ここから本文です

母を「愚母」と罵倒、父は「もう殺すしかない」――元農水次官が“息子殺し”という地獄に至る「修羅の18カ月」

2019/12/14(土) 6:00配信

文春オンライン

 元農水次官の熊沢英昭被告が長男を殺害した罪に問われている事件の裁判で、検察側は懲役8年を求刑、16日に判決が言い渡される。法廷では、長男が原因で結婚が破談になり、長女が自殺したという衝撃の事実が明かされた。母のことを「愚母」と罵倒していたという長男・熊沢英一郎氏の生活実態などを報じた「週刊文春」2019年6月20日号の記事を再公開する。なお、記事中の年齢や日付、肩書き等は掲載時のまま。

【写真】英一郎氏が死の1週間前まで暮らした目白の家

◆ ◆ ◆

 農水事務次官まで務め、自慢の種だった父に、何十カ所も滅多刺しにされて亡くなった熊沢英一郎氏。実は彼は、44歳までほぼ無職でいながら、高級住宅街で一人、暮らしていた。2週にわたる総力取材で初めて明らかになったその異様な生活実態と、実母の素顔とは――。



 皇室ゆかりの学習院大学を抱える文教地区、東京都豊島区目白。JR目白駅を出て、目白通りから脇道に入り数分歩くと、春にはしだれ桜、秋には紅葉を見に多くの客が訪れる目白庭園に行き着く。周囲には、一軒家と高級マンションが建ち並ぶ、山の手屈指の高級住宅街が広がっている。

 この街の雰囲気に、まるで似つかわしくない風体の男が目撃されるようになったのは、3年前の16年6月以降のことだ。男の身体は不摂生な暮らしを物語るようにぶくぶくと膨れ、肩までかかる長髪は、長い間洗っていないのか脂ぎっている。元は白かったであろうシャツは全体がわずかに黄ばみ、異臭を放つ。靴紐がほどけているのも意に介さず、だらしなく歩く姿からは異様さが漂っていた。

 男は、昼夜問わず界隈のコンビニエンスストアに立ち寄り、煙草「ケント6」と炭酸飲料「デカビタC」をぶっきらぼうに店員に差し出すと、レジ横に並べられたチキンを必ず注文した。現金で800円ほどを支払うと、無言で店を後にするのだった。

「彼は週4~5回は店に来ていました。夜遅いときもあれば、昼間フラッと姿を見せることもあった。新聞・雑誌や生活用品は一切買わず、飲食物とタバコばかり。日によっては、チキンを一度に5個も買うこともありました。お会計が遅いとこちらを睨みながら『チッ』と舌打ちして威嚇してくる。現金が足りないことがありましたが、無言で店を出ていき、数分後、お金を持って戻ってきました」(コンビニ店員)

 5月下旬、男は約3年を過ごした目白を離れ、練馬区の実家に移った。無残な死を遂げたのは、それから約1週間後のことだった。

 社会部記者が振り返る。

「6月1日午後3時40分、『息子を包丁で刺した』と110番通報が入り、練馬署員が駆けつけたところ、鮮血に塗(まみ)れ、1階和室の布団の上で仰向けに倒れている男を発見。司法解剖の結果、死因は首を切られたことによる失血死でした」

 無職・熊沢英一郎氏(44)を殺害した容疑で逮捕されたのは、父である熊沢英昭(76)だった。

1/6ページ

最終更新:2019/12/14(土) 6:27
文春オンライン

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事