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教師をむしばむ長時間労働 変形労働制だけでは救えない

2019/12/6(金) 12:21配信

Wedge

 2019年12月4日、公立学校の教員の勤務を年単位で調整する「変形労働制」を導入できる法改正案が参院本会議において賛成多数により可決された。改正法の成立により、学校行事が忙しい時期の所定労働時間を延長し、代わりに夏休みの授業がない期間の労働時間を短縮することができるようになる。

 この背景にあるのは、教員の長時間労働だ。18年9月に文部科学省が公表した教員勤務実態調査(2016)では、公立学校の小学校教諭の3割、中学校教諭の6割が「過労死ライン」である月80時間を超える時間外労働を行っていることが分かった。国際的にみても、経済協力開発機構(OECD)が6月に発表した国際調査によれば、日本の小中学校教員の1週間当たりの勤務時間は小学校で54時間、中学校は56時間にのぼり、加盟国等48カ国・地域の中で最も長い。

 「教育実習で仕事の多さに圧倒され、教師の夢を諦める学生が後を絶たない」。北海道教育委員会上川教育局の川島政吉主幹は悔しさをにじませた。こうした労働環境を改善するためにも、教員の確保も重要な課題となっている。近年の大量退職に向けて採用枠を増やす傾向にある一方で、教員志望者数は12年以降毎年減少している。ピークの00年には12.5倍あった小学校教員採用試験倍率は18年に3.2倍まで減少し、年々いい人材を採りにくくなっている。

 また、世代交代による年齢構成の変化で、現場力が落ちている。前述の教員勤務実態調査の結果を性別・年齢別にみると、男女共に30歳未満の教員の学内勤務時間が最も長かったが、学校教員統計調査(2016)によると、04年から16年にかけて20~30代の若手・中堅比率が増加し、40代のベテラン比率が減少していることが分かる(下図)。これまで40代のベテラン層が中心となって担ってきた業務を、若手・中堅が担っている状態だ。

”託児所”化する学校 進まない教員の意識改革

 なぜここまで学校で長時間労働が横行してきたのか。教員の長時間労働の温床となっているのが、「教職員給与特別措置法(以下、給特法)」の存在だ。給特法により、教員は給料に月額の4%分を上乗せして支給される代わりに、休日出勤や残業に対する賃金は支給されない。賃金と勤務時間がひも付かないので、「時間管理」に対する学校の認識は薄れていった。

 教育研究家の妹尾昌俊氏は、長時間労働を生んでいる別の原因について指摘する。「教員の働き方を考えずに教員の業務量を増やしたことに原因がある。授業だけでなく、生徒指導、課外活動、事務作業など、授業以外の負担が大きい。学校に求められることも増えており、安全配慮や食物アレルギーへの対応など、子供に関することは何でも教員が対応しなければならなくなっている」。

 授業時間やその準備時間(教材研究など)は教員にとっての本業である。文科省が作成する学習指導要領は教育内容や授業数の全国的な基準となるが、前回改定(08年)では、「ゆとり教育」からの揺り戻しもあり、年間授業数が中学校で105時間、小学校で278時間増加した。

 加えて、直近の改訂(2017年)では小学校での英語教育やプログラミング教育など新たな内容が追加されるとともに、生徒が能動的に学ぶことができるような新たな授業形式が取り入れられた。その一方で、新たな学習指導要領は、前回から学習内容の削減は行わないという方針のもと改訂された。

 「文科省の政策はビルドアンドビルド。ゆとり教育の批判が根底に残っているので減らしにくい」(妹尾氏)とみられている。

 また、生徒指導や部活動など、授業以外の負担も大きい。自らも教員として働き、学校の労働問題を扱うサイトを運営し、SNSを通じて発信する「ホワイト学年主任!」は、教員を取り巻く社会環境の変化について「共働き世帯や核家族世帯が増え、家庭で教育する余裕がなくなっている。また、近所の付き合いや地区の子供会も減って、地域全体で育てる文化も少なくなっている。結果として、家庭、地域、学校の三者が担っていた教育の多くを学校が負担することで、託児所のようになってしまっている」と打ち明ける。

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最終更新:2019/12/6(金) 12:21
Wedge

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