ここから本文です

映画「第3の男」の舞台ウィーンでミステリーを追う(オーストリア)

2019/12/9(月) 15:01配信

サライ.jp

文・写真/バレンタ愛(海外書き人クラブ/元オーストリア在住、現カナダ在住ライター)

オーストリアの首都ウィーンで撮影された映画は数多くあるが、1949年に制作されたイギリス映画「第三の男」もそのうちの1つ。私たちが良く目にする美しいウィーンのイメージではなく、第二次世界大戦敗戦後の暗い影を残すウィーンで撮影されたフィルム・ノワール、いわゆる犯罪映画だ。アカデミー撮影賞(白黒部門)や、カンヌ国際映画祭でパルムドールに次ぐグランプリを獲得するなど、映画史に残る名作として知られている。2019年はこの映画が製作されてから70年、節目の年に、この映画のミステリーに迫ってみよう。

今ではウィーンの旧市街地1区は世界遺産にもなり、美しい街並みを見ることが出来るが、第二次世界大戦では大きな被害を受けた。街の象徴でもあるシュテファン寺院やオペラ座なども多くの打撃を受け、街中は瓦礫だらけだった。そして、オーストリアは戦後10年間、1955年10月26日まで連合国軍米英仏ソによる占領統治が行われていた。オーストリア全体も地方ごとに分けられていたほか、ウィーン1区内も4分割されていたのだ。復興が進みつつも分断の可能性を抱えていたウィーンで撮影されたこの映画には、貴重なその時代のウィーンの様子が収められている。

映画の中のストーリーも、まさにその占領統治が続いていたウィーンであり、その時代に生きていた人の様子を描き出している。元々はグレハム・グリーンが執筆した台本で、それを元に映画や小説にもなった「第三の男」だが、今回は映画のストーリーと共に話を進めてみよう。

ホリーは親友であるハリーから仕事に誘われアメリカからウィーンにやってくるが、到着するとハリーは殺されていた。そしてハリーの葬儀で出会ったキャロウェイ少佐に、ハリーは犯罪に手を染めていた密売人だと知らされる。その言葉を信じられないホリーは真実を突き止めようとする過程で、ハリーの恋人だった女優アンナに出会う。そんな中、ハリーが殺された現場にもう1人「第三の男」がいたと証言した管理人は、何者かに殺されてしまう。管理人殺しを疑われ、友情や愛情に翻弄されるホリーは帰国を決意するが、ある夜ウィーンの街で、死んだはずのハリーを見かけるのだった。友人を信じたい思いと、真実を突き止めたい葛藤を抱えながらも、ホリーはキャロウェイと協力しハリーを追い詰めていく。そしてウィーンの下水道での追跡劇が繰り広げられ、ハリーは死亡、最後は今度こそ本当にハリーが埋葬されたウィーン中央墓地でのシーンで幕を閉じる。

映画では、ウィーンの街が全編を通して映し出されていく。今見ることが出来る美しいウィーンの街並みではなく、建物や人々の生活に戦争の爪跡が残るウィーンが白黒の映像で映っている。犯罪の匂いがし、第三の男は誰なのかというミステリーに包まれたストーリーとよく合うウィーンの姿を見ることが出来るのだ。

映画の中に出てくる場所を訪れるというのは、今も昔も変わらないファンの楽しみの1つだ。今のウィーンは美しく修復され、世界中の観光客を魅了する世界遺産の音楽の街だが、撮影当時とほぼ同じ姿を観ることが出来る場所も多く残っている。

1/3ページ

最終更新:2019/12/9(月) 15:01
サライ.jp

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事