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特効薬が効かない!「ゾフルーザ・パニック」今冬を乗り切れるか?

2019/12/16(月) 11:02配信

FRIDAY

「もともとインフルエンザ治療薬『ゾフルーザ』は、登場した当初から耐性を持つインフルエンザウイルスが発生しやすいのではないか、と指摘されていました。そして今回、東京大学医科学研究所の研究チームの調査で、耐性を持つウイルスが改めて検出されました。今後、ゾフルーザが効かないウイルスが次々に出てきてしまうと、インフルエンザ大流行のシーズンを迎え、コントロール不能な状況に陥る可能性が高まります。最悪の場合、パンデミック(世界的大流行)のような事態になりかねない。公衆衛生上、これは極めて深刻な問題です」(虎の門中村康宏クリニック院長の中村康宏氏)

インフルエンザ新薬「ゾフルーザ」 重大な副作用の恐れアリ

「夢のインフルエンザ治療薬」のはずだった。昨年までは――。いま、特効薬ゾフルーザをめぐって医療機関で大混乱が生じている。

同薬は昨年3月に販売されると、1回飲めばすぐに効果が現れると評判になり、シェア65%を獲得するほどの大ヒット医薬品となった。都内の薬局に勤務する薬剤師が声を潜めてこう話す。

「メーカーの宣伝効果もあって、昨年は多くのインフルエンザの患者が医者に『ゾフルーザを処方してほしい』と望み、大量に処方されました。薬局にしてみても、ゾフルーザは1回飲めば済むのでラクですよ。タミフルなら朝晩2回5日分で10錠必要ですし、吸入するタイプのイナビルは吸入方法が難しく、服薬指導をしなければなりません。その点、ゾフルーザは、手間ひまかからず、儲かるクスリではありました。

しかし、耐性ウイルスが出てきたため、今後は対応が難しくなります。これまでのように、ゾフルーザに代わってタミフルを処方すればいいのであれば話は簡単ですが、実はそうではありません。なぜなら、今後出現する耐性ウイルスに、タミフルやイナビルなど、従来のインフルエンザ治療薬が効くのかどうかは未知数だからです」

◆子供の3割から耐性ウイルス

医薬品を使うと、それに耐性をもつウイルスが現れるのは一般的だ。それが今回、大きな問題となっているのは、耐性ウイルスが強い感染力を持っているからである。

「ゾフルーザを投与した15歳以下の子供の3割から、耐性ウイルスが検出されたという報告がありました。そのウイルスは、今までのウイルスと同程度の感染力をもっていることも判明しています。耐性ウイルスのインフルエンザに感染すると、当然、ゾフルーザは効きません。

そのウイルスが耐性ウイルスなのかどうか、事前には医師にもわからないことも問題です。体力のある成人なら自然治癒で熱が下がるのを待てばいいですが、子供や老人にゾフルーザを処方して効かなかったら重症化する危険性があります。だから私はゾフルーザを最初から投薬の選択肢に入れていません」(永寿総合病院総合内科主任部長の池田啓浩氏)

体力のない子供や老人、病人がインフルエンザに罹(かか)り、治療薬が効かなければ、最悪の場合、死に至る。医療経済ジャーナリストの室井一辰氏が警鐘を鳴らす。

「クスリを使いすぎると、耐性を持つウイルスや病原菌が発生することは是非知っておいてください。米国などでは、クスリが効かない感染症が大問題になっています。これらは医療を原因とする病気『医原病』と呼ばれ、死亡する患者が非常に多い。人類は感染症を制圧したと言う人もいますが、必ずしもそうではありません。むしろ、耐性ウイルスの登場で脅威は高まっています。とくに日本は急速に高齢化が進んでいますが、これはウイルスに弱い人間が増えているということでもあります。悪質な耐性ウイルスが拡散すると、想像以上に被害が大きくなる危険があるのです」

インフルエンザの特効薬を使い物にならなくしているのは、ウイルスの変異もお構いなしに処方する医療機関だけでなく、それを安易に使う患者側にも責任がある。長崎大学熱帯医学研究所の山本太郎教授はこう指摘する。

「クスリを大量に使う行為には、将来の資源を先取りするという側面があります。いま効くからといってやみくもに使ってしまうのは、将来効かなくなる土壌を作っているようなもの。ある一定以上使えば耐性ができてしまうので、少しずつ賢く長く使っていく必要があります」

ゾフルーザなしに、この冬を乗り切ることができるのか――。いま、人類の知恵と覚悟が試されている。

FRIDAYデジタル

最終更新:2019/12/16(月) 11:02
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