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kz(livetune)が考える、VTuber文化ならではの魅力「僕らが10年かけたことを、わずか2年でやってる」

2019/12/8(日) 12:13配信

リアルサウンド

 2017年12月にある種のブレイクポイントを迎え、以降急速に発展してきたバーチャルYouTuber(VTuber)シーン。勢力図が次々に変化し、企業が積極的に介入するなど、何かと騒がしいこの界隈を、リアルサウンドテックでは様々な方向から取り上げてきた。

【写真】VTuberについて熱く語るkz(livetune)

 活動の場もYouTubeのみならず、さまざまなプラットフォームへと変化し、もはや“バーチャルタレント”と呼ぶべき存在となった。そんな彼ら彼女らについて、もう少し違った角度から掘り下げてみるべく、シーンを外側から見ているクリエイター・文化人に話を聞く連載『Talk About Virtual Talent』がスタート。第一回は、J-POP・アニメシーンで幅広く活躍しつつ、キズナアイやYuNi、にじさんじなどに楽曲提供も行っている音楽家・kz(livetune)が登場。Twitterで溢れんばかりの“にじさんじ愛”を炸裂させている彼に、VTuberにハマったきっかけやボーカロイドシーンとの共通点、印象に残っている動画などについて、じっくりと話を聞いた(編集部)。

・「動画勢は日常アニメ、ライブ配信勢は長編アニメ」
――kzさんがVTuberの文化に触れた最初のきっかけはどんなものだったんですか?

kz:以前からキズナアイさんをはじめ、存在は知っていたんですけど、最初に動画をちゃんと見たのは、2017年末にマネージャーから紹介してもらった電脳少女シロさんで。動画を観て、「これは面白いな」と思ったのがきっかけでした。

――当時はまだ、ライブ配信というより動画を撮影/編集して投稿するクリエイターが中心だった時期ですね。

kz:そうですね。僕はもともと、YouTuberの方々の動画をあまり観るタイプではなかったので、動画投稿/配信カルチャーの魅力を実感したこと自体が、その頃だったような気もします。というのも、僕は人と目線を合わせるのが得意じゃないので、YouTuberの方々のように、生身の人がこっちをずっと見て喋っているのはちょっと苦手で……(笑)。

 また、VTuberの方々は話題の軸がインターネットミームやマンガ、アニメのような、自分が身近に感じる題材が多いこともあって、より僕自身の好みに近い、よりインターネット感が強い印象を受けました。当時はシロちゃんの『DOOM』や『PUBG』のゲーム実況動画を観て、「キャラクター」と「魂」の微妙な剥離具合が面白いな、と思っていました。VTuberには色んな立ち位置で活動している方がいますけど、僕はロールプレイをがっちりする人よりも、そういう人たちが面白いと思うタイプなので、その後、にじさんじにも魅力を感じるようになりました。

――kzさんは、にじさんじをよく見てる印象があります。にじさんじのみなさんは「ライバー」としてリアルタイムでリスナーとやりとりするライブ配信に特化した活動をしています。

kz:僕の中では、動画勢は日常アニメ的だと思っていて、ライブ配信勢はストーリーものの長編アニメ的だと思っているんです。動画はきっといつ観ても面白いし、10年後も同じように観られると思うんですけど、一方でライブ配信の場合は、その瞬間に共有するリアルタイムでのストーリー性が面白くて、その中でみなさんすごい失敗も色々としていて(笑)。でも、その失敗も含めて、その人たちに魅力を感じます。僕はもともと長編のストーリーもののアニメが好きな人間ですし、特ににじさんじの場合、色々なハプニングを乗り越えてきた人たちだと思うので、そういう意味でも魅力を感じたんだと思います。

――では、kzさんが特ににじさんじに魅力を感じたきっかけというと?

kz:「ここからずっと観よう」と思った配信が2つあるんですけど、ひとつは委員長(月ノ美兎)が2018年の4月に初めてニコ生でやった3D配信の、感想回ですね。そこで委員長が、「インターネットの歴史の一部になれてうれしい」という話をしていたと思うんですけど、僕自身もインターネットに育てられたという意識が強い人間なので、自分自身が活動をはじめた頃を思い出してすごく共感しました。あの配信は、全体的にインターネットに対する感謝が伝わってくるような内容だったんですよね。

 もうひとつは、同じ月の4月29日、その日『ニコニコ超会議』があって、そこに出演した樋口楓さんが終了後にやっていたMirrativでの配信です。僕はちょうどClariSのツアーに同行していて、ホテルでその配信を見ていたんですけど、その日の樋口さんは、イベント後の放心状態というか、めちゃめちゃ疲れているように見えて。僕らも10年前、インターネットでたまたま見つけられて、わけがわからないうちにでかい会場でライブをするようになったので、「自分もこういう感じだったな」って、10年前を思い出しました。そのときに、「この人たちのこれからの活動をずっと見続けていくのは、絶対に面白いはずだ」と思ったんです。

