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売上10倍、社員数15倍、見学者数300倍。富山の伝統産業躍進の立役者に学ぶ、自ずと循環思考になる方法【能作克治『踊る町工場』】

2019/12/9(月) 7:00配信

FINDERS

成功の秘訣は「為さねば成らぬ」

「刷新」という言葉がある。障害を除いて、全く新しいものにすることを意味する。能作克治『踊る町工場』(ダイヤモンド社)は、鋳物という伝統産業をまさに刷新した社長が、その過程と今後の展望を惜しげもなく共有している一冊だ。

1984年に著者は大手新聞社のカメラマンから一転し、富山県・高岡の鋳物メーカーの株式会社能作(当時は有限会社ノーサク、以下能作)に入社した。会社を経営する能作家の一人娘の婿となったこと、ものづくりに興味があったことがきっかけで、「旅の人」(富山県の方言で県外からの移住者を意味する)として富山県の伝統産業に関わることになった。

その後、2002年に著者は能作の社長に就任した。売上・社員数・見学者は入社当時からほぼ横ばいだったが、その後約15年で売上は10倍、社員数は15倍、見学者数は300倍まで激増することになった。特に、年間総売上が約13億円の売上だった2017年に16億円をかけて建てた新社屋は、錫(すず)の食器で食事ができるレストランや、約2500種の鋳物の型がずらりとならぶインスタ映えスポットが話題となり、県外のみならず海外からも多くの人を呼び込む富山の一大観光スポットとなっている。躍進の影では地道な作業が行われてきたが、そのポリシーは至ってシンプルだ。

「楽しくない仕事なら、やらないほうがいい。おかげさまで能作は順調に売上が伸びていますが、その理由を極論すれば、特に計画を立てず、楽しいと思うこと、やりたいと思ったことだけをやってきたからです。(P33)」

「お金は自ずと後からついてくる」とはよく聞くものの、そう信じて物事を実践していくのは簡単ではない。なぜならば「自ずと」を実現することが一番難しいからだ。伝統産業に関して言うならば、伝統というのは変わらないものではなく変われるものの中に宿り、折々で変えなければいけない瞬間が訪れるということになる。つまり、上記引用で著者が主張しているのは一見「為せば成る」ということのようだが、実は「為さねば成らぬ」ということなのだ。

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最終更新:2019/12/9(月) 7:00
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