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シリーズ・2回のお代替わりを見つめて(15)大嘗祭:1350年の伝統を持つ新天皇の祈り

2019/12/13(金) 15:01配信

nippon.com

斉藤 勝久

即位関連の宮中祭祀として最も大きい、天皇の一世一代の「大嘗祭(だいじょうさい)」が、古式ゆかしく執り行われた。約1350年前の飛鳥時代に始まった皇室伝統行事に臨んで、天皇陛下は神々と夜を徹して対座し、「令和の安寧」を祈られた。

日本独自の天皇の秘祭

大嘗祭が2019年11月14日夕から翌15日未明にかけ、皇居・東御苑に建てられた大嘗宮(だいじょうきゅう)で、三権の長や知事ら約500人が参列して行われた。即位儀式のハイライトとなった「即位礼正殿の儀」とは対照的に、大嘗祭は夜、新天皇がただ一人、祭場の建物にこもる、他国にはない神秘的な秘祭である。

天皇が毎年秋に行っている「新嘗祭(にいなめさい)」は、お供えに特定の皇室の田などの新穀を使う。これに対し、大嘗祭は全国から東西2つの民間の田を選び、そこから収穫された新穀などを、天皇が皇祖とされる天照大神(あまてらすおおみかみ)ら神々にお供えし、国家・国民の安泰と五穀豊穣を感謝して祈り、自ら食す。まさに、農耕文化に根差した即位行事といえる。

天皇陛下が薄明かりの中、最も神聖とされる白絹の祭服姿で、ゆっくりと祭場殿舎の「悠紀殿(ゆきでん)」に進まれた。白の十二単(じゅうにひとえ)姿の皇后さまや、秋篠宮ご夫妻ら皇族方も古装束で参列された。しかし、撮影はここまでで、2時間半余の陛下の様子は一切公開されない。

天皇陛下は一度、休憩をとり、15日午前0時半ごろからもう一つの祭場殿舎「主基殿(すきでん)」で同じ作法を繰り返し、祈られた。両陛下が赤坂御所に戻ったのは午前4時半ごろだった。

皇嗣からの重い発言

この大嘗祭の費用は約24億円といわれる。宗教色の濃い儀式で、政府は憲法の政教分離原則「国はいかなる宗教活動もしてはならない」に基づき、大嘗祭を国事行為(国の儀式)とすることは見送っている。しかし、「極めて重要、伝統的な皇位継承儀式で、公的性格がある」と政府は判断して公費(国費)支出を決めた。

この問題に1年前の記者会見で一石を投じた秋篠宮さまが、今年11月下旬の記者会見で「今も昨年お話した時と気持ちは変わりません」と述べられた。昨年の発言の要約を再録する。

54歳の誕生日を迎えられる前に記者会見される秋篠宮さま=2019年11月20日、東京・元赤坂の赤坂東邸(時事)
54歳の誕生日を迎えられる前に記者会見される秋篠宮さま=2019年11月20日、東京・元赤坂の赤坂東邸(時事)
「国事行為で行われるものについては、私が何か言うことはできない。一方、皇室の行事として行われるものについては、ある程度、私の考えもあっても良いと思っています」

「大嘗祭は皇室の行事として行われるもので、宗教性が強いものになります。それを国費で賄うことが適当かどうか。すっきりしない感じは、(平成の大嘗祭に続いて)今でも持っています。宗教行事と憲法との関係はどうなのか、私は内廷会計(天皇家の私費)で行うべきだと思っています」

「大嘗祭は相当な費用が掛かるけれども、私は絶対にすべきものだと思います。そのできる範囲で、身の丈にあった儀式にすれば。そういう形で行うのが本来の姿ではないかなと思います」

大嘗祭はしっかりと皇室行事として行うが、政教分離を定めた憲法に抵触しないよう、国費ではなく、天皇家の私費で賄う。そのために、大嘗祭の規模は従来の大掛かりのものより小さくなるというお考えで、今もその気持ちに変わりがないことを表明された。秋篠宮さまはこれまでに、「大嘗宮は新設せず、毎年の新嘗祭など宮中祭祀を行っている『神嘉殿(しんかでん)』で大嘗祭を行い、費用を抑える」と具体的な提案を宮内庁にしている。

秋篠宮さまの今回の発言を受け、宮内庁次長は12月初めの記者会見で、「大変重要なお考えだと思いますが、(次のお代替わりの時に)お考えをうかがって検討することになる」と語った。皇位継承順位1位の皇嗣(こうし)のお考えには以前より重いものがあり、今後の大嘗祭の在り方にも影響を与えることになろう。

ただし、神嘉殿案では、これまで2つの祭場殿を新設して、そこに神々をお迎えして行ってきた大嘗祭の根本が崩れてしまう、と指摘する声もある。宮内庁、政府は憲法問題も含んだ大きな宿題を抱えた。

(「神嘉殿での新嘗祭」参列の筆者体験記などは、連載4回目「新嘗祭」に)

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最終更新:2019/12/13(金) 15:01
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