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「ゲームばかりしてるとバカになる」は本当か? 脳科学者に聞く

2019/12/24(火) 11:02配信

FRIDAY

あの都市伝説は本当なのか? 脳に関するウワサ、その真偽を最新脳科学の見地から検証

「脳は3歳までに形成される」、「脳は10%しか使われていない」など、脳に関する都市伝説めいたものは数多く存在する。一体なぜこんなにたくさんの伝説が生まれたのか。

脳を役割ごとに“番地分け”し、「脳の学校」を開設して個々の能力を伸ばす脳番地トレーニングを提唱している加藤俊徳医師に、都市伝説の誕生理由と真偽について聞いた。

◆脳の詳しい研究が可能になったのは、わずか「30年前」

そもそも、脳科学はどのように発展してきたのだろうか。

「15世紀にレオナルド・ダヴィンチが描いた脳の絵を見ると、脳室の形状はほぼ正確に描かれています。けれど当時は顕微鏡がなかったので、脳の中の細胞まで知ることはできませんでした」(加藤俊徳先生 以下同)

その後、18世紀にウィーンの開業医、フランツ・ガルが「脳の働きは場所によって違う」という「大脳局在論」を発表。19世紀には顕微鏡が登場し、1907年にはドイツの神経解剖学者のブロードマンが、脳の場所ごとに“細胞の形”が違うことを発見した。

「顕微鏡の発明は脳の研究にとって大きな前進となりましたが、そこからは全然進歩しませんでした。なぜなら“生きた人間の脳”を放射線で被ばくすることなく見ることはできなかったからです」

脳科学が飛躍的に前進するのはMRIが誕生してから。実用化は1980年代と、つい30年前のことだ。

「MRIによって、これまでは“死なないと見られなかった”脳が、“生きているうちに繰り返し見られる”ようになった。これは大きなブレイクスルーでした。脳科学はこの30年間で急激に進歩してきた新しい学問なんです。未発見の領域はたくさんあります」

数多くの都市伝説が生まれた背景には、どうやら脳科学の歴史の浅さがあるといえそうだ。

◆脳に関する都市伝説の多くは「“マウス”や“猿”の脳」の話だった!?

都市伝説の中には、30年以上前から存在しているものも多い。それは現代脳科学が躍進する前の情報が、今も語られているということなのだろうか。

「いちばん大きな間違いは、マウスや猫や猿を研究してきた人たちが、さも人間を診たかのように言っているところにあります。

どれも仮説にすぎませんし、動物から得た仮説を人間に当てはめたところで、人間の脳の構造と動物のそれは、そもそもの土台が違う。

さらに人の脳は千差万別なのに、都市伝説の多くはいかにも万人に当てはまるような印象を与えます。“こんな人が多い”という“一般論脳科学”は臨床、つまり個人には役立ちません。今は“一般論脳科学”から“個人脳科学”へと、研究は進んでいるのです」

◆脳の都市伝説を検証!

脳の都市伝説は「当てはまる人もいれば、当てはまらない人もいる」という程度の一般論に、まったく根拠のないものも入り交じっているようだ。新旧の代表的な伝説をいくつか挙げて、真偽のほどを解説してもらった。

◆『脳は10%しか使われていない』

19世紀後半に誕生したというこの都市伝説、実は、世界中で語られているという。起源には諸説あるが、脳科学が発達したこの30年間より前に生まれた都市伝説ということなので、やはり大ウソ、と思いきや…。

【不明。だが、1%以下の可能性あり!】

「細胞レベルでいうと、1%も使っていないと思います。細胞自体は存在していても、トレーニングしないと脳は成長しません。まず情報が脳細胞に伝わり、次に細胞同士がネットワークを組んでいくことで、脳は機能し成長することがわかってきています。僕は“頭が良くなる”というのは“脳が成長する”ことだと思っています」

◆『ゲームばかりしているとバカになる』

昭和生まれの子どもたちは「テレビばかり見ているとバカになるよ!」と言われたものだ。そして、今はゲーム。誰でも言われたことがある、日本中のお母さんお決まりのセリフだ。 “オオカミ少年”的な、根拠のない説教フレーズと思ったのだが…。

