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読売新聞政治部の取材で明らかに あまりにドラマチックな「令和誕生」の舞台裏

2019/12/10(火) 8:00配信

Book Bang

 元号が令和になって半年。今回の改元は、二〇一六年夏の天皇(現上皇)の退位表明から動き出した。崩御より前の退位となると、憲法や皇室典範など法制度との整合性、新元号の選定や事前公表をいつ行うかなど、平成改元時とは異なる対応をとらねばならなかった。

 そんな令和改元に伴う政府内外の動きを、平成改元時の秘話も参照しつつ、事細かに描き出したのが本書だ。著者は読売新聞政治部。令和改元に伴う内幕本はほかにもあるが、本書の強みは政権関係者たちの言葉が多く引かれ、関係者の葛藤や駆け引きが生々しく描かれていることだ。

 五章構成の一章は、元号選定という最重要機密の扱いから始まる。元号案は保秘を徹底され、政府関係者では安倍晋三首相のほか四人しか知らされていなかったという。内閣府には「関係者以外立ち入り禁止」の紙も貼られた。それだけ扱いを厳重にしていたにもかかわらず、今年三月「元号に関する懇談会」の有識者九人の名前はあっさりと報じられた。今井尚哉首相秘書官は「ぶち切れ」、官邸では言い合いまで起きたという。一方、その六つの元号案を出す懇談会では、議事進行は口火を切る有識者を誰にするかまで検討されていたことも明かされる。

 二章では、宮内庁と官邸の対立、そして退位の法的扱いについての政権内外の軋轢が描かれる。退位の意向が報道されると、情報を漏らしたと疑われる宮内庁に官邸は苛立った。だが、世論の退位支持の高まりを受け、官邸は態度を軟化。有識者会議を設置する。一方で、野党の皇室典範改正案と与党の特例法案では開きが大きく、国会は膠着する可能性があった。すると自民党副総裁の高村正彦が皇室典範の付則を発案、転じて特例法の付帯決議に決着していく。一連の変転は政局の実録そのものだ。

 意外だったのは三章、新元号の公表をめぐる保守派との攻防だ。退位の日取りは二〇一九年四月三十日、新天皇の即位・改元を翌五月一日とすることは皇室会議で決まった。だが、新元号をいつ発表するかで首相は保守派から抵抗にあっていた。「伝統を重視する保守派にすれば、元号は依然として、『天皇のもの』」で、事前公表は許容できない。一方、政府は国民主権の憲法を拠り所としている。法制度的にも新天皇による五月一日の公布と公表では、新元号の施行は翌二日となってしまい、不自然になる。そこで対立が起きていたのである。取材陣は、与党内で誰がどのように動き、どう考えを転じていったかを丁寧に記している。

 四章は元号案がどのように考案され、選定されていったかという内幕を掘り起こした。令和の考案者とされる中西進国際日本文化研究センター名誉教授の正式なインタビューに加え、今年三月中旬の最終リストの数案でも首相はいずれも「しっくり」こず、追加案を指示したのは四月一日まで残り二週間を切っていた時期だったことも明かされる。

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最終更新:2019/12/10(火) 12:27
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