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一度しかない野球人生、キクの思うように進んでいってほしい/新井貴浩コラム

2019/12/27(金) 11:00配信

週刊ベースボールONLINE

 勝負強い打撃に、球界屈指の守備にと、キクは本当に魅力的な選手です。キクが二塁にいるということは、カープにとってすごく大きなことでした。キクは大学時代は遊撃を守っていて、2012年、カープに入団した当初も二軍では遊撃がメーンでした。私は阪神にいましたが、当時から、二塁をやったほうがキクの良さが生きると思っていました。

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 もちろん遊撃も大切なポジションですが、キクはピボットが得意で、高い確率でゲッツーが取れる。肩の強さに加えて、捕ってからの送球の速さ、正確さが群を抜いています。無理だなと思う場面でもゲッツーが取れれば、試合の流れも変わってくるのです。

 私がカープに復帰してからは、私が一塁で4年間、一緒に守ってきましたが、あらためて二塁手・キクのすごさを何度も体感しました。例えば、打者が打ったとき、打者走者の足、打球の方向、打球の強さなどを総合的に見ながら、私は一塁ベースに入ります。そのときに「あッ、これ無理だな」というのは分かるものなのですが、キクの場合は「これ無理かな」と思ったときでも、ほぼアウトになったんです。「えッ、これアウトになるんだ!」と、何度となく驚かされました。

 また、ランナー一塁で、打者が一、二塁間を抜くヒットを打った場合、打球次第ですが、一、三塁を作られてしまいます。一、三塁は得点が入りやすいケース。しかし、そんな場面でもキクの守備範囲があったら追いついて捕球し、最低でも1つアウトにしてくれます。

 キクは、私の想像をはるかに超えるプレーの数々を披露してくれました。前回も書きましたが、キクの守備は、私が一緒にプレーさせてもらった選手の中では断トツです。もしキクがこのままカープを離れることになったら、次に二塁を守る選手は大変だと思います。どうしてもキクと比べられてしまいますからね。

 とはいえ、キクのメジャー・リーグ挑戦に関しては、私としては温かく見守りたいと思っています。やはり一度しかない野球人生なので、本人の思うように進んでいってほしい。メジャー・リーグで通用するのか否かは、実際に経験しないと分かりません。あこがれの舞台で、キクがどれだけすごいのか、キクのレベルがどのくらいの位置にあるのかを、私自身も見てみたいのです。ただ、そう思う半面、キクがカープからいなくなるのか、寂しいなという思いがあるのも、正直なところです。

 でも、やはりキクの野球人生ですから、どこに行こうと応援したいですね。私も、ファンの皆さんと同じように、ものすごくワクワク、ドキドキしています。

『週刊ベースボール』2019年12月23号(12月11日発売)より

PROFILE
新井貴浩/あらい・たかひろ●1977年1月30日生まれ。広島県出身。広島工高から駒大を経て99年ドラフト6位で広島入団。4年目の02年に全140試合に出場し、05年は43本塁打で本塁打王のタイトルを獲得。07年オフ、FA権を行使して阪神に移籍した。11年には打点王になるなど活躍するも、14年は出場機会が減少し、オフに自ら申し出る形で自由契約に。15年に8年ぶりに古巣・広島に復帰。16年には四番打者として25年ぶりのリーグ優勝をけん引し、リーグMVPに輝く。17年途中からは代打が多くなったが勝負強さは健在で、球団史上初のリーグ3連覇に貢献した。18年限りで現役を引退。通算成績は2383試合、2203安打、319本塁打、43盗塁、打率.278。

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最終更新:2019/12/27(金) 11:30
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