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最古級の肉食恐竜を発見、完全に近い姿、ブラジル

2019/12/9(月) 17:11配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

2億3000万年前の超大陸パンゲアに生きた捕食者

 2014年、ブラジル南部の町で作業していた古生物学者ロドリゴ・ミュラー氏のもとに、近隣で発掘しているチームの仲間から見事な化石の写真が届き始めた。

ギャラリー:決定版!奇跡の恐竜化石たち 写真23点

「その時点でもう、大腿骨と頭、つまり頭蓋の一部が見えていました」とミュラー氏は振り返る。「この地で、このタイプの恐竜はほとんどありません。とても珍しい発見で、すごく興奮しました」

 サン・ジョアン・ド・ポレジニの町で発掘されたその化石は、肉食恐竜としては最も古い時代に生きたものの一つであることがわかった。およそ2億3000万年前、三畳紀の森に暮らしていたとみられる。ミュラー氏ほかブラジルのサンタ・マリア連邦大学とサンパウロ大学の研究グループは、この恐竜をグナトボラクス・カブレイライ(Gnathovorax cabreirai)と名付け、2019年11月に学術誌「PeerJ」に発表した。

 当時、南米はまだ超大陸パンゲアの一部だった。この個体は氾濫原で死に、近くの川から流れてきた堆積物に埋もれたのだろう。その結果、驚くほど損傷の少ない化石ができた。

 この恐竜の骨格はほとんど完璧に保存され、頭蓋も無傷で残っている。これほど状態の良い化石は極めて珍しく、研究グループはCTスキャンを使って脳を再現することができた。その構造から、目や頭の運動をよくコントロールできる行動的な捕食者であることもわかった。この特徴は、鋭い歯や爪で獲物を仕留める際に役立っただろう。

「他の恐竜の解剖学的構造を研究する際、この化石が間違いなく土台になるでしょう」とミュラー氏は話している。

一緒にいた哺乳類の祖先

 今回見つかったグナトボラクスは、体長約3メートルと、当時のブラジルにいた恐竜としては最も大きい。同時代に生きていたと考えられる別の肉食恐竜ブリオレステス・シュルツィ(Buriolestes schultzi)は、その半分の体長しかなかった。

 グナトボラクスが属するヘレラサウルス科は、ごく初期の肉食恐竜のグループで、最初に現れたとされる恐竜の中の一群だ。ジュラ紀や白亜紀といった、後の時代に君臨するティラノサウルスなどの捕食者たちがこの系統から生まれたのかどうか、科学者たちは議論を続けてきた。今回のグナトボラクスの発見は、両者が別系統であることを示唆している。

 それでもグナトボラクスは、われわれ哺乳類にとって重要な役割を果たしていたかもしれない。今回の恐竜化石のそばでは、三畳紀の爬虫類リンコサウルス類2体分の骨と、現在の哺乳類の祖先であるキノドン類2体分の骨が見つかった。

「グナトボラクスは、キノドン類を小型の夜行性動物という生態的地位に押し込んだ進化の圧力の一つでした。この系統から2億2300万年後に生まれた生物(つまり人類)が、グナトボラクスの骨を掘り出して研究するだけの知性を備えるに至ったわけです」。サンパウロ大学の古生物学者で、今回の研究には関わっていないルイス・エドゥアルド・アネリ氏はこう話す。

 ブラジルでヘレラサウルス科の恐竜が見つかるのは、1936年に見つかったスタウリコサウルス・プリセイ以来のことだ。この恐竜の化石は現在、米ハーバード大学の比較動物学博物館で骨格が展示されている。だが、グナトボラクス・カブレイライの骨は、そこまでの長旅はしないだろう。化石は、サン・ジョアン・ド・ポレジニにある、サンタ・マリア連邦大学の古生物学研究支援センターに収められる予定だ。

文=Jill Langlois/訳=高野夏美

最終更新:2019/12/9(月) 17:11
ナショナル ジオグラフィック日本版

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