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世界が注目する歴史学者の「文明を見る眼」

2019/12/6(金) 5:55配信

東洋経済オンライン

歴史とは何かと問われて、多くの人が思い浮かべるのが、皇帝や王、武将や政治家など、階層性の組織(垂直に立ち上がるタワー)の頂点で権力を握る人間が、強烈なリーダーシップを発揮し、トップダウンで世界を変えてきたという物語だろう。
しかし、本書『スクエア・アンド・タワー』(上: ネットワークが創り変えた世界、下:権力と革命 500年の興亡史)で繰り返し紹介されるのは、横に広がる、非公式な草の根のネットワーク(スクエア)が、既存の階層制に挑戦し、革命や変革といった形で世界のあり方を変えてきたさまざまなエピソードだ。

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「今、もっとも優れた知性」の1人とも目される歴史学者であり、『マネーの進化史』『文明』『劣化国家』などの著書があるニーアル・ファーガソンは、本書において「人と人とのつながり=ネットワーク」こそが世界を動かす大きな原動力だと指摘する。今回、本書の概要について、翻訳を担当した柴田裕之氏が解説する。

■アイデアやイノベーションを広げるカギ

 あなたが勤める会社にも、「あの人に相談すれば、うまく根回ししてくれるよ」と、誰からも頼られる人物がいるのではないだろうか?  部署の垣根を越えてさまざまな人物につながっていて、社内のみならず、社外でも顔が広くて、社内のゴシップから業界の最新情報まで、やたらと詳しい「キーパーソン」である。

 アイデアやイノベーションが広まる際には、こうしたキーパーソン(ノード)が重要な役割を果たし、ネットワークの内部にどれほど多くの、どのようなノードが存在するのかが、情報伝達のカギとなる。

 また、仕事を探している人は、近しい間柄の親友よりも、それほど親しくない知人に助けてもらえる場合が多いという。このような結びつき(弱い紐帯)は、それがなければまったく結びつくことがなさそうな集団同士の架け橋となり、アイデアを広める役割を果たす。

 では、人類の歴史において、どのようなノードが、どのようなネットワークを形成し、世界を動かしてきたのだろうか? 

 言うまでもなく、人類は社会的な生き物だ。ヒトは無比の神経ネットワークをもち、生まれながらにネットワークを形成するようにできている。人類がほかのあらゆる動物と一線を画するのは、コミュニケーションを行い、集団で行動し、ネットワークを形成する能力にある。

 そして本書によれば、その能力によって文明を築いた古代の人々は、強力な階層制のもとに暮らしていたという。つらい仕事に従事させられた古代の庶民は、一部の特権的なエリート層によって従属させられ、権力に楯突くことは禁じられ、横のつながりをもつことは不可能だった。

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最終更新:2019/12/6(金) 5:55
東洋経済オンライン

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