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自分の欲望をカネで解決するのを、恥ずかしいこととしてやらないのが「江戸っ子の品」|弟子だからこそ知っている「談志のことば」

2019/12/12(木) 15:00配信

サライ.jp

文/印南敦史


『談志語辞典』(立川談慶 著、誠文堂新光社)の著者は、ワコールの会社員を経て1991年、立川談志18番目の弟子になったという異色の経歴の持ち主。2000年に二つ目、2005年真打ちへと昇進しているが、それ以前に前座修業を9年半も務めていたのだそうだ。

談志が亡くなってから2019年で丸8年。つきあい自体はトータルで20年を数えるというが、うち10年弱を前座として過ごしたわけである。

「日記をつけておけよ」
前座初期の夏ごろでしたか、たまたま練馬の家で2人きりになったとき、そんなことを言われました。
なんで自分にだけそんなことを言ったのか? 深く意味も考えず、そしてそもそも日記をつけるという本当の意味を探ることなく「その日」からつけ始めるようになりました。(本書「はじめに」より引用)

当初は新鮮さもあり、長文スタイルで書き連ねていたのだという。ところが師匠に命じられた用事を忙しくこなすなか、いつしかメモ代わりのような、断片的な痕跡へと変化していった。

「空体語と実体語、わきまえろ!」
「状況判断のできない奴がバカだ!」
「挨拶をリズムで言うな!」
「蕎麦のツユは、少しだけつけろ!」

という具合に日記というよりは、「ドジな自分に向かって談志が言い続けた小言ノート」になってしまったということだ。そうやって記録し続けてきた談志のことばを、改めて“談志語”としてまとめたのが本書なのである。

9年半も前座を務めてきたということは、日数にすればほぼ3500日。一日に2度怒られたこともあり、二つ目になってから怒られたこともあるというので、少なく見積もっても2000回以上は談志の逆鱗に触れている計算だ。

だとすれば著者本人が記しているとおり、それは他の弟子にはない財産ということになるだろう。そしてその財産はひとつひとつが、ひさしぶりに箪笥のなかから引っ張り出してきた宝石のように、鈍く鋭い光を放つ。

弟子だからこそ見ることができた「談志の世界をひも解くキーワード」を五十音順に配列。それぞれについて「キーワード」「読み方」「談志の得意ネタなども盛り込んだ解説文」「落語会でリスペクトすべき人、交友関係、自身の考え方などの分析」がまとめられている。

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最終更新:2019/12/12(木) 15:00
サライ.jp

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