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日本の子どもの「読解力」8位から15位に急落――“PISAショック”をどう読み解く?

2019/12/6(金) 11:12配信

文春オンライン

 PISA(経済協力開発機構が3年おきに実施する国際学習到達度調査)における日本の「読解力」の順位が急落したことを、12月4日新聞各紙が1面で伝えた。毎日新聞は総合面で「『PISAショック』再び」と見出しを付けた。「PISAショック」とは、2003年のPISAの結果で日本の順位が急落し、2002年に始まったばかりだったいわゆる「ゆとり教育」への疑念が噴出したことを指す。

【写真】PISAの「読解力」問題などこの記事の写真をすべて見る(全5枚)

 なんとも皮肉なのは、今回PISAを受験した子どもたちが実は小1から中3まで「脱ゆとり」教育を受けた1期生だということである。「PISAショック」から生まれたカリキュラムを受けた子どもたちが新たな「PISAショック」の当事者になってしまったわけだ。

 

そもそもPISAの順位に意味はある?

 もちろんPISAとは国の教育力を競う大会ではなく、順位の変動自体には本質的な意味はない。数値に有意な変動があるならば、その背景を探り、新たな打ち手を見つけることにこそ意味がある。またそもそも経済協力開発機構(OECD)は経済の観点から教育を評価しており、その学力観が絶対的ともいえない。

 であるからして、今回PISAでの成績が低迷したからといって「すぐに対策を!」というのは安直である。対策が必要な可能性は高いが、どんな対策が必要なのかを見出すには十分な議論が必要だ。そこを焦れば、大学入試改革のすったもんだの二の舞になりかねない。

 

ではPISAが定義する「読解力」とは?

 冷静な議論の前提として、PISAがいう「読解力」が日本の国語教育における「読解力」とはニュアンスの違うものであることをここでは指摘しておきたい。OECDが発表する例題を見てほしい。

●2018年調査問題例(コンピュータ使用型読解力問題)

 日本では「イースター島」の名前で知られる、モアイ像で有名な「ラパヌイ島」について、ブログ、書評、オンライン科学雑誌の記事という3種類の文章を、パソコン画面で読む。選択問題についてはマウスでクリックして解答し、自由記述問題においてはキーボードのローマ字入力で解答する。

 書評の内容にそって5つの短文を提示し、それぞれ「事実」か「意見」かを選択させる問題や、複数の文章にまたがって類推できることを根拠を挙げて記述させる問題などが並ぶ。親世代が国語のテストで受けた「読解問題」とはだいぶ印象が違うはずだ。PISAでは「読解力(リーディング・リテラシー)」を以下のように定義している。

 <読解力の定義>

 自らの目標を達成し、自らの知識と可能性を発達させ、社会に参加するために、テキストを理解し、利用し、評価し、熟考し、これに取り組むこと。

 <測定する能力>

(1)情報を探し出す
 -テキスト中の情報にアクセスし、取り出す
 -関連するテキストを探索し、選び出す
(2)理解する
 -字句の意味を理解する
 -統合し、推論を創出する
(3)評価し、熟考する
 -質と信ぴょう性を評価する
 -内容と形式について熟考する
 -矛盾を見つけて対処する

 特に下線を引いた「質と信ぴょう性を評価する」「矛盾を見つけて対処する」の2項目は、今回の調査で新たに追加された要素で、まさにこの点において日本の子どもたちの正答率が低かった。

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最終更新:2019/12/6(金) 11:12
文春オンライン

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