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【識者の視点】横浜の大胆な攻撃サッカーはなぜ最後まで衰えなかったのか?

2019/12/9(月) 6:59配信

SOCCER DIGEST Web

横浜のハイラインは、チアゴの存在をなくしては考えられない

 看板の攻撃サッカーは、最後まで衰えを見せなかった。

 2位・東京との直接対決となった最終節、横浜は3ゴールを決め、シーズン総得点は68に。1試合平均得点はジャスト2点に到達した。J1が34試合制になった2005年以降、1試合2点以上を記録したのは、この横浜で10チーム目となる。

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 15年ぶりとなる優勝の主役は、もちろん15ゴールで得点王を分け合った仲川とマルコス・ジュニオール。だが私は、ふたりに匹敵する殊勲者としてCBチアゴ・マルチンスを挙げたい。

 というのも、チアゴ(とGK朴一圭)がいなければ、大胆にハイラインを保つ横浜のサッカーは実現しなかったと思うからだ。
 ハイラインを保てなければ相手ゴールは遠くなり、また選手同士の間隔も広がるため、断続的に攻め続ける試合運びはできなかっただろう。

 横浜のハイラインは、チアゴの存在をなくしては考えられない。
 CBとしての能力は間違いなくJ1屈指。高さ、強さに加えてスピードがあり、空中戦にも地上戦にも強く、前に出てもいいし、後ろで勝負してもいい。
 あらゆる形で勝負できるオールラウンダー。読みも鋭く、奪ってからのフィードや持ち出しも安定している。

 最終節でも1対1を落ち着いて制するシーンが見られたが、その堂々としたプレーにはため息が出た。
 Jリーグで守備にため息が出るのは、いつ以来だろう。少し古いが、イングランド代表のリオ・ファーディナンドを思い出した。立ち姿が美しく、風格が漂っているのだ。

上位争いをするチームが「優勝するため」に緊急補強をすることはそう多くはないが…

 15年ぶりとなる横浜の優勝は、総合力の勝利ということもできる。

 選手はもちろん、ポステコグルー監督をはじめとしたコーチ陣が指導力を発揮。さらにフロントの働きも見逃せない。

 序盤から快調に勝点を重ねていた横浜は、8月に突如失速。清水、鹿島、C大阪に3連敗を喫した。

 理由は明らか。20節時点で11ゴールを決めていた最大の得点源、CFエジガル・ジュニオが負傷離脱したからだ。指揮官は仲川をトップに起用するなど手を尽くしたが結果は出ず、優勝争いからフェイドアウトするかと思われた。

 だが、悪い流れは3連敗で立ち切られる。
 このピンチにフロントは迅速な対応を見せ、エリキを補強。このエリキがすぐさまCFに収まり、12試合・8ゴールと高い決定力を示したからだ。

 Jリーグでは、降格の危機に直面したチームが外国人ストライカーを補強するケースは多いが、上位争いをするチームが「優勝するため」に緊急補強をすることはそう多くない。
 それは予算に恵まれたチームが少なく、同時に優勝を義務づけられたチームが少ないからだろう。

 仮に、外国人ストライカーを補強しても当たるとは限らない。
 今季も仙台、鳥栖、磐田、清水、湘南、松本と残留争いに巻き込まれたチームの多くが、シーズン途中に外国人ストライカーを獲得したが、そのほとんどが救世主になるどころか戦力にもならなかった。緊急補強で当たりを引くのは難しいのだ。

 そうした中で横浜は優勝するために素早く動き、エリキという大当たりを引く。これはフロントのファインプレーだ。

 エリキは加入2試合目で初ゴールを決め、この試合から横浜はふたたび連勝街道を走り始める。ラスト11戦を10勝1分けと破竹の勢いで優勝まで突っ走った。

 優勝争いの先頭を走り続けた東京は、終盤の大事なところでディエゴ・オリヴェイラが故障し、失速。エジガルからエリキへ「タイヤ交換」を迅速に行なった横浜が、一気に抜き去る。
 まさしく、チーム全体で掴みとった優勝だった。

文●熊崎 敬(スポーツライター)

最終更新:2019/12/9(月) 6:59
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