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商品もサービスも社名も…発音しやすければ「勝利」は近い

2019/12/6(金) 16:33配信

SmartFLASH

 驚くべき研究を紹介しよう。発音しやすい名前の会社のほうが、発音しづらい会社よりも株価が好調になるという内容だ。アルターとオッペンハイマーが2006年にPNAS(米国科学アカデミー紀要)という学術誌上でこのことを報告している。

 彼らはまず架空の企業名を60社分作り、被験者10名にそれぞれについて発音のしやすさを評定してもらった。その評定値をもとに、発音しやすいと評定された会社(15社)と、発音しにくいと評定された会社(15社)を選んだ。次に、先ほどとは別の被験者(大学生)29名に企業名だけを見せ、それぞれの企業の1年後の株価を予想してもらった。

 1年後の株価を予想するには、教科書的には、企業のビジネスモデルや競合他社、それらの自己資本利益率や株価収益率など、様々な情報を総合的に検討しなければならない。どの指標を重視すべきかについては判断が分かれうるものの、企業名の発音のしやすさが考慮すべき情報として挙げられることはまずない。

 ところがである。実験の結果、発音しにくい企業では、1年後の株価が平均で-3.8%になると予想されたのに対し、発音しやすい企業では、1年後の株価が平均で+3.9%になると予想された。

 例えば、アニーという架空の企業のほうが、アマルンダンテという架空の企業よりも、今後株価が上がるだろうと予想された。これは、「企業名の発音のしやすさ」という属性が、株価予想に影響を与えたことを意味している。

「この結果はあくまで架空の企業を用いた実験であり、被験者も大学生だ。実際の株式市場とは違うのではないか?」

 当然出てくる反論である。そこでアルターとオッペンハイマーは同じ論文の中で、ニューヨーク証券取引所のデータについてある分析を行った。

 株式取引を行うためには、上場している各企業を区別するための識別子が必要になる。東京証券取引所であれば、トヨタ自動車には7203、本田技研工業には7267のように、企業ごとに異なる4桁のアラビア数字が割り当てられている。これらの数字をIDとして、取引対象(上場企業)が区別できるようになっている。

 同じことは世界最大の証券取引所、ニューヨーク証券取引所にも当てはまるが、少しだけ異なる点がある。それは、識別コードが、数字ではなくアルファベットになる点だ。例えばトヨタ自動車はTM、本田技研工業はHMCとなっている。通称、ティッカーと呼ばれる識別子だ。

 このように、ニューヨーク証券取引所では識別子がアルファベットであるため、識別子によって、英語読みできるものと英語読みできないものとが出てくる。例えば、TIMならティムと読めるが、TVNだとすんなりとは読めないであろう。

 アルターとオッペンハイマーは、この違いを利用した。彼らは、1990年から2004年の間にニューヨーク証券取引所に上場した665の企業、および同じ期間に旧・アメリカン証券取引所に上場した116の企業を対象に、それぞれのティッカーが英語読みできるかどうか(つまり、英語話者にとって発音しやすいかどうか)で、その企業の上場後の株価がどのように変わるかを調べたのである。

 その結果、発音のしやすさと株価との関係が改めて浮き彫りになった。どちらの証券取引所においても、発音しやすい識別子(ティッカー)を持つ企業のほうが、そうでない企業よりも株価は高かった。

 これは、なぜなのだろうか? 株価が高くなるということは、その企業の今後の業績や配当金、人気などが肯定的に評価されたことを意味するが、なぜ、発音しやすいティッカーの企業は肯定的に評価されやすくなるのであろうか?

 この仕組みを理解するためには「単純接触効果」を思い出す必要がある。単純接触効果とは、見聞きした回数が多いブランド名ほど、良いものだと感じられる現象である。

 そのメカニズムとしては、ブランド名を繰り返し見聞きすると、その情報が記憶として脳内に蓄積される。その結果、素早くブランド名を知覚できるようになり、知覚するときのストレス(処理の負荷)が弱まる。このような負荷の少なさを、ヒトの脳はブランド自体の良さだと錯覚してしまう。

 以上の働きを、専門用語で、「処理流暢性(あるいは、認知容易性や知覚的流暢性)」と言う。

 そして、単純接触効果と同じことが、発音のしやすさにも当てはまる。発音しやすい企業名は、それを処理する際の負荷が少なく、労せず、流暢に処理することができる。そのような負荷の少なさを、脳は企業自体の良さだと錯覚してしまう。この結果、株価までもが肯定的に評価されるというわけだ。

 つまり、もしこれから社名や商品やサービスに新しい名前をつけるなら、発音しやすいネーミングを選ぶべきなのだ。

                 ※

 以上、『売れる広告 7つの法則 九州発、テレビ通販が生んだ「勝ちパターン」』をもとに再構成しました。効果的な広告を作る鉄板法則と購買心理モデルを、電通九州・香月勝行氏と心理学者の妹尾武治氏、分部利紘氏が解説します。

最終更新:2019/12/6(金) 16:33
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