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男性の育児休暇取得 普及へのカギ (玉木潤一郎 経営者)

2019/12/20(金) 6:36配信

シェアーズカフェ・オンライン

先日、男性の国家公務員の育児休業に関し、原則として1カ月以上の取得を促す方針を政府が固めた。実施については2020年を目指すことも明らかにし、まずは国の中央から男性の育休を浸透させ、いずれは地方自治体や民間企業へ波及させたい考えだ。

一方、中小企業においてはわずか数日間の育休すら取ることが出来ない現状のなか、果たしてこの施策はどう影響するだろうか。中小企業の経営者として、男性社員が育休を取得した経験を持つ筆者の立場から考えてみたい。

■妻にとっての問題点
この方針が明らかになると、Twitterでは意外な方向に荒れた。筆者が確認した範囲では、関連するツイートは主に既婚女性たちからのものである。

・大きな子供が一人増えるだけで迷惑。
・家にいて「俺の飯まだ?」とか言うくらいなら居てくれないほうがいい。
・家事育児の研修を受けてから育休をとってほしい。
・子供を遊ばせたくらいでイクメン面(づら)しないでほしい。
など、家にいても妻にとってプラスにならない夫が多いのかと思わせるツイートが少なくない。

制度を作っても、当人である夫に育児の自覚が無ければただの休暇になりかねない、というのがこれらの指摘だが、これは制度実現と無関係なようで実はもっとも本質を突いている。

なぜなら育児休暇の目的は、休暇の実施にあるわけではない。出産で満身創痍にある妻を心身両面でサポートするとともに、夫が家事育児に参加してはじめて実現と言える。妻としてはそこに父親としての愛情の醸成をも期待している。

妻たちの心配が現実化すれば、せっかくの育児休暇は妻のストレスをかえって増大させかねない。そしてこの点は、国家公務員であろうが地方の零細企業であろうが同じことで、まず前提として男性が理解しておかなければならない問題だろう。

■労務環境とのギャップ

関連するツイートの中には、付け焼き刃の育休でなく抜本的な労務改善を求める声もあった。

・短期の休みより毎日定時に退社してきてほしい。
・まとめて取るより病気など困ったときに簡単に休めるようにして。
・一ヵ月の育休より3年間の残業無しの方が助かる。
というものである。

実際には出産から1ヵ月経過後であっても、母子の体調は不安定である。朝起きてみて「今日は助けてほしい」という日もあろう。また夕方から夜にかけての数時間は育児と家事のピークである。その数時間を誰かがフォローしてくれるだけでも大きな負担減になる、という意見が多い。

対象となっている国家公務員とその他の職場との労務環境の違いを嘆く声も多かった。

・どうせ休めるのは公務員や大企業だけ。
・週休二日も実現できていない会社には育休なんて別世界。

この施策が公務員批判を招く可能性は予見できた。しかし手を着けなければ始まらない問題でもあるので、まずは国が率先して取り組むことは理解できる。

ただ、国家公務員にとっては「本社」というべき政府から出された施策であるから従うしかないが、民間企業の無理解な上司にかかればパタニティ・ハラスメントの的になりかねない。そしてこの、民間企業では難しいという点にこそ日本の働き方を改革できない問題がある。

■男性の育児休暇は民間にも広がるか
国家公務員の育休取得が定着したとして、果たしてそれが民間に広がりを見せるだろうか。実は民間企業であっても、会社側が育児休暇を実行することは難しくない。具体的には育休規定を作り、休んでいる者の仕事をカバーする人員を揃えることになる。

育休取得者が管理職や技術職の場合には代役ではカバーしきれない高度な仕事もあるだろうが、そこは育休を取得する者と会社との連携がものをいう。実際に筆者が経営する会社でも管理職の男性が数カ月単位で育休を取得できており、地方の中小企業でも十分可能であると考えている。

しかし実現へのハードルとなるのは会社や制度だけではない。中小企業において育休定着のカギを握るのは、その会社の顧客であろう。

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最終更新:2019/12/20(金) 6:36
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