井が一番に定着したとき、「もって3カ月かな」と意地悪いことを思った。
 こういうところでケガをするのが、今までの亀井だったからね。

 でも、今回は最後までよく頑張った。素直に拍手だ。
 契約更改では15年かけて年俸1億円になったが、新聞を見たら、1億円プレーヤーが小学校時代からの夢だったらしい。
 おめでとう、亀井。時々、「それで1億円か? ふざけるな」というやつもいるが、君の1億円は、みんなが祝福してくれると思うよ。
 ただ、1億円と言っても税金で6割は持っていかれるから浮かれ過ぎないようにね。

 彼は穏やかで、人懐っこいところがあり、優しい。ただ、プロの世界は必ずしも、それが利点にはならない。やはり、時にわがままになったり、俺が俺がと、人を押しのけてでも前に出るようなところも必要になる。

 名前が亀井だから亀に例えるのは安易だと思うが、そういう優しい性格と外野という競争が激しいポジション、あとはケガもあって、彼のプロ生活が、山あり谷ありの「亀の道」だったことは間違いない。

 2005年の入団も、なかなかチャンスをつかめなかったが、努力を重ね、まず09年にスタメン定着し、1つめの山の頂点に立った。開幕前のWBCでも活躍したしね。
 ただ、せっかく上った山だが、すぐ谷が待っていた。

 きっかけはケガだ。俺が巨人のコーチになったのは、2011年だが、バッティングセンスは素晴らしいものがあるのに、とにかく体が弱いというか、いつも骨折や肉離れをしていた印象がある。せっかくつかみかけたチャンスを何度も自ら手離していた。
 そのたび悔しい思いもしていたんだろうが、それを感じさせず、いつも静かにやっていた印象にある。

 それでもケガとの戦いも勝ち抜き、首脳陣の信頼も得て、ようやく体も心も強くなったのが、37歳の今年だった。2つめの山の頂点、いわばキャリアハイ第2章。まさに大器晩成型だね。
 
 でも、来年はまた、大変だよ。年齢との戦いもあるし、今年と同じように使ってもらえる保証はどこにもない。それでもオリンピックというワンクッションがあるから、最初から思い切って飛ばせるかもしれないね。今年一気に打率を落とした8月の戦いも減るから。
 
 巨人の中のウサギ(ウサギの中のウサギ)となると、40歳で引退した中大の先輩・阿部慎之助かな。今さら彼の記録は抜けないが、引退の年齢を抜き、そこでもスタメンでいるというのは、一つの目標にしていいんじゃないかな。

 そうしたら、巨人版「ウサギと亀」の昔話は、ハッピーエンドの「めでたし、めでたし」で終わることになる。

週刊ベースボール

最終更新:2019/12/6(金) 11:16
週刊ベースボールONLINE

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