――新しいカルチャーが盛り上がっていく瞬間のとてつもないパワーと言いますか、頑張ったものに対して想定した以上の反応が返ってきて、より大きな波に飲み込まれていく感覚というのは、まさにkzさん自身が体験したものでもあるということですね。

kz:そういう状況にすごいスピード感で巻き込まれると、自分たち自身も戸惑うんですよ。それは僕も『Re:Package』(2008年/livetune feat.初音ミク名義)でいきなりオリコンアルバムチャートの2位になった頃に感じたことでした。あと、VTuberのカルチャーは僕らが世に出るきっかけになったニコニコ動画の文化とも密接で、インターネット上で色んなMADがつくられたりする雰囲気も、僕らがインターネットでよくやる悪ふざけの感覚に近いと思いました。僕も自分の曲に勝手にPVをつくってくれたり、歌ってくれたり、踊ってくれたり、そういう二次創作に支えてもらってきたので、その部分にも親近感を覚えたんだと思います。

・「笑い男」とVTuberの共通点
――それ以降、kzさんが観てきた動画/配信の中で、特に好きなものを教えてください。

kz:委員長と本間ひまわりさんの「百物語配信(百個怖い話言うまで帰れない放送2019)」ですね。これを薦める時点で「アーカイブを12時間観てほしい」ということになってしまいますけど……。でも、ひとつひとつの怖い話のクオリティが高く、各所に挟まれる伏線も含めて全編面白い配信でした。去年の委員長の「百個怖い話言うまで帰れない放送」も面白かったですけど、今年の「百個怖い話言うまで帰れない放送2019」は構造がすごいことになっていて。その配信が、9月5日の体を取り戻す配信(「【癒し】私と一緒にお話しましょう♪【雑談】」)に繋がっていく一連の流れもものすごいと思いました。

――「VTuberをVTuberたらしめているのは、魂なのか、ガワなのか、それともまた別の何かなのか……」という、VTuberという枠組み自体を遊ぶような実験的な企画でした。

kz:たまごまごさんのブログ(http://makaronisan.hatenablog.com/)でも説明されていましたが、「Vって一体なんだ」という話になったとき、やっぱり笑い男(『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』に登場するハッカー)の存在がすごく近いと思うんです。『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』の9話で、未来の2chのようなチャットの回がありましたけど、いわばミームの集合体のように、「僕ら視聴者や周囲の人々の勝手なイメージ」と「魂/個人の自意識」と「ガワ」の3つが混ざったものがVTuberだと思っていて。よく「Vにとっては魂が一番重要だ」という話になりますけど、あの配信を観た人たちは、「それだけでもないんだな」って気づいたと思うんですよ。本当の笑い男がどんな人物かは分からないけれど、周囲の人たちが勝手に「笑い男はクールだからこんなことはしないだろう」「でも泥臭い部分がある」とイメージすることで設定が加わっていくように、見られる側の勝手な妄想/イメージも含めて人間、そしてそれを自分でも気づかないうちに演じているのかもしれないということを改めて考えさせられたというか。そういう意味でも、僕は「百物語配信」が断トツで面白かったです。

 しかも、委員長が「そういうことを考えている」ということも、僕らの想像でしかないんですよね。そういえば、同じようなことを、樋口さんが言っていることがありました。樋口さんが(2019年1月に行なわれた1stライブ)『KANA-DERO』のMCで「みんな考察好きだよね」と言っていて。それってつまり、僕らが考える樋口楓像のようなものを、本人も意識しているのかもしれないし、それが自分に混ざっているのかもしれないし、でも本当の樋口さんがどうなのかは僕らにはわからないし――。その曖昧さが面白いな、と思います。

――ライバーとして活動している方々の場合、リスナーと日常的にコミュニケーションを取っているからこそ、よりそう感じる部分があるのかもしれません。

kz:日頃からコメントを通して交流しているからこそ、そこから何か影響が生まれているのかもしれないな、と思います。あと、僕はVTuberにとって興味深いのは死生観の話だと思っていて。去年『ユリイカ』の「バーチャルYouTuber」特集で(届木)ウカ様と委員長が対談したときに、コーナーの扉を確かウカ様が描いていたと思うんですけど、そこで2人が掲げているのが「memento mori(死を思え/死を忘れるな)」でした。VTuberの方々であっても、どこかでいつかは終わることを考えていたり、終わりについての話をしたりする人がいる。それはつまり、バーチャルではあるけれども、「永遠じゃないからこそ輝ける今がある」ということでもあるんだと思います。

――他に、バーチャルな人たちならではの魅力を感じた瞬間はありますか?

kz:あとは……椎名唯華さんや鷹宮リオンさんのように、「どうやって今まで実社会で暮らしてたんだろう……」みたいな人たちが面白さを発揮できるところですかね……。

――(笑)。椎名さんや鷹宮さんは、本能に正直な雰囲気がとても魅力的な人たちですね。

kz:そんなふうに、「もしかしたら、Vじゃなかったら許されないんじゃないかな?」と思う瞬間ってあると思うんです。同じテンションで同じことを言っていても、実写だと現実感を伴うものが、Vというクッションを挟むことによって、ハチャメチャなアニメキャラのようになるというか。僕らがそんなふうに錯覚しつつ、ご本人のメチャクチャさが合致して面白いバラエティになるというのは、人間性があるようでない、それが浮遊しているバーチャルな存在ならではなんだと思います。

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最終更新:2019/12/8(日) 12:13
リアルサウンド

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