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「オリンピックレガシー」を活用して、東京は世界に勝てるか?

2019/12/8(日) 8:00配信

幻冬舎ゴールドオンライン

東京が今後も発展していくためには、強みを伸ばし、弱点を克服することが重要です。国際競争においてロンドン・NYと並ぶ総合力を持つ東京ですが、分野別の指標を見ていくと様々な強み・弱みが混在していることが分かります。東京の弱点のなかでも特にトップ2都市に差をつけられている分野が「文化・交流」です。※本連載は、『新・東京進化論』(幻冬舎MC)の一部を抜粋したものです。

観光立国化を推進し、国際交流を誘致する仕組みを確立

東京が世界トップ2のロンドン、ニューヨークに対抗し、アジアエリアで絶対的優位を保つには、東京の弱みを克服し、強さに変えなければなりません。前回(『 アジアNo.1都市から陥落も…いま「東京」に必要なことは? 』)では、「経済」と「研究・開発」の観点から、東京に必要なことを見てきました。今回は、「文化・交流」と「居住」の観点から、東京の総合力を高めるための施策について見ていきましょう。

●文化・交流

「文化・交流」は、トップ2都市に最も水をあけられている分野でもあるので(図表1)、少し詳しく見ていきたいと思います。

GPCIの文化・交流分野の16指標の中で、アジアにおける東京の弱さが目立つのは次の5指標になります。

図表2は、過去5年間の「国際コンベンション開催件数」を表した棒グラフです。トップ4都市で見ると、東京はパリに次いで開催件数が多く、特に問題はありません。全体で6位ですが、アジア主要都市と比較すると、シンガポール、ソウルに次いで3位で、しかも上位2都市に圧倒的な大差をつけられています。

シンガポールには、3棟の超高層ビルの屋上を船で連結したような、有名な総合リゾートホテル「マリーナ・ベイ・サンズ」があります。ここは世界最大級のカジノをはじめ、12万㎡のコンベンションセンター、7万㎡を超えるショッピングモール、2500を超える客室、著名なシェフのレストラン、美術館、シアター、世界一標高の高いプールなど、MICE誘致に最強の武器を備えています。

MICEとは、Meeting(会議・研修)、Incentive(招待旅行)、Convention(学会・国際会議)、Exhibition/Event(展示会・見本市)を表す略語で、家族を含め一度に数百~数万人が動くビジネスイベントを指します。シンガポールは、こうしたMICEを数多く受け入れているため、このスコアがダントツの1位なのです。

一方、東京近郊でMICEに活用している施設といえば、東京ビッグサイト(建築面積約18.5万㎡)、幕張メッセ(建築面積約7.5万㎡)、東京国際フォーラム(建築面積約2万㎡)、パシフィコ横浜(建築面積約2万㎡)くらい。いずれも宿泊機能やアミューズメント機能がないため、近隣の他施設との併用になりますが、それにしても、東京ビッグサイト以外は施設の規模として十分とはいえません。アジアで存在感を示すためにも、そろそろ東京に、本格的なMICE施設を用意する必要がありそうです。

図表3は、ここ2年間の「世界的な文化イベント開催件数」を表したグラフになります。トップ4都市では、東京はロンドンに次いで2位。アジアでも北京に次いで2位でした。

ここでいう世界的な文化イベントとは、オリンピック、万国博覧会、FIFAワールドカップなどのビッグイベントと、コロンバス・トラベル・メディア(Columbus Travel Media)が発表している「世界トラベルガイド‐イベント」に掲載されているイベントを指します。

今年2019年にはラグビーワールドカップ、2020年にはオリンピックとパラリンピックが開催され、関連イベントも数多く企画されているので、東京としては、2021年以降にどんなビッグイベントを誘致できるかが正念場になります。

図表4は、過去5年間の「ハイクラスホテル客室数」を表したグラフ。ハイクラスホテルの定義は、代表的なホテル予約サイト三つのうち二つのサイトで5ツ星の評価を受け、かつ、対象都市の中心点から10キロメートル圏内に立地するホテル。東京は2018年、前年からの総客室数を158室増やして6441室としましたが、トップ4都市の中でも、アジア主要都市の中でも、最下位でした。20000室に迫ろうというロンドン、シンガポール、上海、1万~1万5000室のニューヨーク、北京、香港と比べると、東京はやはり見劣りがします。

東京では今、2020オリンピックに向けて数多くのホテルが建設途中ですが、ハイクラスホテルの客室数をどこまで伸ばせるかに注目が集まっています。

こちらのデータも気になるところ。図表5の「外国人居住者数」です。東京は約44万人。トップ4都市ではパリより多いものの、ロンドンの約200万人、ニューヨークの約150万人に大差をつけられ、アジア主要都市ではまたもやシンガポールに大敗しています。

シンガポールの外国人居住者数はおよそ220万人。国全体の人口が約560万人ですから、住人10人のうち4人近くは外国人、ということになります。東京の場合は、住人100人につき外国人は3人。想像していたより意外に多い気がしますが、世界標準から見れば、東京はまだまだ閉鎖的です。

現在、訪日外国人も訪都外国人も急激に増えており、入管法の改正で外国人労働者も以前より受け入れやすくなっています。こちらのデータも、オリンピック終了後にどう変動するか、要注目です。

希望が持てるのがこのデータでしょう。図表6は、過去5年間の「外国人訪問者数」。東京は前年から67万人増やして1377万人。トップ4都市ではロンドンに次いで2位、アジア主要都市でもシンガポールに次いで2位、全体44都市中でも5位と健闘しています。今や東京は、ニューヨーク、パリ、香港より外国人訪問者数が多い都市になっています。ここでもやはり、2020オリンピック効果が大きいと思われます。東京都は、2020年の外国人訪問者数(訪都外国人旅行者数)の目標を2500万人に設定していますが、さて、どうなるでしょうか。

以上のことから、東京が「文化・交流」分野で巻き返しを図るために何が必要か、かなりはっきり見えてきたと思います。それには、現在進められている観光立国化をさらに推進するとともに、東京が独自に国際交流創造都市としての魅力的な施策を実行していく必要があります。さらに、もうじき(パラリンピック閉幕後の2020年9月7日以降)過去のものになるオリンピックレガシー(ハード・ソフト)をどう活用するか、です。

前回の1964年オリンピックでは、オリンピックレガシー、すなわちオリンピックの遺産として、有形無形の数々のものが遺され、現代に息づいています。国立代々木競技場、日本武道館、東京体育館、東海道新幹線、首都高速道路、ピクトグラム、などなど。

2020年のオリンピック・パラリンピックでも、数々のレガシーが誕生していきます。オリンピックスタジアム(新国立競技場)、東京アクアティクスセンター、有明アリーナ、武蔵野の森総合スポーツプラザなど。晴海に整備されている選手村は、大会終了後に「晴海フラッグ」という分譲&賃貸マンション(タワー棟2棟、中層棟17棟)に改装され、4000戸以上が販売されます。

ソフト面では、オリンピックがきっかけとなって訪日・訪都外国人旅行者が増え、さらにリピーターとして何度も訪問してもらうことに期待が高まっています。現状でも、外国人旅行者の6割がリピーターだといわれ、リピーターは旅行中の消費額も多いのが特徴。海外に日本ファン、東京ファンが増えていけば、日本の観光立国化は盤石になり、わが国にも大きな恩恵をもたらしてくれるでしょう。

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最終更新:2019/12/8(日) 8:00
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