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EVというよりEV含むハイパフォ・カーで盛り上がった2019年のLAオートショー

2019/12/7(土) 21:17配信

GQ JAPAN

あらゆる自動車メーカーが「Electrified(電動化)」を合言葉に、EVやPHEVへのシフトを進めている昨今。電動化やエコ化だけが目的ではなく、電動化がもたらすハイパフォーマンス自体を「ニューパワー」として、享受・礼賛する傾向がLAオートショーで際立った。

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LAオートショーが注目される理由とは

ご存知カリフォルニア州といえば、自動車の街。生産地としてのそれはデトロイトに譲るが、消費地として永遠のタイトルホルダー、それがカリフォルニアでありロサンゼルス。ロサンゼルス空港に降りる際に、眼下のフリーウェイを、5~6車線幅のコンクリート路面の上を、無数のクルマが滑るように走っている様は、いつ見ても壮観だ。

そもそもロサンゼルスは、オレンジ・カウンティと合わせただけでも関東平野の約2/3ほどの広さで、広域都市圏として周辺で人口の多い3郡をさらに足すと約8.8万平方kmと、北海道より大きな面積となる。経済規模だけを見ても、イタリア一国分に相当するといわれている。

地下鉄やUBERのようなサービスも台頭してきたとはいえ、いまだフリーウェイを行くクルマの大半は一人乗りで、2人以上乗車もしくはEVなら「カープール」といわれる優先車線を使う権利がある。それほどカリフォルニアで乗用車は生活必需品であり、市場として大きな規模と需要をもつばかりでなく、リベラルであるがゆえに使う側と売る側の責任という点でも、世界でもっとも厳しい排出ルールを伝統的に課してきた土地柄だ。ゆえにここ、カリフォルニアで行われるLAオートショーは年々、重要度を高めている。

ニューパワーは快楽と共犯関係を結べるか

ところがLAオートショーが、新しいEVの檜舞台であるかのような見方は、木を見て森を見ないに等しい。そのスターが必ずしもEVに限られないところが、カリフォルニアひいてはアメリカの自動車観の面白さでもある。

今回のショーで注目を集めた「オールド・スクール」代表はGMから、1953年の初代以来アメリカ伝統のスポーツカーとして君臨してきたシボレー・コルベットだ。8世代目にしてついにFRレイアウトからミッドシップ化された。実車は横から見ると、かなりキャブフォワード気味のプロポーションで、ケーニヒセグやパガーニらに通じるものがある。6.2リッター・495ps仕様のV8にデュアルクラッチ式8速ATを組み合わせた強大なパワーユニットの存在感を、そのまま語るかのような外観なのだ。しかも駆動方式は後輪駆動のみで、0-60マイル加速は2.8秒、それでいて本国での価格は6万ドルを切る5万9995ドル~と発表されている。ちなみに今回は電動トップを備えたコンバーチブルも発表されたが、いずれもプリ生産モデルとのことだった。

昨今のスーパースポーツの定石として、とくに欧州車はハイパワーを効率よく使い切るために高度に制御されたAWD化は必然の流れだった。そこに「飼い慣らされないパワー」という選択肢をあえてコルベットが採ったことは、価格と同じぐらい注目に値する。

逆に、伝統のネーミングを電動化パワーによって復活させたのが、フォードのマスタング・マッハEだ。パワーユニットは永久磁石モーターで332ps・565Nmを発揮、駆動方式は後輪駆動もしくは4WDが用意される。さらに強力な「GT」そして「GTパフォーマンスパッケージ」も予定されており、前者は459ps・830Nmを備えるとフォードはアナウンスしている。ベースモデルとGTの仮想敵はそれぞれ、ポルシェ・マカンとマカンターボだ。

元祖マスタングは、そのスペシャリティ色の強いキャラクターゆえに並の実用車と分けて「ポニーカー」と呼ばれた。そのマスタングやマッハといった名看板が、現代の「ポニーカー」的存在となったSUVクロスオーバーに受け継がれることに違和感を覚えないでもない。逆にいえば、ポニーカー繋がりだけで元祖とは似ても似つかないが、スペシャリティとしてのキャラクターとマッスルな加速を備えたEVが、その名を使うことは正当かつ正統であるとフォードは判断したのだろう。

いってみれば、放埓なパワーやトルクがもたらす扱い易さというか、海外の自動車評論がよくdocile(甘やかしてくれるほどの従順さを備えている、という意味)と形容するクオリティが守られれば、内燃機関か電動か?は問わない訳ではないが、後からでいい。そんな土壌を感じさせる意味で、新しいコルベットとマスタングは象徴的だった。カリフォルニア州がEVを優遇するのは、何も清教徒的にクリーンな倫理観からではないことは、昔ながらのドーナッツ・ショップの隣に巨大チェーンのフィットネスジムが構える、そんなショッピングモールがあちこちにあることを見れば明らかだ。自由には大きな責任が伴うが、原則は自己責任。だからこそチート(インチキ)には厳しく、欧州の主導するCO2削減のような総量規制には馴染まない、それがアメリカ的なリベラルさなのだ。

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最終更新:2019/12/7(土) 21:17
GQ JAPAN

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