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ソフィー・リチャード:日本の美術館に魅せられて

2019/12/10(火) 15:02配信

nippon.com

フランス人の美術史家ソフィー・リチャードは、日本の美術館は、この国の文化を知る上で、「最高の場所」と語る。10年以上かけて、全国各地の美術館を訪ね、取材を重ねてきたリチャードに、えりすぐりの美術館とその魅力について聞いた。

日本には5700館以上の博物館・美術館がひしめき、美術品を中心とした美術館だけでも1000館以上ある。しかし、日本語を解さない旅行者が、どこにどのような美術館があるのかを見つけ出し、詳しい情報を得るのは至難の業だ。

日本各地の美術館を丹念に調査したリチャードは、2014年に外国人向けにThe Art Lover’s Guide to Japanese Museumsを発表。2016年に日本語訳版『フランス人がときめいた日本の美術館』が出版されると、国内の美術ファンの間でベストセラーとなる。 2020年には待望の最新版の和訳本も発売される予定だ。今秋、欧米から来日した美術愛好家を引率し、美術館巡りを終えたリチャードに、日本の美術館の魅力について語ってもらった。

魅力の宝庫

――日本の美術館に魅せられたきっかけは何ですか?

子供の頃から、挿絵付きの日本の本が大好きで、特に伝統的な家屋に惹かれていました。ずっと日本に憧れを抱いていたのですが、実際に訪れることができたのは15年前のことです。仕事柄、日本でも数多くの美術館を訪ねていたのですが、2010年のある日のことです。代官山を歩いていると、木立の奥に凛とたたずむ伝統的な和風建築と美しい庭園があるのを見つけて、とても驚きました。旧朝倉家住宅(重要文化財)だったのですが、観光客は私以外に誰もいませんでした。もっとこの場所について詳しく知りたいと思い、それがきっかけで、さまざまな美術館を訪れては、館長さんや学芸員の方々にお話を伺うなど、独自のリサーチを始めるようになりました。

――ガイドブックを書こうと思ったのはなぜですか?

日本に初めて来た頃は、まだインターネットもあまり普及しておらず、美術館の情報を英語で得るのは簡単ではありませんでした。はじめは取材した内容を、英語の媒体に寄稿していたのですが、あまりにも素晴らしいお話が多く、ぜひ1冊の本にまとめたいと思いました。最初にインタビューしたのは、外国人の間で有名な「ベネッセアートサイト直島」を興した福武總一郎さんです。ベネッセが展開する瀬戸内海の直島、豊島(てしま)、犬島の美術館は、本当に素晴らしくお薦めの場所です。

ガイドブックを執筆する際には、外国人訪問客にとって興味のある点は何か? ということを常に念頭に置いていました。ある意味、私自身が欲しかった情報を本にまとめたとも言えます。

――ガイドブックでは、日本人が気づきにくい視点から、美術館やその建築、美術品の魅力が、綿密な取材をベースにつづられています。

各美術館がどのような経緯で設立され、どのような作品を所蔵していて、どのような試みをされているのかを、それぞれの専門家から伺うことは、この上ない喜びでした。例えば、根津美術館の目玉はなんと言っても、国宝、尾形光琳の燕子花図(かきつばたず)ですが、金地着色の屏風(びょうぶ)は劣化しやすいので、展示は1年に1度、燕子花が咲く春に4週間だけと決められています。はるばる遠くから来られても、季節外でご覧になれず、がっかりされないように、ガイドブックにその旨、記載しました。

西欧の美術館では、重要な所蔵品は常設展示するのが普通ですが、日本では年間を通じて展示替えを行っていることも、特筆すべきことです。根津美術館では、一度の展覧会で飾られる作品は、全所蔵品の10%以下だと学芸員の方に伺いました。

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最終更新:2019/12/10(火) 15:33
nippon.com

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