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太陽光発電事業の縮小を迫られるテスラ──さよなら、ミスター・サンシャイン【前編】

2019/12/8(日) 9:22配信

GQ JAPAN

2016年、電気自動車の専門メーカーとして有名なテスラ社のCEO、イーロン・マスクはソーラーシティ社を買収するにあたり、新たな挑戦で世界を変えると豪語した。それから3年、テスラの太陽光発電事業は急成長どころか破綻の瀬戸際にあるようだ。前編をお届けする。

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2019年3月の土曜日の夜、デニス・スコットはニューヨーク州北部のバッファローの自宅でソファーに腰かけていた。白髪まじりの髪に、短く刈り込んだ顎ひげをたくわえ、がっしりとした体格のスコットは、2カ月前にテスラの世界的な人員削減の一環として、同社の太陽光発電部門の工場から解雇されていた。それ以来、イーロン・マスク宛てにEメールや歯に衣着せぬツイートを送りつけ、解雇により生じた痛みを訴えることが習慣になっていた。

彼が職場を追われた10日後に、マスクは機関銃のようなものを手にポーズを決めたふざけた写真をツイッターに投稿した。スコットは写真をリツイートし、「もしも私がCEOで、会社が傾きかけているという進言を受けたなら、道化になろうとは思わない。従業員たちの生活が自分にかかっているのだから」というコメントを添えた。

その土曜日の午後10時頃、電話が鳴った。電話帳に登録のない番号からだ。スコットは電話に出た。

「やあ、あなたの言う道化だけどね」と何者かは名乗った。

スコットは怯まなかった。マスクはたぶん、会社から電話番号をもらい連絡してきたのだと思った。それから20分間、スコットと彼の元雇用主は礼儀をわきまえた言葉遣いで会話を続けた。「あなたはいつ、会社を立て直すつもりなのですか?」とスコットは訊いた。

マスクは優しい口ぶりだったが、具体的なことは何ひとつ語ろうとしなかった。スコットは、「バッファロー・ビリオン・イニシアチブ」というアップステート・ニューヨークの再開発計画にたいしてテスラが州政府から受け取った7億5000万ドル(約800億円/1ドル=106円換算)の補助金(もちろん税金から支出されている)にも言及して、あなたが状況を変えてくれると皆が期待していたのに、と無念さを口にした。

「マスクは話すといい奴なんですよ。ですが中身はクソの塊です。相手が喜ぶ言葉を並べるのがうまいんです」と、スコットは失望をあらわにした。

マスクはニューヨーク州バッファローにある太陽光パネル工場のことを、公の場であまり語ろうとしない。かつては「ギガファクトリー2」と喧伝していたというのに、だ。ちなみに「ギガファクトリー1」とは、テスラがネバダ州リーノーに建設している近未来的な電気自動車工場。いっぽう、いまやだんまりを決め込んでいる「ギガファクトリー2」とは、アメリカで拡大するソーラーエネルギー市場の支配を目指すテスラによる、一か八かのサイドビジネスだ。2016年に総計50億ドル(約5387億円)近くを投じてソーラーシティ社を買収し、「バッファローを西半球で最大の太陽光パネル生産拠点にする」と約束したマスクは毎日1万枚のソーラーパネルを生産し、アメリカ中の家庭と企業に設置すると言ってのけた。プランが成功すれば、この地域に5000人もの雇用を生む機会が訪れるという触れ込みだった。

バッファローの工場を外から眺める限り、マスクの言葉に偽りはないようにも思える。遺棄された穀物搬入用エレベーターや廃墟と化した製鋼所が点在する誰も使わない町にまばゆく白い建屋がそびえるさまは、希望の象徴と目に映る。ここで働くことの誇らしさから「ソーラーシティ」というタトゥーを肌に彫る人たちすらいた。

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最終更新:2019/12/8(日) 9:22
GQ JAPAN

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