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あの日、トイレットペーパーが消えた! デマはなぜ現実になるのか?

2019/12/23(月) 8:11配信

NIKKEI STYLE

《連載》知らないと大変!ビジネス法則

16年前に有志と共に設立したNPO法人「日本ファシリテーション協会」。今では、約1500人のメンバーが全国19カ所で活動する、世界最大のファシリテーターの団体に成長しました。

時々、「どんな狙いで協会を立ち上げようと思ったのですか?」「設立時の構想や目標を教えてください」と質問されることがあります。答えに窮する、尋ねてほしくない質問の一つです。深慮遠謀があって立ち上げたわけではなく、まさに“ひょうたんから駒”で設立されたからです。

2002年ごろ、日本で初めてのファシリテーションの指南書である『問題解決ファシリテーター』(東洋経済新報社)を執筆していました。本文ができあがったので、著者プロフィルを書こうと思い、何を書けば読者に響くかを知りたくて、手元にあった本を片っ端から調べてみました。

■ほんの出来心が人生を狂わした?

すると、過去の履歴だけではなく、現在の取り組みや未来の夢を語っているものをいくつか発見しました。「なんだそれでいいのか」とばかり、「(仮称)日本ファシリテーション協会の設立を予定」と“出来心”で書いてしまったのです。「こんな団体があったらいいな」くらいの軽いノリで。

ところが、本が発売されると、翌日から問い合わせが殺到します。「いつ設立されるのですか?」「私も参画させてほしい」と。何の予定も構想もなかった私は、正直「え、マジ?」と思いました。

そのうちに「ぜひお会いしたい」と言われ、今さら「いや、あれはシャレですから」と言えなくなってしまいました。結局、仕事を二の次にして、立ちあげに奔走する羽目になり、初代会長に祭り上げられることに。不用意な言動が現実をつくり上げたのです。

■根も葉もない噂がパニックを生み出した

こんな風に、たとえ根拠のない予言や期待であっても、当人や周囲が信じて行動することで、結果的にその通りの現実が生まれることがあります。社会学者のR・K・マートンが「予言の自己成就」と名づけた社会現象です。

1973年の豊川信用金庫の事件が典型です。女子高生の冗談を発端に、「倒産するらしい」という根も葉もない噂(デマ)が流れ、預金の取りつけ騒動に発展してしまいました。何とか沈静化できたからよかったものの、本当に一つの金融機関がつぶれそうになってしまったわけです。

この事件の少し前に起こったトイレットペーパー騒動も同じ構図です。実際には生産量に問題がなかったにもかかわらず、ひょんなことから「なくなるかもしれない」という不安が広がり、猫もしゃくしも買いだめに走る騒ぎに。本当に日本中のお店からトイレットペーパーが消えてしまいました。

なぜ、こうなってしまうかといえば、私たちの行動のもとになる事実とは、社会的に構成されたものだからです。いつも客観的な事実(真実)をとらえているのではなく、多数の人が信じていることや、予期に合致するものを「○○に違いない」と事実として扱っているのです。

また、人々が取った行動も、次の行動の考える上の手掛かりとなります。事実が次の事実を生むループ構造が生まれ、社会的な事実がどんどん増幅されて、いずれ現実のものとなるわけです。

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最終更新:2019/12/23(月) 8:11
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