【ホント】

「ゲームは、脳の特定の部分(脳番地)を延ばします。しかし、問題は、ゲームをするときの体勢や環境です。画面と目の間に距離がないので眼球運動も起こらないし、体を動かさない。しかも、時間も忘れ、昼夜逆転したり、食事をとらなかったりする。

ゲームで使うのは、脳のほんの一部分。そこ以外は全く使いません。これは、一部が強化されたとしても、それ以外の脳の成長を削いでいる恐ろしい状態なのです。

個人的には、今は、法律や規制が甘すぎると思っています。脳の成長を考えると、年齢制限などのルールも必要。あまり問題視されていませんが、人類の脳を守るためには世界的レベルで考えなくてはいけない問題です」

それでは、テレビは馬鹿にならないか? 先生によると、「目から画面が遠いので眼球運動があり、耳も使うテレビのほうが、ゲームより“まだマシ”」ということだ。

◆『ド忘れしたものを思い出さないと細胞が死ぬ』

【残念! 思い出しても、細胞は減っている】

脳の細胞は生後6ヵ月~10ヵ月くらいをピークに、使用されていない未熟な細胞は減るだけだとか。つまり、思い出そうが、思い出さなかろうが、脳の細胞は減っているのだ。だが、心配するな!  90歳の人の脳にも未熟な細胞は山ほどある。

「けれど使わない脳番地は、やはり活性化不全になります。新陳代謝を促すためには絶えず刺激という潤滑油をあげ、アイドリングし続けることが大切です」

◆『脳の8割ができあがる3歳までの環境が将来を決める』

専門家による3歳までの育児書が発売されたり、親子で受けるセミナーなども開催されているが…

【ウソ】

「100年前の脳病理学者が顕微鏡を見て、『脳の構造って3歳くらいでほぼ成人と似た形状になる』というような研究記述があり、そこから誕生した話。生きた状態で人間の脳を観察できる現代になっても、リライトされていないだけ。

3歳で決まるなんて嘘です。確かに3歳までに決まる部分もごく一部はありますが、50歳近くになっても変わるし、脳が成長するメカニズムは何歳になっても持ち続けていることがわかっています」

◆『人は右脳派、左脳派に分かれる』

この「右脳・左脳」論も世界中で語られている都市伝説。「〇脳開発セミナー」や教材などもあるけど…

【大ウソ】

「世界的に有名な画匠の脳を見ても、左脳右脳をともに使っています。右脳全部を使うわけでも、右脳だけを使うわけでもなく、右脳派だから芸術肌、というくくりができるほどシンプルなものではありません。

“脳番地ごと”人それぞれ使い方が個性的なのです。同様に理系脳と文系脳なども、たとえば『理系の、こういう勉強のときにはこの脳番地が使われる』ということまでわかっていますが、左右どちらかに分けるというのはかなり大雑把すぎる脳の見方です」

いかがだっただろうか。全くのデタラメもあれば、意外と本当だったりもする脳伝説。最後に加藤先生に、脳科学の最新事情を聞いた。

「現代脳科学を推進させているのはアルツハイマー型認知症への恐怖です。なぜなら誰もこの病から生還した人がいないから。なので今は、脳を鍛えたり、老化させない点に世界中の脳研究がシフトしてきました。都市伝説なんかにかまっていられないほど、すごくリアルな現実が出てきた! という状況です」

差し迫った状況での予防法の研究。これはある意味、新たな伝説となりそうだ。



加藤俊徳(かとう・としのり) 脳内科医・医学博士、加藤プラチナクリニック院長。昭和大学客員教授。脳番地トレーニングの提唱者。2006年、株式会社「脳の学校」を創業。加藤式MRI脳画像診断(脳相診断)を用いて著名人、芸人、スポーツ選手だけでなく、発達障害などの脳の特徴を診断。加藤プラチナクリニックでは脳の健康状態、個性や適職などを診断し、薬だけに頼らない脳の治療を行う。著書は『アタマがみるみるシャープになる!!脳の強化書』(あさ出版)、『片づけ脳─部屋も頭もスッキリする!』(自由国民社)、『脳が若返る最高の睡眠:寝不足は認知症の最大リスク』(小学館新書)ほか多数。

取材・文:井出千昌

FRIDAYデジタル

最終更新:2019/12/24(火) 15:12
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