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菅官房長官、側近退場で失速? 「火消し役」では依然存在感

2019/12/18(水) 17:14配信

中央公論

永田町政態学

 新元号発表で「令和おじさん」として知名度を上げ、「ポスト安倍」の有力候補に躍り出た菅官房長官が失速したのではないか。永田町で、こんな見方が取り沙汰されている。

 九月の内閣改造で菅氏が推した菅原一秀・前経済産業相、河井克行・前法相の二人が十月、相次いで更迭された。菅系と目される自民党無派閥の若手・中堅議員は衆参両院で約五〇人おり、複数のグループができている。菅原氏は「令和の会」、河井氏は「会」でそれぞれ中心的な役割を果たし、菅氏への忠誠を競ってきた。

 菅原、河井両氏の命取りとなったのは、いずれも週刊文春で報じられた政治とカネをめぐる問題だ。両氏は過去にも、秘書へのパワハラなどで週刊誌に報じられたことがある。自民党内からは「閣僚待機組の二人を押し込むため、菅氏の目が曇ったのではないか」(ベテラン議員)と冷ややかな声が上がっている。

 派閥領袖の一人は、菅原氏の経産相抜擢について、「首相官邸内の権力闘争だった」と解説する。菅氏は、内閣官房に設置された内閣人事局をテコに省庁幹部人事を掌握し、霞が関への絶大な影響力を発揮してきた。だが、麻生副総理兼財務相が仕切る財務省と、安倍首相の懐刀である今井尚哉首相補佐官兼首相秘書官の出身官庁・経産省は、菅氏の威令が届きにくい「聖域」とされてきた。菅氏は菅原氏を通じてその一つに触手を伸ばしたが、失敗に終わったというわけだ。

 もっとも、これで菅氏がポスト安倍レースから脱落したとみるのは早計だろう。七年近くになる長期政権の緩みや傲りが指摘されるなか、不祥事の収拾
を一手に担う菅氏の存在感は依然として大きい。

 菅氏は不祥事に対処する際、その根幹を一気に断ち切るとされる。深手を避けるため、ある程度の打撃を受けることにもためらいはなく、「損切りの名手」とも呼ばれる。側近閣僚による騒動の後始末も素早かった。

 菅原氏をめぐっては、地元選挙区でメロンやカニなどを配った疑惑に続いて、秘書が有権者に香典を渡したことが十月二十三日に発覚すると、翌二十四日夜には見切りを付けた。後任の経産相に、自らに近い梶山弘志・元地方創生相を押し込むしたたかさもみせた。
 
 河井氏に対しては、妻・河井案里参院議員の陣営が七月の参院選で法定額を超える日当を運動員に払った疑惑などが十月三十日に報じられると、翌三十一日朝に引導を渡した。菅氏は「法相は他の大臣とは違う。疑念が出た以上、もうもたない」と周辺に漏らした。

 折しも同じ三十一日、首相官邸五階の官房長官室には、大学入学共通テストでの英語民間試験に関して菅氏に呼びつけられた文部科学省幹部の姿があった。幹部の説明を聞いた菅氏の表情は厳しかった。地方によっては試験会場が十分確保できないなど、制度設計の甘さが浮き彫りになったためだ。この日、英語民間試験の活用は、二〇二〇年度からの実施が見送られることが決まった。

 政権の混乱はその後も収まらない。十一月八日には、例年四月に首相主催で行われる「桜を見る会」について、安倍首相が多数の後援会関係者を招待した問題が浮上。「公私混同」との批判が噴出した。

 菅氏は十二日の記者会見で、招待者の選定基準を明確化する考えを表明した。騒ぎが沈静化しないとみるや、翌十三日には、来年度の開催中止に踏み込んだ。追及を強める立憲民主党幹部は「逃げ足だけは速い」と唇をかんだ。

 菅氏は政権の「火消し役」をこなしつつ、首相の後継争いにどのような戦略を描いているのか─。自ら打って出る以外にも、同じ神奈川県選出で面倒をみてきた河野防衛相の出馬を支援し、影響力を行使する選択肢もある。菅氏の動向から目が離せない日々は続きそうだ。(周)



(『中央公論』2020年1月号より)

最終更新:2019/12/18(水) 17:14
中央公論

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